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異世界召喚をしたら取り返しのつかないことになった件について

作者: 万年亀
掲載日:2026/03/10

前々からちょっと考えていたお話です。

 窓ひとつない石造りの空間に、濃密な魔力の匂いが充満している。


 ここは王国の心臓部、王城の大儀式場。


 通常であれば光の届かぬこの深淵は、床一面に描かれた巨大な魔法陣が放つ、青白い燐光によって不気味に照らし出されていた。


 複雑に絡み合う幾何学模様。

 その線をなぞるように、水銀のごとき輝きを放つ液状の魔力が絶え間なく脈動している。


 魔法陣の周囲には、数十人もの宮廷魔術師たちが膝をついていた。

 彼らは顔を蒼白に引きつらせ、額からは滝のような脂汗を流しながら、自らの命を削るかのように魔力を陣へと注ぎ込み続けている。


 ブォォォォン、ブォォォォンと、大気が低く唸るような音が響く。

 空間そのものが歪み、軋みを上げている証左だ。


 だが、その儀式の中心から少し離れた安全圏。

 一段高くなった大理石の壇上から、その様子を冷ややかに見下ろす二つの影があった。


「何をしている! さっさと準備を終わらせろ!」


 苛立ちを隠そうともせず、声を荒らげる若き男。

 王国の第一王子、アグナルである。


 彼の身を包むのは、金糸の刺繍が施された豪奢な純白の軍服。

 腰には宝石が散りばめられた儀礼用の宝剣を佩き、その顔立ちは彫刻のように整っている。


 だが、その美しい容貌は今、焦燥と苛立ちによって醜く歪んでいた。


「も、申し訳ありません、アグナル殿下……!」


 儀式を統括する老齢の魔術師長が、血を吐くような声で応じる。

 彼の目は落ち窪み、今にもその場に倒れ伏してしまいそうだ。


「異界とこの世界を繋ぐ次元の壁は、想像以上に厚く……! 今、最後の空間の穴をこじ開けておりますゆえ……!」


「言い訳など聞いていない! 我が国が今、どれほどの危機にあるか分かっているのか!」


 アグナルは舌打ちをし、靴音を荒く立てて壇上を歩き回る。


 彼の言う通り、この国は、いや、この大陸に住む人間という種族そのものが、今まさに未曾有の危機に瀕していた。


 北の大地を支配する魔王。

 そして、その麾下に連なる愚かで邪悪な魔族ども。


 彼らは言葉を用い、ある程度の文明を持ち合わせているにもかかわらず、人間の崇高なる文化や歴史を一切理解しようとしない。

 ただ自らの欲望のままに人間たちの肥沃な領土と豊かな資源を奪い、富むために侵攻を繰り返す野蛮な獣の群れだ。


 最前線となっている北方の都市では、連日のように激しい攻防が繰り広げられている。

 屈強な騎士団が何重にも防衛線を敷いているが、個としての戦闘力で勝る魔族の軍勢の前に、防衛線は少しずつ、しかし確実に押し込まれていた。

 このままでは、王都まで火の手が及ぶのも時間の問題だ。


 だからこそ。

 この忌まわしき状況を覆し、魔族どもを根絶やしにするための、絶対的な「力」が必要だった。


 それこそが、この大掛かりな異世界召喚の儀式。


「お兄様、まだ終わりませんの? 私、もう待ち飽きましたわ」


 アグナルの苛立ちに拍車をかけるように、背後から甘ったるい、それでいて酷く退屈そうな声が響いた。


 アグナルの妹、メナーペ王女である。


 真紅のドレスに身を包んだ彼女は、豪奢な椅子に深く腰掛け、つまらなそうに自らの爪を磨いている。

 王国の危機だというのに、その表情には微塵の緊張感もない。


「ああ、ごめんよメナーペ。こいつらがあまりにも愚図なものでね」


 アグナルは妹に向かって、先ほどまでの怒声が嘘のような優しい声音で答える。


「本当に。無能な魔術師ばかりで困りますわね」


 メナーペはふん、と鼻を鳴らし、魔法陣を取り囲む魔術師たちを虫けらでも見るかのような目で見下した。


 アグナルもまた、同じような冷ややかな視線を魔術師たちに向ける。


 彼らには、この事業がどれほど偉大なのかわからないのだ。

 王国を救い、忌まわしき魔族を滅ぼし、あの広大な北の大地と莫大な資源を我が王家の手中に収めるための、輝かしき一歩。

 その歴史的な瞬間に立ち会えているという栄誉を、この下賤な民どもは理解していない。


(所詮は、命じられたことをこなすだけの歯車に過ぎないか)


