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パレットブレンド  作者: あしゅ太郎


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29/33

還彩の塔 混色暴走の夜明け(1)

巨大な炉心室は、無彩の渦が塔全体を覆うように脈打っていた。


ブランクの幹部が、黒い外套をはためかせ、嘲るように笑う。


「ふふ……滑稽だな。

君たちがいくら足掻こうと、色はすべて“ひとつ”に統合される!」



---


幹部の背後の炉心から溢れた無彩が、怪物のように腕を形作り、湊たちを薙ぎ払おうと振り下ろし、烈たちに襲いかかろうとしていた。


---


「くっそが――! 邪魔やッ!!」


烈の拳が炎を纏い、真紅の火柱となって幹部の無彩の腕を焼く。


轟音と共に、黒い渦の一部が溶け落ちる。



---


「烈! 止めは俺だ――!」


湊が烈の肩を蹴って飛び出す。


外した眼鏡が腰に揺れ、氷の蒼が眩しく弾けた。



---


「――砕け散れ。」


湊の指先から伸びた氷の刃が、幹部の肩口を斬り裂く。


無彩の防壁が軋み、幹部の悲鳴が塔に反響する。



---


その隙に、夜凪が影を駆けた。


低く構えたナイフが、無彩の渦の根元を狙う。


「……眠っとけ。」


影の軌跡が黒を裂き、幹部の膝がわずかに崩れる。



---


すかさず、理斗がタブレットを閉じて腰のパレットを構えた。


黄の光が粒子のように滲み、夜凪の闇に混ざる。


「光と影の相殺――」


パァン――!


爆ぜた光弾が幹部の側頭をかすめ、黒い霧が一瞬だけ散った。



---


烈が息を切らして笑った。


「どうや湊! 削ったったで!」


湊も氷の剣を構え直し、短く応えた。


「ああ――ここからだ。」



---


黒い渦はまだ蠢く。

幹部が憎々しげに叫ぶ。


「小賢しいッ……無彩は無限だ……!」



---


烈の炎。

湊の氷。

夜凪の影と理斗の光。


みんなの色が、確かに幹部を追い詰めていく。



---


その背を――彩葉は見ていた。



(みんなが……繋いでくれた。)



炉心の前、白い光を纏ったパレットを握りしめて。



---


(私だけの……色……)


記憶が呼び覚まされる。


誰かに作られた試験体、淡い“半端な色”。


だけど――

みんなと混ぜたから、ここまで来られた。



---


(――行かなきゃ。)


彩葉の目がすっと閉じられた。


次の瞬間。


空気が震えた。



---


「――《混色暴走》――」


低く、かすれた声が炉心室に響いた。



---


パステルの光が、鮮やかな“純色”に戻っていく。


赤、青、緑、黄、黒――

五色が一気に彩葉の体を包み、滲んだ光が眩しく弾けた。



---


「彩葉ァァァ――!!」


烈の叫びが届く頃には、彩葉はひとりで前に立っていた。


幹部が声を荒げる。


「無駄だ! 色は――!」


言葉の途中で、五色の光が幹部を貫いた。


氷の槍、炎の刃、風の渦、雷の閃光、影の針。


全ての属性が重なり、幹部の無彩を切り裂く。



---


「――返して。」


彩葉の声が届く。


「みんなの色を……全部、返して……!!」



---


轟音が塔を揺らした。


幹部の悲鳴が無彩に呑まれ、炉心が砕け、黒い渦が白い光に飲み込まれていく。



---


烈と夜凪と理斗が、吹き飛ばされないように必死に壁に手をつく。


湊だけが彩葉に駆け寄った。



---


「彩葉ッ!!」



---


全てが静かになったとき、彩葉の膝が崩れた。



---


湊がその体を抱き止める。


彩葉の瞳は揺らぎ、色が混じったまま、焦点が合わない。


「……湊……」


小さく笑った。


「……色……戻せた……?」


湊は彩葉を抱きしめたまま、小さく何度も頷いた。


「戻った……だからもう、無理するな……」



---


烈が駆け寄り、夜凪が小さく目を伏せた。


理斗が駆け込んできて、データを必死に確認している。



---


彩葉のまつ毛が小さく震え、湊の肩に額を預けた。



---


「……湊……」


「……ああ。」


「……ありがと……」



---


湊の頬に、一滴だけ涙が落ちた。


奪われた色が、いま、全部戻った――

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