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3.そしてミカボシは星になった!(星の神ゆえに)

誰がうまい事言えと…

 お父さん、ミカボシ、雫、モコ助、そしてタケミナカタ。場所を神殿に移して、車座に座っている。


「ちなみによ、雫さん、……あんたらミカどんと家族同然の暮らしをしてるけど、どういった関係なんだい?」

「ミーカーどーんー、言ーうーなー!」

 呼称ミカどんをいたく気に入ってしまったタケミナカタ。


「ちょっと前にね、促成養殖型ヤマタノオロチを使う術者に襲われたことがあってね……」

 ミカボシのクレームを無視して話を進める雫。

「戦闘中に間違って召還しちゃったの。それ以来の腐れ縁ね」

「そりゃ災難だったな。……じゃ、隠すまでもなく知ってるんだな? 私たち神々のことを」


「一応はね。ところで――」

 急須でお茶をついで回る雫。

「ミカボシはどこへ行っていたの? どこで大怪我してきたの? なんか、昔の知り合いのところで、いいアルバイトがあるって飛び出して行ったきりだったんだけど」


 ありがとう、と片手で礼を述べ、湯飲みに手を出すタケミナカタ。

「話すと長いし、みっともない話になるんだが……」

 湯飲みを手でこねながら、言葉を濁しにかかる。小娘を前に、なぜか戦神が正座していた。


「昔の知り合いって、ヤクザみたいなモンでしょ? 聞いたら事件が起こりそうだから話さなくて結構よ」

「……なかなか鋭いところを突くね。雫さん、ミカどんで相当苦労したんだね」

「ミカどんゆうな!」

「それにしても雫さん、とお父さん。あんたら、ただモンじゃんないな? 陰陽師の末裔か? 血にもなんか混じってるだろう?」

 タケミナカタは特に答えを強要しなかった。

 代わりに、祭壇を凝視している。


 先日、雫がミカボシにとどめを刺そうと手にした御神体。諸刃の長剣が中央に奉られている。

 左にもう一振り。副祭神であろうか、やけに幅広で、銀光鋭い剣が奉られている。


最後、中央の御神体の右に三振りめの剣。

 菖蒲の葉に似た切っ先。中央部分がむっくりと盛り上がった肉厚の造り。はばきの部分に緑の玉が埋め込まれている。刃渡り一メートルに及ぶ長剣だ。


「ヤマタノオロチ、……まさか、あれは……」

 タケミナカタの額に汗が一粒浮かんだ。


「ミナカタ……ミックン、いろいろややこしくなるからその剱は詮索するな」

「言い直してまでミックン言うのは勘弁してくれ!」


「そいでもって雫は、というか志鳥家はな……」

 ミカボシがタケミナカタの思惑をうまく外した後、志鳥家の出自を説明しだした。

「筑紫の、日の巫女の末裔が京で裏陰陽師になったってところだな。七百年近い歴史を持つ一族だ。ご先祖様にはオレも世話になった。それ以上は詮索すんな!」


 クリクリした目のモコ助が割り込んできた。

「そういや、ミカどん、てめぇどれだけ本を買い込んだんだい? ネットショップで買いこんだろ? 金どうした? まさか嬢ちゃん家からくすめたんじゃねぇだろうな?」

 モコ助が前傾姿勢をとっていた。いつでも飛びかかれるようにしている。


「バカヤロウ! バイトしてたって言っただろ。金ならある。……『金ならある』これって最強の言霊だよな? な?」


「反対はしない。なあ、筋肉ダルマ……、もといタケミナカタの兄さん?」

「私が筋肉ダルマかよ?」

 モコ助とミカボシのペア。阿吽の呼吸で、雫たち志鳥家の出自から、タケミナカタの注意をそらした。二人の(一柱と一匹の)息ぴったり。


「でよ、ミカどん――」

「ミカどん言うな。メコ助」

「――モコ助な。てめぇの部屋にばらまかれた本な、ファンタジー? それも勇者と魔王の話じゃねえか。こんな話のどこが天津甕星が持つ複雑な六十八本撚りワイヤーが如く図太い心の超剛琴線に触れたんだい? どんな話も、紆余曲折を経て、結局最後は魔王が倒されるんだろ? ハッピーエンドかバッドエンドかの違いじゃねえのか?」

