私服
三題噺もどき―はっぴゃくじゅうきゅう。
賑やかなBGMを背景に、本を読んでいる。
もうあと数10ページで読み終わる。
出来れば今この時間で読み切って放課後に図書館に行きたいところだ。
「……」
5時間目終わりの休憩時間である。
短いこの時間で読みきれるかどうかは分からないが、それはそれ。その時にでもどうにかすればいいし、別に返却日が今日というわけではないのだ。
ただそれなりに人気のシリーズもので、逃すと次の巻が借りれないというだけで。
「……」
シリーズ物はこういうところが厄介だよな。
誰かほかの人が借りていると、その続きも読めないし……その人がさっさと返してくれるような人ならいいが、返されない限りはこちらも一生読めない。
中学の時にそんなことがあって、在学中に読み切れなかったことがある。
「……、」
ふと。
教室内の賑やかな声に、幼い声が混じってきた。
廊下からの声かと思ったが、声の元は外にあった。
「……」
オレンジや赤、黒や水色、青や緑。
色とりどりのランドセルが、走ったり歩いたり立ち止まったり。
……小学生はもう帰る時間なのか。
「……」
我が校の隣には、小学校がある。
朝、たまに小学生と登校時間が被ることもまれにある。
それなりに早い時間に来ているので、まちまちではあるが……早いなぁといつも思う。大抵は同じ子のような気がする。生憎顔までは覚えていない。
「……」
昔は制服というモノが、小学校にもあったような気がするが。
隣の小学校は、自由なのだと言う。私が通っていたのは別の小学校なので、あそこはまだ制服があったはずだ。
「……」
この寒い中、半そでに短パンという少年もそうそう見ない。
親御さんが心配しているのだろう。大抵は暖かそうなダウンを着たり、マフラーや手袋で適切に防寒したりしている。
そうでなくても、真冬に真夏の格好をするのは、頭のおかしい証拠だと、私は思う。本人はそれがかっこいいと思っているのか、単に体温が高くて冬でも暑いからその恰好なのか、知ることはないが……どういう気持ちなのか知りたいものだ。私は基本寒がりなので、暖かくなるギリギリまで冬服を着ている。
「……」
しかしこう見ていると、制服という指定があることがいかに楽かよくわかる。
確かに、テレビなどで映る都会の小学校にいいなぁと幼心に思ったこともある。制服なんて着ている間は、毎日私服で登校できるのが羨ましくなるのだ。
けれど、毎日服を選んだり、被らないようにしたり、気をつかう必要があるのは面倒だ。まぁ、大学に進学すれば同じ道を辿るのだけど……今から考えただけで面倒だ。服にそもそも興味がないのに。
「……」
まぁでも、好きな服を着れると思えば、嬉しいものなのだろう。
あの女の子なんて、きっとこだわりが凄いのだろう。赤いランドセルに、赤い鞄を持って、ワンピースだろうか赤い服を着ている。帽子は指定なのだろう、皆と同じ黄色い帽子をかぶっている。目立つなぁ……。
「……」
あぁでも。
そういえば、あの子と遊ぶことなんてないから。
私服というモノを見たことがないかもしれない。
学校指定の制服しか。
「……」
だから何だと言う感じだが。
なんとなくまぁ、見てみたいなと思っただけだ。
きっと、センスもいいから、何を着ても似合いそうなものだ。
「……、」
あの女の子、さっきからこっちを見ているけど。
知り合いでもいるんだろうか。
兄か姉がこの高校に通っているんだろうか。
それにしてもよく目立つ。全身赤なんて親が止めそうな物なのに。なんでも許してくれる優しい親なんだろうか。それともTPOというモノを知らない親なんだろうか。
「……」
まぁ、いいか。
全くページも進まないままに、次の授業が始まりそうな時間になっている。
これは明日返しに行くしかないか。
お題:オレンジ・制服・赤い鞄




