エピローグ 下
カフェの窓の外、街路樹の葉が揺れ、色とりどりの花が咲き誇っている。
あの無彩の塔が砕けてから、色の戻った人々の笑顔はどこか少し、前よりも強く優しくなった。
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「……で、これからどうすんの?」
烈が、カップのソーサーをくるくると回しながら言った。
隣で理斗が楽しげに頷く。
「色を取り戻す旅は終わった。
けど、俺はまだまだ彩葉の謎を解析したいしな。」
夜凪は窓際でスコーンをつまみながら、相変わらず目線だけはこちらを向いている。
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湊は、少しだけ顔を赤くしたまま、彩葉の隣でそっと息を吐いた。
「……俺は、決まってる。彩葉と一緒にいる。」
言いながらも恥ずかしそうに、彩葉から視線を逸らす湊を見て、烈がニヤニヤ笑った。
「せやな。俺もまだまだお前らには付き合ってもらわなあかんしな!」
理斗が頷く。
「ま、研究所を作ろうか?
ブランクの残骸を片付けながらさ。新しい色を守る拠点ってやつ。」
夜凪はスコーンをかじって言葉少なに付け加える。
「……まぁ、面白くなるなら付き合ってやる。」
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彩葉は、テーブルの上でそっと手を重ねた。
自分の指の上に、湊の手が重なる。
そして、烈も理斗も夜凪も、それぞれの手を重ねてきた。
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「色を奪われていた世界を、やっと取り戻したんだもん。」
彩葉がふわりと笑う。
「これからは、自分のために――一緒に、生きていこう。」
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窓の外で小鳥が鳴いた。
雲ひとつない青空。
街にあふれる人々の声。
子どもが笑い、花が咲く。
それはかつて奪われた、彩葉たちが命がけで取り戻した、何気ない色の日常。
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――パレットはもう、戦いだけの道具じゃない。
新しい色を描くために、自分のために――
仲間と共に。
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そして。
その中心にいる少女は、もうパステルの色を誇りとして抱きしめていた。




