百獣の王。追憶編〜道化師とドラゴン
「誰か俺を呼んだかい?」
ピエロが喋った。
「あぁ、ジャグラか。困ったことにキョンに襲われたんじゃよ。」
竜にまたがったピエロは、ジャグラという名前らしい。
「ターカー大丈夫か?全くだらしねぇなぁ」
「ガハハ!面目ねぇ」
じっちゃんとジャグラは、古い仲らしい。
「まぁ、俺がキョンを倒せばいいってことだな?」
「ああ、せがれの友達もいるみてえだしよぉ」
「おう」
ジャグラはドラゴンに乗ってキョンと戦った。
キョンが鞭を振るうが、ドラゴンはヌルヌルと避けている。
「す、すごい。あんな大きな体で、キョンの鞭をかわすなんて!」
「パチン!パチン!」
鞭は空を切っているはずなのに、音がする。
「パチン!パチン!ダァッ!」
男の野太い声もする。
よく見ると、キョンの鞭は空を切ってはいなかった。
ドラゴンが攻撃を避けるたび、背中のジャグラに鞭が当たっている。
「こら!グレン!ちゃんと避けろ!」
「グルルル」
ドラゴンはグレンという名前で今、返事をしたようだ。
キョンが再び鞭を振るう。
グレンが避ける。
ジャグラに当たる。
キョンが鞭を振るう。
グレンが避ける。
ジャグラに当たる。
こんな茶番劇がえんえん…延々と続いた。
みんなが流れに飽き始めた。
すると、ジャグラはそれに気づいたのだろうか。
「グレン!H.Tだ!」
そう言うとグレンは、口から火の玉を無回転で吐いた。
「これがグレンの無回転火炎球だ!」
どうやらグレンは、ドラゴン中学でテニス部に所属していたらしい。
キョンは、火炎球をはねかえそうと鞭で弾こうとした。
だが、回転火炎球とは違う。無回転火炎球だ。流石に速い。目にも留まらぬ速さで、キョンに向かっていった。
着弾と同時に、火炎球は大爆発を起こした。
もう彼女の目に、我々の姿が映ることはない。
〜続く〜