 アグナルは内心で嘲笑し、再び魔法陣へと視線を戻す。


 青白い光は徐々にその輝きを増し、中心部で空間が歪み始めているのがわかる。

 成功は間近だ。


 アグナルは目の前の魔法陣を見て、その口元に深い笑みを刻んだ。


 過去の文献や、他国に伝わる数少ない記録によれば、異世界召喚の陣によって喚び出される人間は、そのほとんどが「日本人」と呼ばれる種族だという。


 なんでも、争いのない平和な島国に住んでおり、極めて温厚で穏やかな気質を持っているらしい。


 人を疑うことを知らず、適度に騙しやすく、そして愚か。

 主君への忠誠を絶対とする精神性が刷り込まれており、命令されれば自己犠牲すら厭わないという、為政者にとってこれ以上ないほど都合の良い性質。


 それでいて、この魔力に満ちた異世界への順応性がなぜか異常に高く、すぐに言葉を解し、こちらの常識を受け入れる。


 元の世界で得た知識や教養がある程度備わっていることも多く、内政や技術開発の助けになることもある。


 そして何より。


 彼らは召喚の際に、世界を渡る代償として、あるいは世界からの祝福として、この世界の理を無視した強大な異能を獲得する。


 彼らが自ら「チート」と呼ぶその力。


 魔力無尽蔵、絶対防御、概念の切断、あるいは全属性魔法の極め。

 その力は千差万別だが、いずれも単の人間が一生をかけても到達できない、神の如き強大な力を持つ。


 それに加えて、彼らは元の世界ではほとんどが「平民」であるらしい。


 だからこそ、扱いやすい。


 身分というものを理解させ、適当に豪奢な部屋を与え、美味しい食事を振る舞い、そして見目麗しい異性をあてがっておけば、彼らは簡単に尻尾を振る。

 王侯貴族の暮らしを少し味わわせてやるだけで、彼らは喜び勇んで剣を握り、王のために死地に赴くのだ。


(実に、実に素晴らしい道具だ)


 アグナルは、これから手に入るであろう絶対的な武力を想像し、身体が震えるのを止められなかった。


 もし、召喚されたのが男であれば、隣にいるメナーペが適当に色仕掛けで籠絡する手筈となっている。

 彼女の美貌と王女という肩書きがあれば、平民の男など一瞬で骨抜きにできるだろう。


 逆に、もし召喚されたのが女であれば、アグナル自身が担当役として適当に愛を囁き、抱いてやればいい。

 王子に見初められたとなれば、どんな女でも夢見心地で忠誠を誓う。


 たったそれだけのことだ。

 それだけの労力で、前線を押し留めるだけでなく、愚かな魔族をことごとく殺し尽くし、かの広大な大陸を我が王国の領土として手中に収めることができるのだ。


 こんなに楽な話はない。


「準備できました!! 空間の座標、固定!!」


 魔術師長の悲鳴のような声が、地下空間に響き渡った。


 魔法陣の輝きが、目を射るような強烈な閃光へと変わる。


「よし! 異世界召喚陣、起動せよ!!」


 アグナルが高らかに命じる。


 魔術師たちの一斉の詠唱と共に、床の魔法陣から巨大な光の柱が天を衝くように立ち上った。


 ゴゴゴゴゴゴォォォォォ……ッ!!!


 大気が震え、石造りの城が土台から揺れる。

 強大な魔力の奔流が渦を巻き、儀式場に暴風が吹き荒れた。

 アグナルとメナーペは、目を細めてその光の柱の収束を見守る。


 やがて。


 弾けるような音と共に光が霧散し、静寂が戻った。


 白煙が晴れていく魔法陣の中心。

 そこに、一人の人影が立っていた。


「おお……!」


 アグナルが感嘆の声を漏らす。


 成功だ。

 間違いなく、異世界からの召喚は成し遂げられた。


 アグナルは目を凝らし、その人影の輪郭を確かめる。


 女――いや、少女と言ってもいい年頃だ。

 十代の半ば、まだあどけなさが残る細身のシルエット。


 彼女の背には夜の闇を溶かしたかのような、艶やかで長い黒髪が流れている。


 身に纏っているのは、この世界では見たことのない不可思議な意匠の衣服だ。

 漆黒の布地で作られた、上下が分かれている独特の形状。

 上着は胸元が大きく開き、そこに赤い布が結ばれている。

 下は膝丈ほどの、幾重にもひだが折られた短い裾の衣服。


 動きやすそうではあるが、防御力など皆無に等しい奇妙な装束だった。


(これが、異世界の服というやつか)


 アグナルは興味深く少女を観察する。


 そして何より特徴的なのは、その色彩。

 黒い髪に黒い瞳。


 事前の知識通りだ。

 間違いなく、平和な島国「日本」から来た「日本人」である。


 少女は突然見知らぬ場所に立たされたというのに、取り乱す様子が全くない。

 その黒曜石のような瞳で静かに、そして淡々と周囲の状況を窺っている。

 魔術師たちの倒れ伏す様や巨大な魔法陣、そして祭壇の上のアグナルたちを、ただ無感情に見つめている。


(肝が据わっているのか、それとも状況が理解できていない馬鹿なのか。……まあ、どちらでもいい)


