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ふらりフラフラ金曜日3.1


 「な・・・」




 稔は声を失った。




 急用ができたとかで従姉が帰ったので(ラッキー)、いそいでお爺さんの家へ来て見たものの、その家の前にはパトカーが2台、回転灯をくるくるさせて停まり、警官がどこかのオバさんやらオジさんやらに話を聞いている。家はぐるりと黄色のテープで囲まれているし、野次馬はたくさんいるしで、これまでの静かな雰囲気とは一転、物騒な祭りのような盛り上がりを見せていた。


 なにより不気味なのが、先に来たと思われるカズの姿が見当たらないことである。


 こういう状況だったら奴のことだ、警官の後をうろちょろしたり野次馬と一緒に騒いだりしていそうなものだけれど。



 ・・・まさか、カズが『原因』でこんなことになっているんじゃないだろうな?!



 稔がパトカーの中を覗き込もうとしたその時、何者かに急に二の腕を引っ張られたので、危うく後ろに転びそうになった。


 「やほ~」


 「かなえ?!」


 能天気そうにヘラヘラ笑っている。それに裕也に美香子に…と、なんで先生まで?!ともかく、異常事態で知合いの姿があるのは心強い。


 「すごいことになっているわね・・・」


 どんどん増えていく野次馬を見ながら、美香子は肩をすくめた。『町』であるとはいえ、こんな田舎でパトカー2台の事件は中々ないのだから、見物したくなる気持ちもわかるんだけど。


 「一体何が」

 「あのね、カズが誘拐された!!!」

 ここ最近みたこともない真面目な顔で、かなえが叫んだ。


 「ぇえ?!」


 あのカズが?!まさか・・・



 「・・・っていうのが、名探偵かなえちゃんの推理なんだけど~、どぉ?」

 「んだよ、脅かすな」


 稔はちょっとうんざりして、片手でかなえを追い払った。そもそもなんでそんなに嬉しそうなんだ、コイツは。反対に、何故か申し訳なさそうな裕也が、フォローするかのように口をはさむ。


 「あ、あの・・・ぼ、僕たちも、今来たとこなの・・・」

 「なんだ、そうか。おい、かなえ、適当な事言いやがっ・・・」

 「さー、それはいいから、お前たちは危ないから、ここは先生に任せてもう帰りなさい」


 続いてかなえに文句を言おうとした稔を脇に追いやって、先生は3回手をたたく。解散の合図。だからって、はいそうですかと帰るわけねーだろが!

 「危ないったって、何があったかわからないんだろ。それにカズだって・・・」


 「そういえば、ここの家の人は?お爺さんと女の人いるのじゃなかった?」

 美香子の言葉に、かなえは悲しそうに俯いた。


 「こういう場合、お爺さんは、もう・・・」


 「・・・」

 「・・・」




 「こらっ!!!」

 大音響が耳を貫き、稔たちは体を強張らせる。この声は・・・。



 「勝手に不吉なフラグを立てるんじゃないっ!!」


 いつもにもまして元気そうなお爺さんが、両手にスーパーのビニール袋を提げてこちらを睨んでいる。稔は、美香子が小さく「これが妖怪・・・」とつぶやくのを聞いた。初対面でこれでは、かなり迫力あるだろう。


 ところが先生は恐ろしい威圧感を気にする様子は全くなく、いそいそと内ポケットから名刺を取り出した。


 「あなたが、幽霊屋敷の・・・私、この子らの担任です。この度はうちの児童が大変ご迷惑を・・・」

 その余りにも自然な行動にお爺さんは怒気を抜かれたらしく、ややぎこちないながらも愛想笑いを浮かべた。

 「あ、いや、これはご丁寧に。こちらの方こそ、好き勝手にこき使っておりましたからな」

 「ねぇ、なーにこれ、どしたの」

 お爺さんの後ろから、りんねさんがひょいっと顔をのぞかせる。


 「りんねさん達、知らないの?」

 「今、買い物から帰ったところだし。・・・なんか勢揃いしてるみたいだけど」


 「・・・」


 『今来たばかり』の一同は互いに顔を見合わせた。


 この周りにいる野次馬達よりは遥かに関係者なのに、誰も事情を知る者がいない。ちょっとこの状況はまずいのではないか・・・?



お読みいただきありがとうございます。



カズいないと、キャラが動かないし話も進まない・・・

分割する量でもないのですが、あまりにも書きにくいので小分けにしました。

速く次の章に行きたい…。

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