百獣の王。追憶編〜ミドーリンと発情馬
僕は、夜の森を純白の白馬、えんえんと共に駆け抜けている。はぐれてしまったじっちゃんのことが、少しばかり心配になってきていた。
そろそろ朝日が昇りそうだ。
かれこれ長いこと、森の中を走っている。変わらない風景に飽きつつあるが、周りの様子を見ていないと森から出られない気がしてならない。
僕は純白の馬を“えんえん”と名付けてから、休みなく走り続けている。「こんなに大きな森が、この辺りにあったなんて知らなかったなぁ」呟いた。
すると、前方に大きな湖が見え、僕らは湖の畔で少し休むことにした。えんえんの汚れた尻を湖の水で洗うと、元の艶のいい白い毛が輝いて見えた。
湖と木々の美しい画が、僕らの疲れを忘れさせてくれた。そろそろ出ようかと思った時、「ガサッ!」
近くの草むらが揺れた。勇気を出して、音がした草むらの草をかき分けると、そこには裸の女性がいた。目が合い、女性は恥じらいながら、
「こっち見ないで//」そう言うと、僕の右頬にビンタをした。僕は顔が真っ赤になり、女性から目をそらし湖の水で、顔を冷やした。
「す、すいません」僕が言うと、
「こ、こちらこそ//」女性も謝罪してきた。
「自分、狩りに来たら森で迷ってしまって…」
すると、「私、この森のエルフなの!良かったら、帰り道教えましょうか?」女性は優しい笑顔でそう言った。「自分は、詩音ノン太郎と言います!宜しくお願いします//」
「あっ、私は マジカル・ミドーリンと言います!宜しくお願いします//」僕らは恥じらいながら、自己紹介を交わした。じゃあ、帰り道を教えてください。
僕がそう言おうとした時、ミドーリンが
「この子名前は?」とえんえんを撫でながら聞いてきた。「えんえんって言います。」そう答えると 「へー、いい名前だね!綺麗な毛並みー!」と、えんえんを褒めてくれた。童貞の僕は女性と、ここまで親しく話したことがなかったので、僕は喜びを覚えた。
「キャッ!」ミドーリンの声がして、見るとえんえんがミドーリンを、押し倒していた。「コラ、やめなさい!」僕が叱ってもえんえんは止まらなかった。
そう。発情していた。
5分ほど経ち、疲れ切ったえんえんとミドーリンと森の出口を目指し歩き出した。
僕たちは森の終わりに着いた。
「ミドーリンさん、ありがとうございました。また、機会があったらお会いしたいです!」
「どういたしまして。はい!またお会いしましょう❤︎」
僕は今にも暴れだしそうな、股間のリボルバーを押さえつけ、平然を装い、ミドーリンと別れた。
陽がおちようかという頃、前方から「おーい!ノン太郎ー!」と聞き覚えのある声が聞こえた。
近づいていくと、声の主はじっちゃんだった。
「じっちゃん!良かった!もう会えないかと思った!」涙を流しながら、僕は言った。すると、じっちゃんも、「ノン太郎…良がった、良がった!」と泣いていた。
その後、2人はえんえんにまたがり、アソコ村へと向かった。
〜続く〜