 アグナルは内心で笑みを深める。


 女性である以上、自分が担当役としてこの少女を籠絡することになる。

 これほど幼い少女の相手をするのは少々面倒だが、世界を手に入れるためのちょっとした遊戯だと思えば安いものだ。

 適当に優しい言葉をかけ、王子としての威厳を見せつければ、すぐに頬を染めて従うだろう。


 アグナルは居住まいを正し、最も優雅かつ最も美しく見える歩みで、祭壇の階段をゆっくりと降りていく。


 少女の数歩手前で立ち止まり、アグナルは極上の微笑みを浮かべた。


「やあ。突然な招待、すまないね。驚いたことだろう」


 アグナルの声は甘く、柔らかく、そして同情に満ちているように作られていた。


 少女は無言のまま、ただアグナルを見上げている。

 その瞳には恐怖も、混乱も、何の感情も浮かんでいない。

 まるで、深すぎる湖の底を覗き込んでいるかのような、得体の知れない静けさ。


 少しの違和感を覚えながらも、アグナルは芝居を続ける。


「君には、ぜひこの世界を救ってほしいのだ」


 アグナルは胸に手を当て、悲痛な表情を作ってみせる。


「この世界は今、魔王という邪悪な存在の脅威に晒されている。北方の魔族どもが何の罪もない私たちの領土を侵し、街を焼き、民を殺しているのだ」


 さらに言葉に熱を込める。


「毎日、多くの命が奪われている。人々は疲弊し、明日への希望を失いかけている……。どうかお願いだ。君のその秘められた力で、勇者として、あの忌まわしき魔王を倒して欲しいんだ」


 これは全くの嘘ではない。

 実際に最前線となっている砦や防衛都市では、毎日のように凄惨な戦闘が行われ、多くの兵士や民が命を落としている。

 魔族の力は強大であり、人間の軍勢は常に後手へ回っているのが現状だ。


 だが、それはあくまで「最前線」での話。

 王都をはじめとする他の地域は、まだ直接的な被害を受けてはおらず、平和そのものだ。


 そしてアグナルの、いや王国上層部の真の目的は「平和を取り戻す」ことではなく、魔王を討ち果たし、魔族を根絶やしにした後に手に入る手付かずの自然と莫大な資源を独占すること。


 民の命など勇者をその気にさせるための便利な大義名分に過ぎない。


 少女はアグナルの長口上を最後まで静かに聞いていた。


 そして、ぽつりと。

 本当に、ただ事実を確認するだけのような感情の起伏がない声で口を開いた。


「――魔王を、倒せというのですね?」


 鈴の音のように澄んだ、しかし酷く冷たい声。


 アグナルは、その言葉に内心で歓喜の声を上げた。


(勝った)


 なんて簡単なのだろう。

 やはり異世界人というものは、おとぎ話の勇者ごっこに憧れる単純な生き物なのだ。

「世界を救ってくれ」「魔王を倒してくれ」という、いかにもな言葉を与えれば、疑問も持たずにその役割を受け入れる。


 これならば後の洗脳も容易い。


 アグナルは醜悪な笑みが表に出ないよう必死に表情筋を統制し、悲壮感と感謝が入り混じった完璧な王子の顔を作る。


「その通りだ! 君だけが頼りなのだ! どうか、この世界のために力を貸してくれ!」


 アグナルは芝居の仕上げとして、少女の小さな手を握ろうと自らの右手を恭しく差し出した。


「いきなりのことで、君も混乱していると思う。まずは城の客室でゆっくりと休んで――」


 アグナルが少女の手に触れようとした。

 まさに、その瞬間。


 ズゴォォォォォォォォォン!!!!!


