プロローグ2
私は浮いていた、ただ一人で、自由気ままに、ただただ流されて、日なたにいるような気持ち良さに包まれて、ここは夢の中、始まりの地、私の居場所、落ち着ける場所、どこかふわふわした感覚に身を任せる。
突然私の世界に光が溢れ出す。光が治まり、ゆっくりと目を開けると、暗闇の中で浮かんでいた
「やっぱりここか・・・」
つぶやくと、その声はすぐ闇の中へと消えていく。自分の体を見てみると、暗闇の中で淡く輝いていた。
果てしなく続く何もない世界だが、光に包まれているせいかまたは暗闇に慣れているせいか、恐怖はなく落ち着きさえ感じる、うん、いつもと同じだ。
何かを考える訳でもなく、ただただふわふわ浮かぶ。ここが私は好きだ。私だけの時間。何も考えないなにもしない、無に返ったような感覚が楽で良い。現実は考えてばかりで疲れる。あー、平和だー
どれくらいたっただろうか、気配を感じそちらを見てみる。
・・・いつの間に出てきたのだろうか、一つ球体の光がすぐそばで光り輝いていた。
「なにこれ・・・」
手を伸ばしゆっくり触れてみると、いきなり強い風と光を放った。風は空間を切り、光は闇を消した。
空間に浮いていた私は風に飛ばされ、目を差すような光に耐え切れず手で光を遮る。突然のことで何が起こったのかよく解らなかった。ただただ危険だと思った、逃げようと思った。それがとても強すぎたから。てか、背を背けてさっさと逃げたい
だが何故だろうか?危険かも危ないかもしれないのに、見ることも近づくことも大変なのに、その球体に触らなければいけないとそう勘がつげているような、誰かに呼ばれているような、とにかく手を伸ばさなければと、触れなければいけないと、そう思ったのだ。
襲い掛かってくる光と風を遮りながら、指の隙間から光を見つめ、球体に手を伸ばす。
やっと触れたかと思うと、風は止み、光はより一層強く輝いた。
「・・・はぁ、なんで私はこんなことしてんだろ、ここに来てまだそんなに経ってないよね。久しぶりにここに来れたのに・・・失敗したかな~」
さすがに私も目を瞑り、どうでもいいようなことをのんきに考えていた。
私って結構バカかも、やっぱりさっさと逃げれば良かったかなー、こんなことする必要無かった気がする。
少し経つと光が治まったので目を開く。闇が戻り球体は淡く光っていた。そしてその球体はテレビのように映像を映していた。そしてそこに映っていたのは・・・私だった。
「は?な、なんで?意味分からん!」
背景にあるのは学校だ。しかもその学校を私は知っている。明日から通うことになっている高校だ。よく見ると私が着ている服も高校の制服だ。訳が分からん。ホント何でこんなことになったんだろ、
映像はどんどん移り変わっていく。教室、校庭、食堂、私の家、散歩ルート、私の知っている所、知らない所、一人で居たり、誰かと居たり、その誰かはやけに顔が整っている人ばかり。そして何もない白い空間に私と誰か。すると次は球体が一気に黒くなる。いや違う、これは何もない真っ暗な空間。そこにも私とさっきの人とは違う誰か。二つの空間を映し終えると球体は、最初の画像に、私と高校が映った画像で止まる。
「なんなのこれ?」
訳分からん、なんで高校に私が?何度か高校に行ったことはあるが、中学の制服だったし断じて高校の制服ではなかった。映っていた人達も私の知らない人ばかり。もしかして・・・
「未来?・・・」
いや待て待て待て、確かに何度か予知夢を見たことあるけど、こんなんじゃなかったよね。もっと、意識がこう、何かぼやけてて、現実か夢かよく分かんなくて、私が自分で動いてて、見てた訳じゃないし。意識もこんなにあるし・・・
頭を抱えた私がチラリと横を見てみると、変わらず私を映した球体がふわふわ、ふわふわ浮かんでいた。
「・・・うん、もう訳分からん・・・・・・もういいか」
厭きるのが早いと言うことなかれ
これが夢なら私は起きた時忘れてるはず、なら考えるだけ頭を抱えるだけ無駄。けして厭きた訳ではない、けして面倒になった訳ではない。ただ、後回しにするだけ、そのときの私が考えてくれるはず。
うん、問題解決・・・・・・てことにしとこう。
短時間で考えた私は、本格的にどうでもよくなった。
こんなのでいいのか私・・・うん、私は私だ、変わりたければ変わるし、このままでいいならこのままでいる。自分のことは自分が決める。誰になんと言われようと最終的には私が決める。このままでいい。
うん、大丈夫だ。だいぶ落ち着けた。大丈夫私はここにいる、大丈夫私が決める
・・・・・・さぁ、決着も付いたし、元に戻ろう。明日は忙しいし、ゆっくり寝たい。
そういえば、あれはいつ起こるんだろ?高校の私と白の世界と黒の世界。
闇と光に別れを告げ、私の意識は眠りについた。