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いつかの君を、救いたい――  作者: 三日月 和樹
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 中野さんにボクの部屋…アパートまでの近道を教えると、中野さんはボクが予想していた時間よりも早く来た。

 慌てていたし、濡れてくるだろうと思って用意しておいたタオルを中野さんに渡し、一旦ボクの部屋で落ち着いて話そうとボクは提案した。最初、加納さんのことが心配なようで、慌てた様子の中野さんだったが、全速力で走ったせいか。ドアを開け、部屋に入ったとほぼ同時に、膝をついて咳き込んでしまっていた。ボクはタオルと一緒に用意しておいた麦茶を渡す。

 中野さんを支えてリビングの椅子に腰かけさせ、ボクはその対面に座る。

「はぁはぁ……あなた、千穂のこと、何か知っているの?」

 だいぶ疲れているようだが、ボクが出した麦茶を飲み干してすぐに話はじめた中野さん。そのせいで、言葉が途切れ途切れになってしまっている。

「うん。確認なんだけど、彼女はこのアパートに住んでるんだよね?」

「ええ、そうよ。私が小さい頃に遊びに来た時のことだから記憶も薄いけど、このアパートで間違いないわ。引っ越しをしたって話も聞いてないし」

 間違いない。と、中野さんはそう言った。

 なら、加納さんがなぜこのアパートの屋上にいたのかは分かった。住人が屋上に上がっていたところで不思議に思う人はいないだろう。しかし、なぜあの雨の中で、あの場所で彼女が死んでいたのか。そして、あの少女と謎の薬については、ボクには全く想像がつかない。

 すでに加納さんが生き返ったという事だけで頭がおかしくなりそうなのに、なぜか落ち着いていられる。それが矛盾だと自分で分かっていても、慌てていないことに関しては今のままの方が良い。

「……死んだの」

 その言葉には、一切前置きがなかった。

「えっ?」

 虚を突かれ、ボクはほとんど無意識に返した。

「……信じてもらえないだろうけど、前に私、死んでいる千穂を見たことがあるの」

 中野さんは突然、決意したかのようにそう言った。だが、それは罪を告白する罪人が怯えているようにも見えた。

 待て、前に一度?それは……

「それは、いつの出来事?」

「あなたと出会った後……数日後の話よ」

 どうせ信じていない。という中野さんの心の中が分かっていて、ボクは何も言わなかった。自分も同じ経験をしたことがある。ボクの場合は、中野さんみたいに誰かに言う結城はなかったけど。

 でもそれは、この短期間で彼女、加納千穂は二回。または、それ以上死んで、そして生き返っていることに……?

 そんなことが……ありえるのか?

 中野さんが嘘を吐いた可能性はある。が、そんなことをされても今のボクには、質の悪い冗談すぎて、目を向けられる余裕がない。

「それで、どうしたの……?」

「その後……薬を飲ませちゃったの。千穂に」

 ッッッ!!

 ……ということは、中野さんもボクと同じことをしたのか?

 ボクと同じように、生き返らせたと言うのか!?

「だったら、君も会っただろう!会ったはずだ。そうじゃないと、おかしい!!」

「あ、会ったって、いったい誰によ……?」

「このくらいの、小さな女の子だよ!レインコートを着た、そう、黄色の」

 突然椅子から立ち上がり慌てだしたボクを見て、少し怖がる中野さん。だが、

「あっ……私、その子に薬をもらったんだっ!」

 そんな大切なことを、なぜか中野さんは忘れてしまっていた。

 死んでいた人間が、次の日には生き返っていて、しかも普通に生活していたらこうなってしまうのだろうか。

 悪い夢だと勝手に信じて疑わず、そのままにしておいてしまうのだろうか。でも、自分では悪い夢だということは認めきれていないのだ。

 ボクはこのとき、激しい悪寒を覚えた。

「ねぇ、あなたはあの子について何か知ってるの?」

 知ってるの、だって?もちろん、全く持って何も知らない。だから、焦っていたんだ。夢だと思い込みたかった。でも、これだけは言える。

「どうやら、ボクと中野さんは同じ、何も知らない目撃者のようだね」

 中野さんも察せたのだろう。残念そうに俯き、スマートフォンを取り出した。

「もう一回、千穂に掛けてみるよ。そして、聞いてみる」

 一旦落ち着くためだろうか、中野さんはどうせ相手の出ない電話を掛ける。

 プルプルプルプル……ピッ

『もしもし、一美?』

 ……!!

「「出、出た!」」

 まさか電話に出るとは思わず、ボクと中野さんは、同時に叫んでしまっていた。

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