 大音響と共に儀式場の分厚い石の天井が、まるで紙細工のように粉々に砕け散った。


「な、なんだ!?」


 アグナルは差し出した手を引っ込め、思わず頭を抱えて身を屈める。


 砕け散った天井の瓦礫が、雨あられと降り注ぐ。

 魔術師たちが悲鳴を上げて逃げ惑い、祭壇の上のメナーペ王女も「きゃあああっ!」と耳を塞いでしゃがみ込んだ。


 土煙が舞い上がり、青白い魔法陣の光が遮られる。

 そして、ぽっかりと空いた天井の巨大な穴から夜の闇が覗いていた。


 だが、そこに見えたのは星空ではない。

 空を覆い尽くすほどの、無数の黒い影。


 バサッ、バサッと巨大な皮膜の翼が空気を叩く音が幾重にも重なって響き渡る。


「ははははは! 勇者召喚か! 他力本願な人間らしい、実に姑息で滑稽な真似だな!」


 穴の真上から雷鳴のような野太い声が降ってきた。


 土煙が晴れていく。

 そこに浮かんでいたのは、悪夢そのものだった。


 背中に巨大な蝙蝠の翼を生やし、全身を漆黒の鎧で覆った異形の戦士たち。

 魔族の軍勢だ。


 数十、いや、数百の魔族が王城の真上、儀式場の穴からこちらを見下ろしている。

 その中心で一際巨大な体躯を持ち、豪奢な装飾が施された鎧を着た魔族が、嘲笑うようにアグナルを見据えていた。


「だが、我らが魔王様はお前たちの浅はかな手の内など、とっくに読んでおられる!」


 リーダー格の魔族が口の端から鋭い牙を覗かせて嗤う。


「バ、バカな……! 四天王の側近……!?」


 アグナルは、その魔族の顔に見覚えがあった。

 前線からの報告書に何度も上がってくる、圧倒的な力で人間の軍勢を蹂躙した魔王軍の幹部の一人。


「そ、それが何故、軍勢を率いてこの王城まで!? 王都の防衛結界はどうした!? 兵士は何をしていたのだ!!」


 アグナルはパニックに陥り、裏返った声で絶叫する。


 王都は最前線から遥か遠く離れた場所にある。

 何重もの魔法結界と、精鋭たる近衛騎士団によって守られているはずなのだ。

 それが何故、何の警告もなく敵の中枢部隊が頭上にいるのか。


「ククク……人間の軍勢など、我らにとっては障害にすらならん。防衛結界? あんな紙切れのようなもの、我が部隊が少しばかり本気を出して引き裂いただけだ」


 四天王の側近は、つまらなそうに鼻を鳴らす。


「城の兵士どもも今頃は庭で我らの部下と戯れているだろうよ。もっとも、すぐに肉片に変わるだろうがな」


 彼らは人間の防衛線など初めから存在しないかのように、空から一直線に王城を目指して強襲をかけてきたのだ。

 勇者召喚の儀式を察知し、その希望を根絶やしにするために。


「召喚されたばかりの勇者殺しなど、赤子の手をひねるようなもの。さっさと終わらせて、王都ごと灰にしてやろうではないか」


 側近の冷酷な視線がアグナルの足元に立つ黒髪の少女へと向けられる。


「さあ勇者よ! 死ね! その貧弱な命を我らが魔王様に捧げるのだ!!」


 側近の号令と共に、空に浮かんでいた十数体の魔族の兵士たちが、一斉に翼を折りたたみ、弾丸のような速度で少女に向かって急降下を開始した。


 空気を切り裂く音。

 彼らの手には鈍く光る巨大な戦斧や、魔力を帯びた長槍が握られている。


「ひぃぃぃっ!?」


 アグナルは情けない悲鳴を上げ、少女を置いて無様にも後方へと転がるように逃げ出した。


 守る気など毛頭ない。

 自分の命が最優先だ。


 魔族の凶刃が無防備な少女の細い首に届く。

 誰もが、その異世界から来たばかりの哀れな少女が、一瞬にして肉塊に変わる光景を予想した。


 だが。


 少女は迫り来る魔族の群れを見上げ、ほんの僅かに口を半開きにした。


 スウゥゥゥ……。


 小さく息を吸い込む音。

 それは喧騒の中で誰の耳にも届かないほどの微かな音。


 そして。


 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!


 少女の口から圧倒的な質量を持った「黒」が吐き出された。


 それは炎。

 しかし通常の赤や青の炎ではない。

 光を吸い込むような絶対的な漆黒の炎。


 広範囲に放射された黒炎は急降下してきた十数体の魔族たちを、文字通り飲み込んだ。


 悲鳴を上げる間すらなかった。

 黒炎に触れた魔族の強靭な鎧も魔法耐性を持つ皮膚も、一切の抵抗を許されず瞬時にして炭化し、黒い灰となって空中に四散する。


 武器が溶ける音すらしない。

 ただ、そこにあった存在が一瞬で「無」に帰したのだ。


 風が吹き抜け、黒い灰がパラパラと儀式場に舞い落ちる。

 先ほどまで少女に襲いかかっていた魔族たちは、影も形も残っていなかった。


「……え?」


 上空でその光景を見ていた四天王の側近が、間の抜けた声を漏らす。


 祭壇の上で震えていたアグナルとメナーペも、信じられないものを見たというように目を丸くして固まっている。


 静寂が降りた空間で、少女だけが何事もなかったかのように口元を拭った。


「……どうした? 火を吹く女が珍しいか」


 少女の黒い瞳が上空の側近を冷ややかに見据える。

 その声には驕りも、怒りも何もない。

 ただ、道端の石ころを蹴り飛ばした程度の無関心。


「な、なんだと……!? 貴様、何をした!?」


 側近が狼狽し、怒号を上げる。

 魔王軍の精鋭が一瞬で消滅したのだ。

 理解が追いつかない。


「貴様ら! 一斉にかかれ! 魔法で蜂の巣にしてやれ!!」


 側近の命令を受け、残っていた数十体の魔族たちが一斉に魔力を練り上げる。

 彼らの周囲に炎の槍、氷の刃、雷の球などの無数の攻撃魔法が展開される。

 それが一斉に少女に向かって放たれた。


 夜空を埋め尽くすほどの、極彩色の魔法の豪雨。


 だが、少女は逃げようともしない。


 トンッ!


