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おにぎり屋ふくふく

おにぎり屋ふくふく|雨の日のふくふく

作者: 絵宮 芳緒
掲載日:2026/04/30

朝から、しとしとと雨が降っていました。


ぽつ、ぽつ。


やがて、しっかりとした音に変わります。


「今日は静かだねぇ」


ふくさんが、窓の外を見ながら言いました。


いつもなら聞こえる足音も、今日は少し少なめです。


ミケが、丸くなりながら言います。


「雨の日って、眠くなるのよね」


まぐろも、のんびり。

「わかる〜」


トラは窓にぴったり。

「でも、ちょっとさみしいね」


シロは、やさしくうなずきました。

「こんな日は、誰かに会いたくなるものよ」


クロは、外をじっと見ています。

雨の向こうを。


そのとき――

からん、と扉の音。


ひとりの女性が、入ってきました。


傘を閉じて、少しぬれた肩。


どこか、元気がない様子です。


「いらっしゃい」


ふくさんが、やわらかく迎えます。


女性は、小さく言いました。


「……あたたかいの、ありますか」


「あるよ」


ふくさんは、にっこり笑っておにぎりを握りはじめました。


今日は、塩むすび。


シンプルで、まっすぐなやつ。


クロは、そっと女性のそばに座ります。


「にゃ」


女性は、少しだけ驚いて、

でも、すぐに力を抜きました。


「……ありがとう」


おにぎりを受け取ります。


まだ、ほかほか。

ひとくち。


「……おいしい」


その声に、少しだけあたたかさが戻ります。


雨の音は、変わらず降り続いています。


でも――

店の中は、どこか静かで、やわらかい空気。


女性は、ゆっくりと食べながら、小さくつぶやきました。


「こういう日も、悪くないかも」


クロは、しっぽをふわりと揺らします。


食べ終わるころには、女性の表情は少しだけやわらいでいました。


「ありがとう」


今度は、ちゃんとした声で。


ふくさんは、うなずきます。


「気をつけてねぇ」


外はまだ、雨。


でも、さっきより少しだけ

やさしい音に聞こえました。


クロは、窓の外を見ます。


しとしとと降る雨の向こう。


どこかでまた、あたたかい気持ちが広がっているような気がしました。


その日も、ふくふくは――


雨の中で、そっと誰かをあたためていました。

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― 新着の感想 ―
ふくふくって、かわいらしい響きですね! なんとシリーズだというじゃありませんか!猫ちゃんもカエルさんもかわいいけど、店全体の雰囲気が気に入りました! あたたかな塩むすび、ほんのり感じる塩味。噛みしめ…
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