還彩の塔 混色暴走の夜明け(2)
無彩の塔の最奥で、砕けた炉心の残骸が静かに光を失っていく。
金属がきしむ音と共に、塔全体がゆっくりと、しかし確実に崩れ始めた。
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烈が壁を叩くように拳を握る。
「くっそ……! ここ、もう持たへん!
彩葉! 湊! 出るぞ!」
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夜凪は傷ついた足を引きずりながら、彩葉の横にしゃがみ込む。
「……動けるか。」
彩葉は息を吐き、目を閉じたまま小さく首を振る。
全色を一度に引き出す《混色暴走》。
力の代償は重く、意識は途切れ途切れだった。
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理斗が背後でタブレットを叩きながら吐き捨てる。
「最短で脱出口、今開く!
……けど、時間がない。彩葉を抱えていけるか湊?」
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湊は黙って彩葉を抱き締め直した。
氷の蒼が薄く光り、彩葉の熱を少しでも冷ますように優しく包む。
「行ける。……俺が連れて帰る。」
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烈が湊の肩をポンと叩き、その横で夜凪が小さく息をつく。
「泣かせたら許さへんで?」
「……お前に言われたくない。」
湊が小さく笑い返した。
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塔の鉄骨が、轟音を立てて崩れ落ちる。
理斗が叫ぶ。
「時間切れだ! 全員走れッ!」
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――ギィィン――!
自動ドアのように裂けた非常口の先。
外気が冷たく吹き抜け、暗い塔の奥に、希望の青が滲む。
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「……っ、しっかりしろ彩葉!あと少しで外だ……!」
湊の声が震える。
彩葉の瞼が、かすかに揺れた。
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(……色が……還っていく……)
耳鳴りの向こうで、誰かの笑い声が聞こえた気がした。
あの日と同じ、誰かの手が、また自分を引いてくれる。
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(……湊……)
小さく、唇が動いた。
『……ありがとう……』
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「言葉は後でいい。寝るな!」
湊は彩葉の額にそっと額を当て、真っ直ぐに崩れた通路を駆け抜ける。
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烈が先行して瓦礫を薙ぎ払い、夜凪が後方を守り、理斗は最後に振り返りながら走った。
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「さぁ……! 外へ!
――お前の還した色を、今度はお前が取り戻せ!!」
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夜空が見えた。
四人と一人を包むように、白かった霧が静かに色を取り戻していく。
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奪われた色が、今度こそ、誰のものでもない色になって彼らの背を押した。