 少女が、軽く床を蹴った。

 ただそれだけで、彼女の身体は重力の楔を断ち切ったかのようにフワリと空へと舞い上がった。


 翼などない。

 魔法の詠唱もない。

 ただ虚空を歩いている。


 少女は空を駆け上がりながら飛来する無数の魔法の雨の中へ、自ら突っ込んでいく。


「死ねェェェェ!!」


 魔族たちが狂ったように魔法を放ち続ける。

 だが、そのどれもが少女には届かない。


 ヒュンッ!

 少女は空中で身体を捻り、炎の槍を紙一重で躱す。

 トンッ、と見えない足場を蹴り、氷の刃の雨をすり抜ける。


 その動きは、あまりにも異次元。

 物理法則という概念が彼女の前では意味を成していない。


 そして少女の右手が瓦礫の破片――小石を一つ、軽く弾いた。


 小石が、音速を遥かに超える速度で弾き出される。

 それは空気を切り裂き、白い衝撃波を纏って、魔族が放った巨大な雷の球に激突した。


 パァァァァァンッ!!


 たった一つの小石が、数十人がかりで放たれた巨大な攻撃魔法を、まるでガラス細工のように木端微塵に粉砕したのだ。


「ば、馬鹿な……!」


「魔法が、小石で……!?」


 魔族たちが絶望の声を上げる。


 少女は止まらない。

 魔法の雨を抜け、一匹の魔族の目の前に音もなく現れた。


「ヒッ!?」


 魔族が戦斧を振り下ろそうとする。

 しかし、それよりも早く。


 少女の白く細い腕が魔族の太い首元へと伸びた。

 そして、その小さな手で魔族の首をガシッと掴む。


 メシャァッ。


 嫌な音が響いた。

 少女は何の力みも感じさせない自然な動作で、まるで果実をもぎ取るかのように魔族の首を素手で引きちぎったのだ。


 鮮血が噴水のように噴き出し、首を失った魔族の巨体が地上へと落下していく。


 少女は引きちぎった首を無造作に放り投げると、空中で楽しそうに目を細めた。


「こ、殺せ! 殺せえええええ!!」


 四天王の側近が恐怖に顔を引きつらせて絶叫する。


 残った魔族たちが半狂乱になって少女に群がる。

 剣を振り回し、槍を突き出し、至近距離から魔法を放つ。


 だが、少女はその全てを、あくびが出るような余裕で捌いていく。

 爪先で剣を弾き、手刀で槍をへし折り、指先で魔法を散らす。


 そのたびに魔族の身体が文字通り破壊されていく。

 腕が飛び、足が砕け、胴体が真っ二つに裂かれる。


 それは戦闘ではない。

 一方的な解体作業。


 数分もしないうちに、空を覆っていた魔族の軍勢は半数以下にまで減っていた。

 残った魔族たちの目に、明確な「恐怖」と「絶望」が宿る。


「ひ、ひぃぃっ……!」


「バケモノだ……こいつ、人間じゃない……!」


 武器を取り落とし、背を向けて逃げ出そうとする者が出始める。

 圧倒的な暴力の前に彼らの戦意は完全に折れていた。


 それを見た少女は、ふぅ、と小さく息を吐いた。


「逃げるか。……面倒だな」


 少女は空中でピタリと静止すると、その漆黒の瞳を眼下の王城の敷地へと向けた。


「――餓者髑髏がしゃどくろ


 静かに、その名が紡がれた。


 ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ……ッ!!!


