彩を還す者たちと黄の来訪者(1)
街の外れにある、ちょっと小洒落たレストラン。
無彩パークの戦いから数日、久々に人の色と声が戻った街は少しだけ明るかった。
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テーブルの上には、烈の肉料理と湊の魚料理、そして彩葉の小さめのパスタが並んでいる。
烈がフォークを握ってどや顔で言った。
「ええか湊。やっぱ肉や。肉が正義や。肉さえ食うたら元気モリモリ、敵なんかワンパンや。」
湊はため息をつきつつ、魚の皿を指先で押し出す。
「馬鹿を言え。魚だ。青魚にはDHAとEPAが含まれていて、思考がクリアになる。
君は少し脳みそに魚を入れたほうがいい。」
烈が椅子をきしませて立ち上がりそうになる。
「はあ!? なんやと魚野郎!」
「肉脳。」
「言ったな魚メガネ!」
二人がガタガタとテーブル越しに火花を散らす。
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彩葉はパスタをくるくる巻きながら、二人を見て、困ったように小さく笑った。
「……じゃあさ。」
烈と湊が、ピタッと動きを止めて振り向く。
彩葉はフォークを置いて、二人を交互に見る。
「そんなに言うなら……お互いに一口ずつ食べてみたら?」
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「……は?」
烈が間抜けな声を出す。
湊が眼鏡を押し上げる。
「……何を言い出す。」
彩葉は淡々と続けた。
「食べもしないで張り合うの変だよ?
美味しいかどうか、自分で確かめてみたら?」
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烈と湊は顔を見合わせ、ゆっくりと無言で皿を交換した。
烈が湊の魚を、湊が烈の肉を――
ほぼ同時にフォークで取る。
お互いの目を睨みながら、口に入れた。
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……数秒の沈黙。
烈がもごもごと咀嚼し、湊も静かに噛み締める。
そして同時に、小さく呟いた。
「……意外と……」
「……こっちも……美味いな……」
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烈と湊が、不器用に黙り込む。
彩葉は、小さくクスッと笑って、パスタのフォークを持ち直した。
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「ほらね。色と同じで、種類が多い方が飽きないし。」
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湊が目を細めて、何か言いかけたが、代わりに烈が口を挟んだ。
「なあ、彩葉。次はどこ行くんや?
まだブランクの痕跡残ってるんやろ?」
湊も静かに頷く。
「……東の工場跡地が怪しいって情報が入ってる。
無彩パークの残骸を運んだトラックが、そこに出入りしていたらしい。」
烈がフォークをぐるぐる回す。
「また面倒なとこやな。
ま、腹ごしらえしたし、次は俺の肉パワーの出番や!」
湊が呆れたように魚を口に運ぶ。
「魚の知恵も忘れるな。」
彩葉は二人を見て、また小さく笑った。
「……じゃあ次は、みんなで色を取り戻しに行こう。」
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テーブルの上には、空になった皿と、次の戦いの匂いが、ほんの少し漂っていた。