 ミカボシが持ち込んだ読みかけの本をパラパラとめくりながら斜め読みしているモコ助である。

  

「問題が一つある。とても大事な事だ。……何で魔王なんだ?」

「なるほどな。どこかにネジ落ちてねぇか? ミカどんの頭のネジなんだがよ」


 ミカボシは、モコ助の辛辣な返しをものともせず、開いた本を取り上げた。

 そして本をポンポンと手の甲で叩く。

「オレはだな、いくつかの気になるパターンに気がついた。一つは、勇者と魔王の組み合わせが話の中核だって事だ」

「さすがだ。よくぞ真理に気がついた。魔王がいるから勇者が必要になったんだ。ああ、勇者の代わりに軍隊でもオーケーだぜ。ちなみに、召還型の勇者がいいかい? おいらはなんつったって宿命型の勇者だな」

 モコ助、博識ぶりを披露する。


「それだよそれ! 身内でカタつけるんなら納得いくぜ。でも、召還勇者ってのが納得いかねぇ。他人のフンドシで相撲とるようなもんじゃねぇか? その世界の神は、てめぇのケツすら拭けねぇってのか?」

 ミカボシの台詞はモコ助の勇者論を受けたもの。


「神が神批判してもな、どうかな? ここの神様と違ってアクティブな性格してるんじゃないのかい?」 

「そこで魔王だ!」

「いや、どこに魔王がいるんだい?」


 突然立ち上がり、板の間をウロウロしだしたミカボシ。日頃落ち着きが無いので有名な者が、輪をかけて落ち着きを無くしている。


「魔王に会いたい。会って直接聞きたい事がある」

「魔王にこだわるね、悪神様。魔王なら、オイラの目の前にいるぜ」

「どこだ?」

 ミカボシがモコ助の前で動きを止めた。キョロキョロとあたりを見渡している。


「いやおいらの勘違いだ。魔神だった」

 モコ助が謝った。


「どうやらメコ助とは雌雄を決しなければならねぇようだな」

「おもしろい。てめぇは嬢ちゃんを不幸にする星の持ち主だ。いつかはツブさなきゃならねえと、震える羽毛のように繊細で傷つきやすいマイハートで密かに決心していたんだ。ちょうどいい」


 モコ助が極端な前傾姿勢をとった。

「出すぜ! 9ミリパラペラムバレットパンチ!」

 モコ助は尻尾を股に挟み、お尻をプルプル震わせている。


「モコ助やめなさい。ジャレたいんだったら素直に言いなさい」

「やめろ、雫さん!」

 雫がモコ助を抱き上げようとした。そこをタケミナカタに止められた。


「こいつは……。妖気と気力が……。下がった方が良い!」

「え、ちょっと! この姿のどこに驚異を?」


「俺の予想が当たっていたら、この体勢からの技は最悪だ! 神を怯えさせる技か。フフフ……」

「いや、ちょっと!」

「甘めぇ! すでに貴様の9ミリは丸裸だ!」


 ミカボシは左へ三歩移動し、左手を極端に高く上げ、右腕は胸の位置に。左足を軽くあげ、膝で水平に折る。 

「なに? イヤミのシェー?」

 雫の眉が下がった。嫌そうな顔をしてミカボシを見る。


「てめぇ、考えやがったな! 受け流そうって腹かい?」

 モコ助が牙を剥いて悔しがる。

「ふふふ、天の悪星を舐めるな! オレくらいの賢神ともなれば、9ミリを一度でも見れば、対抗策の一や二つは思いつくぜ!」


「さすがミカどん! その手があったか!」

 拳を熱く握りしめ、タケミナカタが吠える!