 瞬間、王城の広大な中庭の地面が内側から爆発したように隆起する。


「な、なんだ!?」


 アグナルが祭壇の上から身を乗り出す。


 地面を突き破り、土砂を巻き上げて現れたのは城の塔よりも巨大な白骨の化け物。


「ギィィィィィヤァァァァァァ……!!」


 骨と骨が擦れ合う、耳障りな不協和音が響く。

 空ろな眼窩に青白い鬼火を宿した、山のような巨大骸骨。

 それが逃げ惑う魔族たちに向かって、その巨大な骨の手を伸ばした。


「うわあああっ!?」


 巨大な手が、空を飛ぶ数体の魔族をまとめて鷲掴みにする。


 メシャリ、グシャリ。


 嫌な音が響き、骨の指の隙間から、血と肉片がボタボタと降り注ぐ。


「ひぃぃぃっ! 悪魔だ! 逃げろ! 早く逃げろォォォ!!」


 残った魔族たちはパニックに陥り、四方八方へと散り散りに逃げ出そうとする。

 空へ、森へ、あるいは雲の彼方へ。


 だが少女はそれを許さない。

 彼女の口元に凄惨な笑みが浮かぶ。


「逃がすわけなかろう。――牛鬼うしおに


 ヌチャァ……ッ。


 闇夜から這い出すようにして現れる異形たち。

 蜘蛛のような八本の長い足に、鋭い角を生やした猛牛の頭を持つ化け物。

 それが、十体、二十体と、虚空から次々と姿を現したのだ。


「モォォォォォォォォッ!!」


 牛鬼たちは恐ろしい速度で虚空を這い回り、逃げる魔族たちに襲いかかった。

 蜘蛛の足で魔族の身体を絡め取り、鋭い牛の角で腹を貫き、強靭な顎でその肉を噛みちぎる。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」


