百獣の王。追憶編〜じっちゃんとキョン
アソコ村付近。
僕は、じっちゃんと再会できて安心している。
「じっちゃん、ごめんなさい。心配かけました」
「気にするな、無事で何よりじゃ」
今まで僕は、じっちゃんに怒られたことがない。どんな場面においても、優しくフォローしてくれる。
その和やかなムードは、一瞬にして壊されてしまった。
そう、その時僕は 盗賊団頭領 キョン・ムッツリーナと顔を合わせたのだ。
「ノン太郎、隙を見て逃げるんだ。わかったな」いつものじっちゃんからは想像もつかない男の声だった。
「なんで?相手は女子1人だよ?」
「奴を女子だとあなどると、痛い目見るぞ。」
「分かった。けどじっちゃんは?じっちゃんはどうするの?」
「わしも、隙を見て逃げるから、安心せい。」
僕はこの言葉を信じてしまった。
キョンが短いムチの先端をしゃぶり始めた。
「今じゃ!全速力で走れい!」
「じっちゃんも、うまく逃げてね!」
えんえんは力強く、地面を蹴り上げた。
ある程度距離はとった。遠目に見ていよう。
この時、ふと思った。
「じっちゃん…歩きじゃん…」
その時僕は、気がついた。じっちゃんが、もとから逃げる気などなかったのだと。
〜続く〜