ふわもこを従魔にしたいです!
「見ろよ! 俺の腹直筋!」
マッスルポーズ(ラットスプレッド)を決めるスケルトン戦士
「お前、スケルトンじゃねぇか!」
すかさずツッコミを入れるのは幽霊
「スケルトンの筋肉なんぞ、お呼びじゃねぇ! 見ろよこの俺の外腹斜筋の美しさを!」
マッスルポーズ(サイドリラックス)をしているのはゾンビだ。
「バッカ! そんなことしてっと外れっぞ!」
レイスが言った直後、ゾンビの外腹斜筋がポロリと落ちた。
「あぁ! 俺の筋肉ぅー! マスター! 俺の筋肉ぅー!」
「……」
あまりに驚いたため目玉が飛び出て頬に垂れ、泣きながら走って近寄ってくるゾンビに何も言えない魔物使い(飼い主)はゾンビにがしりとつかまえられ、落ちた外腹斜筋片手に揺さぶられる。
「何で僕、脳筋なアンデットを従魔にしたんだろ」
ラットスプレッドの次にサイドチェストをしているスケルトン戦士が近寄ってくる。
お前、筋肉自体ねぇだろなんて言うツッコミをしても無駄だ。なんせスケルトン戦士に脳はない。
「とりあえず落ち着け? つけてやっからな?」
「ほ、んどう?」
ゾンビの顔は涙と鼻水と……とにかく色々な液体でいっぱいだ。
従魔の主であろうと目の前にいるのは勘弁してもらいたい程度にはグチャグチャだ。
「マスター、諦めなよ。こいつらバカだから」
「そうよ。私の美肌と美髪のためにも無視しなさいな」
レイスが皮肉を言ったところで墓守の小屋から一体のリッチが出てきた。
「ねぇ、今度町に行ったら、ハルモニの化粧水買ってきてくれない?」
スケルトン戦士とゾンビは元戦士職、レイスは元僧侶、リッチは元……いや、今も魔術師だ。
彼らは生前パーティーを組んでいたのだが、何かが起こり、アンデットとしてダンジョンで彷徨っていたのをこの魔物使いザレオソンが捕まえてきたのだった。
ダンジョンを徘徊していた時はごくありきたりなアンデットらしかったのだが、従魔契約をしたら生前の性格が蘇るのか脳筋スケルトン戦士と脳筋ゾンビ。皮肉屋でツッコミ担当のレイスに我が道を行くリッチと言う個性豊かなアンデット集団となった。
ザレオソンは魔物使いとして冒険者ギルドに登録した初心者から少し足を踏み出した程度の冒険者だ。
スライムと一緒に田舎を出てちょっと大きめの町で登録した後、しばらくは郊外で採取や狩りをしたりしてレベリングしていた。
あくる日、ザレオソンは町から離れたダンジョンに来ていた。
レベルも上がった事だし、そろそろダンジョンにも入ってみたいよね。
そんな心境でダンジョンに入ったところこの4人と出会ったのだった。
リッチが言うには、そこそこの実力のパーティーだったのだが、古い神殿調査中に何か影響を受けた上全く知らないダンジョンに飛ばされていたらしい。何かの影響の何かを受けた順番はレイス、スケルトン戦士、ゾンビ、リッチ……あぁ、受けた順番で肉体がないのね。と、ザレオソンは納得した。
そして今、彼らはザレオソンの従魔として暮らしている。
「マスター、今日はギルドに行くのよね?」
「そうですよ。貴方方がどこの誰か調べていただいてるので、スラーおいで」
ポヨヨンと足もとに来るスライムのスラーは初めて従魔にしたモンスターだ。
「スラー、粘液出して。これにつけて」
これと言って渡したのはゾンビの取れた外腹斜筋。スラーの粘液にひたされテラテラと光るブツをゾンビにつけると気持ち悪いぐらいの爽やかスマイルでサムズアップしたゾンビが歯を光らせていた。気持ち悪い。
「スラー先輩、いつもありがとうございます」
ゾンビがお礼を言えばスライムはプルンと震えた。
……スライムはともかく僕が従魔にしたいのはふわもこだ。間違っても腐ったやつらじゃねぇ。
「ま、期待しないで待ってますよ……骨め、ポージングしてんじゃねぇー!」
スケルトン戦士に耐えかねたのか、レイスがキレてスケルトン戦士をポルターガイストで浮かせた棒でしばいていた。
……ふわもこを誰か下さい。
切望しています。
えっと……スミマセン。
頭の中身のアウトプットなので、これ以上もこの続きも今のところありません。