「助けて! 魔王様ぁぁぁぁっ!!」


 空中で繰り広げられる、凄惨な捕食の宴。

 魔族たちの悲鳴が夜空に木霊する。


「おのれええええええ!!」


 その地獄絵図の中、ただ一騎。

 四天王の側近だけが血走った目で少女に向かって突撃してきた。

 彼の手には禍々しい魔力を纏った巨大な大剣が握られている。


「よくも……よくも我が部下たちをォォォ!! 死ねぇぇぇぇ、勇者ァァァァ!!」


 側近は自身の命と引き換えにするかのような、決死の特攻をかける。

 大剣が少女の頭上へと振り下ろされる。


 だが、少女は避けない。

 防御すらしない。


 ただ空中に浮かんだまま、突っ込んでくる側近を見て、赤い舌でペロリと唇を舐めずった。


 そして三日月のように目を細め、心底楽しそうに嗤ったのだ。


 その笑顔は、どんな魔族よりも、どんな悪魔よりも純粋で邪悪。


 側近の脳裏に死よりも深い「恐怖」が刻み込まれる。

 剣を振り下ろす腕が、本能的な恐怖によって硬直した。


 ――その瞬間。



 ◆◆◆◆



 夜風が、血の匂いを運んでくる。


 先ほどまで空を埋め尽くしていた魔族の軍勢は、今や一匹残らず駆逐されていた。

 餓者髑髏と牛鬼も、その役目を終え、影の中へと消え去っている。


 静寂を取り戻した王城の儀式場。

 瓦礫の散乱する床の上に少女は静かに降り立っていた。


 彼女の漆黒の衣服には、あれだけの殺戮を繰り広げたというのに一滴の血の汚れも付着していない。


 そして、彼女の右手には。


「……ハァ……ハァ……」


 先ほどまで勇猛に突撃してきた、あの四天王の側近がいた。

 いや、正確には「側近の首」が、そこにあった。


 胴体は既に消滅し、首だけが無残に引きちぎられ、少女の細い指に頭を掴まれてぶら下がっているのだ。


 側近の目は焦点が定まらず、口からは血の泡を吹いている。


「何故、俺は……生きているんだ……?」


 側近の首が掠れた声で呟く。


 首だけになれば、どんな強靭な魔族であっても即死するはずだ。

 それなのに意識ははっきりとあり、痛みも感じ、思考もできている。

 この異常な状態が側近の恐怖をさらに煽っていた。


 少女は手の中の首を眺め、楽しそうに目を細める。


「私がそう命じたからだ。何の不思議がある?」


 平然と言ってのけるその言葉に側近は絶望を覚えた。

 生死の境界すら、この少女は言葉一つで捻じ曲げているというのか。


 少女は凄惨な笑みを浮かべたまま、側近の瞳を覗き込む。


「さて、答えろ。魔王はどこだ?」


 その声は静かだが逆らうことなど絶対に許されない、絶対的な支配者の言葉。


 だが、側近は魔王軍の幹部としての最後の意地を見せる。


「フン……誰が、教えるものか……。我らが魔王様は、貴様のようなバケモノにも……決して遅れは取らん……!」


 側近は少女から視線を外し、祭壇の上でガタガタと震えながら抱き合っているアグナル王子とメナーペ王女に向かって、最後の力を使ってありったけの声で吠えた。


「人間どもォォォォォ!! お前たちは、いったい何を呼んだんだァァァァァ!!」


 それは敵対する人間への恨み言というよりは、恐怖と理不尽に対する魂からの絶叫。


 自分たち魔族よりも遥かに恐ろしく、邪悪で底知れない存在。

 そんなものを、この世界に喚び出してしまった人間たちの愚かさへの純粋な叫びと疑問。


 少女は側近のその叫びを聞いて、ふっと興味を失ったように目を伏せた。


「質問に答えない者はいらん」


 グシャッ。


 鈍い音が響いた。

 少女の右手が無造作に握り込まれ、側近の首は、まるで熟れた果実のように、あっけなく握り潰されたのだ。


 脳漿と血液が飛び散るが、それらも少女の衣服を汚す前に見えない壁に弾かれるようにして床に落ちる。


「ヒッ……!!」


 そのあまりにも残酷で作業的な殺戮を目の当たりにし、アグナル王子は情けない悲鳴を上げて後ずさる。


 少女は血塗れになった自分の右手を軽く振り払いながら、足元に散らばった側近の肉片を見下ろした。


「死んだからと、情報は取れないと思ったか?」


 少女がそう呟いた瞬間。


 室内の空気が急激に冷たくなった。

 ろうそくの火が消え、青白い燐光だけが周囲を照らす。


 ヒュゥゥゥ……。


 風もないのに不気味な音が鳴り響く。

 そして少女の周囲の空間が歪み、そこから半透明の、ぼんやりとした光の塊がいくつも浮かび上がってきた。


 それは、つい先ほど少女の手によって惨殺された、魔族たちの死霊。


『痛い……痛い……』


『熱い……身体が焼ける……』


『助けて……助けて……』


『死なせて……頼むから、死なせてくれ……』


 死霊たちは生前の姿を留めぬほどに歪み、苦痛に顔を引きつらせながら、少女の周囲をあてもなく漂っている。

 彼らは死してなお少女の支配から逃れられず、永遠の苦しみを味わい続けているのだ。


「オ、オロロロロロロロッ……!!」


 その常軌を逸した地獄の光景にメナーペ王女は耐えきれず、祭壇の上で胃の中のものをぶちまけた。

 ドレスが汚れることも気にせず、四つん這いになって嘔吐を繰り返す。


 アグナル王子も顔面を蒼白にし、ガチガチと歯の根を鳴らしながら、ただその光景を直視することしかできない。

 彼が「適当に扱えばいい」と考えていた異世界人の少女は人間の理解を遥かに超えた正真正銘の化け物だったのだ。


 だが少女は背後で嘔吐する王女の姿など全く気にも留めず、自らの周囲を漂う死霊の一匹――先ほどの側近の霊に、親しげに話しかけた。


「さあ、改めて聞こう。魔王の居場所はどこだ?」


『アァ……北ノ……果テ……氷結ノ……城……』


 苦痛に苛まれる死霊は抗う意志すら残されておらず、あっさりと機密を吐露した。


「……北の果て、氷結の城か。よし、相分かった。ご苦労」


 少女は満足そうに頷く。

 そして、彼女はゆっくりと自らの口を大きく開いた。


 耳まで裂けるかのように大きく開かれた口。

 その奥には人間のものとは思えない、無数の鋭い牙がびっしりと並んでいた。


「褒美に私の一部となることを許す」


 シュォォォォォォォッ!!


