秘密7
俺が小学校上がるか上がらない頃だったと思う。まだ、親父も健在のころだった。親父に向い、目に涙を浮かべて話をしているお袋の姿の記憶があるんだ。そして母の隣には、あの葬式の遺影の男性がいたんだ。二人は父に対して頭を下げ、何かを頼んでいるようだった。俺はその様子を隣の部屋でふすまの隙間から覗いていた。母の口から「なおと」という俺の名前が何度も発せられており、俺はその度に何度も身体がびくついた。親父は、最初はムスッとした様子で黙っていたけれど、話の途中で烈火のごとく怒りはじめた。そして大きな怒鳴り声で「直人は俺の子供だ」と発し、台所に向かい、包丁をとって戻ってきた。親父はその包丁で、男性の太ももを刺したのだ。その瞬間、男性の「痛い」という悲鳴とともに、赤い鮮やかな血が太ももから噴出したのを見て、俺は自分の部屋に逃げ込んだ。
「どうだ。ありえないシチュエーションだろ?今、その男性の奥さんが俺を養子に欲しがっている。真相を知る権利は俺にはあるだろう。そうは思わないか?」
直人はニヤッと笑いながら僕に尋ねてきた。僕は何も答えられないでいた。直人はそんな僕にお構いなしに言葉を続けた。
「俺はその記憶の話をお袋にぶつけたんだ。『あの時、一体、何があったんだ?俺にも知る権利があるだろう』ってね。そしたらお袋は白状したんだ」と直人が言ったものだから、僕はごくっとつばを飲み込んだ。




