秘密9
次の日、担当医師の往診があった。僕は自分でもびっくりするようなことを医師に尋ねていた。
「僕はもう少しばかり、生きていたいのです」と。
担当医師は「君に生きていたいという意思が強くあれば、大丈夫ですよ」と答えた。本当のところはどうかわからない。でも、死ぬのを待ち望んでいた僕自身が一番、この発言に戸惑いを感じたが、生きていたい、本心でそう思ったのだ。
直人の話の結末を知るまで生きていたいという僕の気持ちとは裏腹に、しばらくの間、直人は僕の元にやって来なかった。僕の身体は、その間少しずつ悪くなっていった。もう歩くことが出来ないほど、衰弱していったのだ。呼吸器をつけたまま、直人が訪れるのを待ちわびて、毎日を過ごした。両親は僕がもう駄目かと思ったのか、親類の叔母さんや叔父さんなどを病室に呼んだ。僕は直人の話しを聞きたいんだ。でも直人は僕が待ち望んでいるのを知らずに、あれから一ヶ月以上もやってこなかった。
そんなとき、直人は僕がそんな状態であることを知ってか、知らずか、僕の元にやってきた。その時、母親が僕の側に付き添っていたけれども、僕は直人と二人で話したかったから、母に席をはずしてもらった。母は僕に友達がいることにびっくりしたのか、直人が見舞いに来てくれたことに対して、涙ながらに礼を言い、病室を出て行った。
直人は僕のベッドの脇に座ると、「話の途中なのに、ずっと来られなくて、悪かったね」と僕に謝った。僕はいつものように何も答えなかった。
「今日、お袋が亡くなったよ」と直人は目を赤くして言った。
「お袋は死の間際に俺に本当のことを話してくれたんだ」と直人は少しうつむきながら話しを続けた。