 少女が息を吸い込むと、周囲を漂っていた側近の死霊が悲鳴を上げる間もなく、彼女の口の中へと吸い込まれていった。


 ゴクン。


 少女は死霊を丸呑みにし、美味しそうに喉を鳴らす。

 そして赤い舌でペロリと唇を舐めた。


「ひっ、ひぃぃぃぃっ……!!」


 アグナル王子は完全に腰を抜かし、祭壇の階段を後ずさる。

 恐怖で視界が歪み、息ができない。


「お前は……なんだ? 何者だ……?」


 震える声で、ようやくそれだけを絞り出す。


 人間じゃない。

 この少女は絶対に人間などではない。

 勇者でもない。


 もっと別の、根源的で恐ろしい――。


 少女はアグナルの問いに、ゆっくりと振り返った。

 その漆黒の瞳が王子を真っ直ぐに射抜く。


「名か」


 少女は、ふっと薄く笑った。


「私の名は――」


 一瞬の静寂。

 そして少女は、その可憐な容姿にそぐわぬ、地を這うような重低音で自らの真名を名乗った。


山本五郎左衛門さんもと ごろうざえもん。日ノ本の魔王である」


 その名が紡がれた瞬間、空間そのものが震え、アグナル王子の心臓を鷲掴みにするような圧倒的なプレッシャーが儀式場を支配した。


 山本五郎左衛門。

 それは、遥か遠い異世界――日ノ本と呼ばれる国において百鬼夜行を統べる大妖怪の総大将の名。

 畏怖と恐怖の象徴たる真なる魔王の名であった。


「感謝するぞ、人間」


 少女――山本五郎左衛門は、スカートの裾を摘み、優雅に一礼するような仕草を見せた。


「昨今は私のいた世界も文明の開拓とやらが酷くてな。夜は明るくなり、森は切り拓かれ、鉄の塊が地を走る。科学とやらが蔓延り、人間どもが暗闇を恐れなくなってしまった」


 彼女の言葉は、どこか寂しげで、それでいて退屈しきっていた。


「おかげで我らのような『モノ』の居場所が、すっかり少なくなってきていたのだ。退屈で退屈で、欠伸を噛み殺す日々だった」


 五郎左衛門は顔を上げ、再び凄惨な笑みを浮かべる。


「そこへ、この得体の知れない召喚だ。お前たちが私を呼んでくれたおかげで、私はこうして新たな遊び場を見つけることができた。礼を言うぞ」


 アグナル王子は言葉を発することができない。

 自分が召喚したと思っていた存在が、魔族よりもさらにタチの悪い純粋な悪意の塊であったという事実に、ただただ絶望するしかなかった。


「して、私への依頼は『この世界の魔王を倒せ』であったな」


 五郎左衛門は楽しそうに首を傾げる。


「よかろう。その願い、確かに聞き届けた。倒して進ぜよう」


「ほ、本当か……?」


 アグナル王子の顔に一瞬だけ希望の光が差す。

 相手がどんな化け物であれ、魔王を倒してくれるというのなら、まだなんとかなるかもしれない。


「ああ。魔王も、魔族も一匹残らず皆殺しにしてやろうではないか」


 五郎左衛門はケラケラと笑う。

 それは、これから始まる虐殺の宴を待ちわびる、無邪気な子供のような笑い声。


「――別途で、報酬は貰うがな」


 ピタリと、アグナルの思考が止まる。


「ほ、報酬……とは、なんですか……?」


 恐る恐る尋ねるアグナル。

 金か、領土か、それとも権力か。

 この化け物が満足するなら国庫の半分を差し出しても構わない。


 だが五郎左衛門の答えは、アグナルの矮小な想像を遥かに超えるものだった。


 少女は心底楽しそうに嗤った。


「この世界に生きる、全ての命と魂、自由と尊厳」


「……え?」


「それらを、根こそぎいただく」


 その言葉の意味を理解した瞬間、アグナル王子の目の前が真っ暗になった。


 魔族を殺し尽くした後は、人間も殺し尽くすということか。

 いや、ただ殺されるだけではない。「魂と尊厳」を奪われる。

 先ほどの死霊たちのように、死してなお永遠にこの化け物に支配され、苦しみ続けるということだ。


「この世界を、お前たちの望み通り救ってやろうぞ、人間」


 五郎左衛門はアグナルを見下し、慈悲深い聖母のような微笑みを浮かべた。


「その代わりに、この世界の全てを私に寄越せ。それで対等というものよ」


 救済と引き換えの完全なる破滅の宣告。

 それが、真の魔王との契約。


『ヒャハハハハハハハハッ!!』


『ゲギャギャギャギャギャッ!!』


『クケケケケケケケケッ!!』


 虚空から、五郎左衛門に従う無数の魔物や妖怪たちの下劣で耳障りな嘲笑が響き渡った。

 それは新たな世界を手に入れた歓喜の合唱。


「では、少し出かけてくる。留守を頼むぞ」


 五郎左衛門は、ふわりと軽やかに宙へと浮かび上がった。

 そして砕け散った天井の穴から、魔王のいる北の大陸の方角へと、まるで夜の散歩にでも出かけるかのような気軽さで音もなく飛んでいった。


 残されたのは崩壊した儀式場と、恐怖に支配された人間たち。


 嘔吐を繰り返し、完全に精神が崩壊して虚ろな目をしているメナーペ王女。

 そして、へたり込んだまま空いた天井を見上げるアグナル王子。


 アグナルは震える唇から、ぽつりと呟いた。


「悪夢だ……」


 自分が犯した、取り返しのつかない過ち。

 王国の繁栄のため、見下す魔族を滅ぼすために打った最後の一手が、世界を終わらせる真の災厄を招き入れてしまったのだ。


 その絶望の呟きは夜風に吹かれて、虚しく消えていった。


 ――そして、一週間後。


 北の大地を支配していた魔王と、その配下の魔族たちは召喚された「勇者」によって、一匹残らず完全に滅ぼされた。


 かつて人々が恐れた脅威は、文字通り跡形もなく消え去ったのだ。


 だが、それは平和の訪れを意味するものではなかった。

 魔族に代わり新たな、そしてより絶対的で絶望的な支配者が、この世界に君臨することになったのだから。


 世界は山本五郎左衛門という新たな魔王の下で、誰も逃れられない永遠の恐怖と隷属の時代――新たな時代を迎えることとなる――。

五郎左衛門「異世界召喚が安易に技術や力を手に入れるものと認識されているのはおかしくはないか? 異世界だぞ? 斯様な事故があってしかるべきであろうよ」


ちなみに日本人に「山本五郎左衛門って誰?」と言われるとちょっと魔王傷つきます。


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