表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

ふらりフラフラ金曜日1.1

 「あーあ。お爺さんたち、いなくなるのかー。つっまんねーの」


 学校帰り。

 カズは嘆きながら、道端の石ころを蹴った。石は2~3回バウンドして車道に転げ込む。続けて蹴るものが無くなったので、他の獲物を探すが適当なのが見当たらない。


 そんな彼に稔が追い打ちをかけた。

 「我が物顔に入り浸っているから、嫌がられたんだろ」

 

 よくよく考えなくても他人の家である。

いくら優しくしてくれるとはいえ、モノには限度というものがあるだろう。カズがあまりにも自然に通っていたから感覚が鈍っていたけれど、住人にしてみれば大迷惑な事この上なかったはずで。あの不気味な男は、ある意味、いい機会になった訳だ。カズが迷惑なら稔も同罪。

 それでも、やはり諦めきれないのだろう。お騒がせ者はもごもごと言い訳しはじめた。


 「だって、結構面白かったんだもん。大きい家だったし、草でギッシリの裏庭だってすごかったぞ、しかもお化け屋敷の異名付!子どもだったら誰だって・・・はいはい、僕が悪かった。悪うございました!

 ところでさ、2階にあったオルガンみた?学校にあるのより古かった。りんねさん弾いてたりしたのかな」

 「歴史は嫌いでも、骨とう品見んのは好きなんだな」


 ちなみにこれは皮肉である。その古物趣味を『班新聞』に活かしていりゃあ、余計な気をもむ必要もなかったわけで(レアアイテムも無事だったはずで・・・ああ、根に持つぞ。しつこいんだ俺は)

 もともと言葉の裏を読まないカズは、素直に稔の言葉を受け止めた。


 「んー・・・。骨董って、死んだ人の物だろ?そうじゃなくて、今生きてる人のそれを見るのが好きなんだよ。知りたいの。たとえば阿倍仲麻呂の好物は興味ないけど、そこ歩いてるおばちゃんの趣味とかは気になる。そんな感じ」


 おぉ、早速、今日習った昔の人物を引き合いに出してきた。覚えたてだから使いたいんだな。けどさ、どのみち古いってのは同じだろ?さらに言えば、おばちゃんより仲麻呂の方が『歴史的価値』も『勉強的意味』も上だ。カズの興味ポイントが分からん


 「・・・悪ぃ、けど、わっかんねーわ」

 「けけけ、そうだろー」

 稔の発言に気を悪くする様子もなく、カラリと笑う。


 「でもさ、色々とヒントになるだろ・・・人間知らなきゃ、宇宙人なんてもっと理解できないんだぞ。上手く言えないけど、そういうこと」

 「結局、そこか」


 若干、呆れた口調になったもののカズが『そっち方面』で真剣なのは分かっているので、稔はそれ以上ツッコミを控えた。誰でも混ぜ返されたくない事はある。

 そうしているうちに、分かれ道にたどり着いた。カズも自宅に帰るんなら一緒の道だけれど・・・


 「まぁいいや。俺、今日従姉が来るからさ、夕方まで子守してなきゃなんねぇんだ。だからまっすぐ家に帰るけど、カズどうする?」

 聞くまでもないなぁ、と思いつつ、稔はカズの返事を待った。案の定、きっぱり答えが返ってくる。

 「僕はまっすぐお爺さんとこ行く。今日最後かもしれないしー・・・お前これないの?」


 稔は頭を働かせた。

 正直言って、自分だって行きたい。なんだかんだいって、ここ最近楽しかったのは確かだし、お別れをできるものならしたいし・・・ではどうするか?

そうだ、兄は今日、少年団がなかったはずだ。まっすぐ帰ってきてくれれば、子守を押しつけることができるかもしれない。いや、押しつけよう。


 「・・・多分、行ける。兄貴次第だな。遅くなるかもしれないけど」

 「OK、じゃ稔の分のオヤツは残しておいてやるよ」

 「そりゃ、ありがてーな」


 それから手を振って、お互いの道を歩き出した。


 時刻は夕方とはいえまだ日は高い。明るいうちに合流できるといいのだけれど。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