「甘いのはそっちだ! ミカどん!」

 モコ助がゴロリと横になる。

「9ミリパラペラムバレット・モード・サヴァイヴ!」

 そのままモフモフの腹を見せ、口から小さな舌を出す。


「丸裸だと言ったろ!」

 ミカボシが右へ側転した。宙に飛び上がって伸身一回転。頂点が高い。そして着地。脱力して横たわる。右手で頭をささええて目を半眼。口を軽く開けているのがミソ!

「なにそれ? お父さんの昼寝のポーズ?」


「いかん!」

 慌てたのはタケミナカタ。

「雫さん、その場で体育座りするんだ! 急いで!」

「え? え?」

 タケミナカタの勢いと迫力に押され、つい、言われたとおりにしゃがみ込む雫。


「雫さんは任せろ!」

 叫ぶタケミナカタ。バク転を決め、そのまま逆立ち姿勢をキープ。指三本の逆立ちだ。否が応も無く気合いが入る。


「天津甕星、完全復活じゃないっスか! 俺、嬉しいっス!」

 逆立ちしたまま男泣きに泣くじゃくるタケミカヅチであった。


「このままではいかん!」

「お父さんまで、いきなり何を!」

 雫の父、志鳥真二郎(エッチ漫画収集が趣味)が立ち上がった。


 腰の巾着から八卦身が使う算木を鷲掴みに取り出す。

「むうん!」

 イチとニの型に整列。そして、算木をある形に組み上げた。


「ご主人、それは! 方陣の立体形成! 人間がそれを使うのか!?」

 国津神の軍神にして、天津神と最後まで激しい闘争を繰り広げ、諏訪に封された荒ぶる神タケミナカタが、驚異の声を張り上げた。


 真二郎が組み上げた算木はある法則に基づいた物だった。

「え?」

 雫の目には、幼子が作った積み木。柱と屋根。そう、一番簡単なお家の積み木細工に見えた。


「ミカどん、モコ助、ひけ! もはや二人の争いは無意味なものとなった!」

「え、ちょっとお父さん、それって――」

「ご主人、それを出すか?」

「ちっ! 人間はそこまでの高みに上れるのか! あの日、酔った勢いに任せて滅ぼさなくてよかったぜ!」

「くっ! 人間侮りがたし」

 順に真二郎、雫、モコ助、ミカボシ、タケミナカタの順である。


「ふふふ、ミカどん、ご主人にここまでされちゃ、オイラは引くぜ」

「ミカどん言うな! 仕方ねぇ、今この国を滅ぼすわけにゃいかねぇ。手を打とうじゃねぇかメコ助」

「モコ助な」


「ちょっと待って、ちょっと、ミナカタさん、解説してよ。あたしワケわからないわ!」

 タケミナカタ、父・真二郎、ミカボシ、モコ助、四対八個の視線が雫に集中した。


 そして、申し合わせたように、雫から目をそらす。申し訳なさそうに。

「いや、だからなんで? 誰か理屈を説明して!」


「雫さん……」

 代表でタケミナカタが口を開いた。それが自分の役割であるかのように。

 そして雫の肩に鋲撃ち手袋のゴツイ手を置く。

「雫さんにはまだ早い」

「なにが? なんで!」


 その時である。

 ミカボシの足下。歩く度に軋む年期物床に、複雑な文様が浮かんだ。


 文字だろうか? 記号だろうか? 見た事もない象形文様が蠢いている。

 サークルを基調として整列した文様が光り出す。ミカボシを中心として。


「ちょっと、ミカどん! あんた今度は何やらかす気なの?」

 雫が叫ぶ。すぐ対処できるよう、御神刀へ走った。


「いや、オレ何もやってないっスけど?」

 ミカボシの足下で、光の文様サークルが力強く光る。


 間の抜けたミカボシの顔を下からライトアップするように。





 天の悪星天津甕星の冒険は、始まったばかりである!


「てめぇら逃げんじゃねぇ!」


さあ、皆の衆。

旅を始めようか!

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