色を還す、パステルの刃(4)
西区――
正式には「西第三再開発工業地帯」。
でも誰もそんな堅苦しい名前では呼ばない。
みんなこう呼ぶ。
『無彩パーク』
色が奪われすぎて、夜でも昼でも薄白く霧が漂うこの場所。
まるで、色のないテーマパークの廃墟みたいだから誰かがそう呼び始めた。
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「……相変わらず気味悪ぃな、『無彩パーク』……」
烈が工場跡地の塀に腰かけて、空っぽの夜空を見上げる。
「お前に似合いだな。無彩で空っぽ。」
湊が鼻で笑った瞬間、烈の拳が湊の頬スレスレを掠めた。
「はあ!? てめぇまた――」
「――はいはい。」
彩葉が背後から烈の首根っこを軽く掴む。
烈の背筋がピンと伸びる。
「……ふぇっ……ご、ごめん……」
「湊も。からかわない。」
「……すみません……。」
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彩葉はパレットを開き、廃墟の奥を覗き込む。
「ここには色を集めてる保管庫があるはず。先に中を見つけて、人を救い出そう。」
烈がふてくされたように、でもどこか楽しそうに頷く。
「色の保管庫って……お前、どんな発想で作ったんやろな、ブランク。」
湊がスッと眼鏡を押し上げる。
「効率的に奪った色を核に閉じ込めて、加工して再利用してるんだろう。…色で世界を白くするなんて皮肉なもんだ。」
烈がにやりと笑う。
「じゃあ俺らは遊園地の宝探しってわけか。お前ら、どっちが多く色奪還できるか勝負やな?」
「またお前は……」
湊がため息をつくが、その肩を彩葉がぽんぽんと叩く。
「二人とも。喧嘩したら――わかってるよね?」
にこにこ笑顔。
でも指の関節がパキッと鳴る。
「……はい……彩葉さん……。」
「了解や……姫様……。」
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廃墟の奥、白い霧の向こうに、光る監視ドローンの影がゆらめいた。
「……行こう。『無彩パーク』に色を取り戻す。」
彩葉は静かに筆を握った。
その足元を、小さな黒い影が塀の上を滑るように付いていく。
夜凪のフードの奥の目が、獲物を見つけた猫のように細められた。




