色を還す、パステルの刃(6)
烈と湊と夜凪の謎の取っ組み合いを背に、彩葉はひとり霧の奥へ進んだ。
剥がれた鉄扉の向こう――そこにあったのは、無彩パークの“核”とも呼ばれる色の保管庫だった。
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「……あれが……!」
高い天井。
工場跡地の中心に、不気味に光る巨大なカプセル群が並んでいる。
内部には奪われた色の結晶――無数の“核”が浮いていた。
ガチャ――ッ
乾いた金属音。
その前に立つのは、異様な外殻で身を覆った人影だった。
鎧のような外殻が虹色に鈍く光っている。
「よく来たな、パレットのガキども。」
声は甲高く、笑っているのか怒っているのかもわからない。
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烈と湊、夜凪が彩葉の背後に並んだ。
「……誰やこいつ。」
烈が不機嫌に舌打ちする。
湊が低く言い切る。
「“コレクター”……ブランクの幹部。人の色を集めて武装化してる。」
コレクターは装甲の腕を上げ、肘から大筆のような刃を展開する。
装甲の表面を青の色素が覆っていく。
「お前らの色、全部ここに塗り潰してやるよ。」
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ギギギギ――!
コレクターの刃先が、青く冷たい光を放つ。
烈がにやっと笑った。
「青は……緑に弱いんやったな。」
湊が眼鏡を押さえ、青い刃の前に出る。
「ここは俺が行く。烈、お前の赤は青に弱い。下がれ。」
烈が舌打ちする。
「ちっ、せやったな……。」
湊の筆が深い緑に輝く。
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「彩葉、援護を。」
「うん。」
烈が横で肩を回す。
「殴るのだけは俺にやらせろ。」
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ドン――!
湊が緑の斬撃を青の装甲に叩きつける。
コレクターの青い外殻にヒビが走った瞬間――
烈がすかさず背後から殴り込む。
「おらぁッ!!」
裂けた装甲の継ぎ目を、烈の拳が赤く燃えて粉砕した。
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だが、コレクターは次に緑の色を装甲に纏う。
湊が低く叫ぶ。
「緑は……赤が弱点!」
烈が笑う。
「俺の出番やな!」
烈の筆が鮮やかな赤に燃え上がり、緑の外殻を豪快に切り裂く。
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砕け散った装甲の奥から、黒い霧が立ちのぼる。
夜凪が一歩前に出た。
「……闇(黒)か。」
湊が睨む。
「黒には黄が弱点だ。お前……持ってんだろ。」
夜凪は無言で、腰の小さな黄の結晶を掲げた。
「貸しだ。」
夜凪が筆を振り抜くと、黒の装甲が眩い光に溶けて消えた。
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だが、最後に残ったのはぎらぎらとした黄色のコア。
夜凪の目が細められる。
「黄色……?」
烈が眉をひそめる。
「おい、黄は……黒が弱点やったな。」
夜凪の黒の筆がかすかに揺れた。
「俺が行く。」
夜凪の黒の閃撃が黄色のコアを撃ち抜く。
眩い残光が散り――
彩葉はパレットを構えた。
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「みんなの色……混ぜる。」
パステルの筆先に、赤、緑、黒――
そして彩葉自身の淡い色が溶け合う。
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「ブレンド――!」
虹色にきらめく一閃が、コレクターの残骸を斬り裂いた。
砕けた核から色が解放され、工場跡地を覆う白い霧がふっと薄くなる。
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烈が大の字で寝転ぶ。
「……っしゃあ! 俺が一番働いたやろ。」
湊が無言で烈の腹を踏む。
「誰がだ。」
夜凪はすでに背を向けていたが――
彩葉がフードを掴む。
「どこ行くの。まだまだ、付き合ってもらうから。」
夜凪は小さく舌打ちした。




