欠片が告げる真実(5)
古びたパレットの欠片に指が触れた瞬間、彩葉の視界に、微かに色の残った記憶が流れ込んできた。
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白く閉ざされた部屋。
無数のガラスのチューブ。
管に繋がれた幼い自分。
声がする。
『――まだ安定しない。配色を変えろ。』
『この子が“媒介”になれば……』
『色を混ぜる者。パステルの核。』
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彩葉の指先が小さく震えた。
背後で、烈が静かに近づく。
「……彩葉……?」
彩葉は小さく息を吸い、欠片から手を離した。
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「……私……多分……誰かが……誰かの都合で……」
言葉が詰まる。
でも、その肩を烈がそっと支えた。
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「ええんや。
そんなん、誰が何のために作ろうが……彩葉は、オレらの“彩葉”や。」
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湊も一歩前に出て、穏やかに言葉を繋いだ。
「お前を“特別”にしたのは、誰かの都合じゃない。
お前が、お前だからだ。」
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夜凪は背を壁に預け、いつもの無表情のまま、ほんの少しだけ目を細めた。
「……泣くな。泣くときは、全部終わってからにしろ。」
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理斗は少し距離を置いて、タブレットに残った解析結果を見つめていた。
「……彩葉。君は“作られた”のかもしれない。
でも……君が繋ぐ色は、誰にも再現できない。
これは、君にしかできない力だ。」
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彩葉は欠片をそっと胸に抱え、小さく笑った。
「……ありがとう。……みんながいるから……私は大丈夫。」
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無彩の塔の奥から、また重い歯車の音が響いた。
奥にまだ、何かがいる。
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烈が拳を鳴らす。
「さぁて……。お涙ちょうだいはここまでや。
泣かせたヤツに、お礼参りしに行こうや!」
湊がすっと筆を構える。
「……今度は、全部終わらせる。」
夜凪がナイフを指の上で転がし、小さく息を吐く。
「……派手にやるぞ。」
理斗が最後に欠片を回収し、彩葉の隣に立った。
「進もう。君の物語を、ここで止めさせるわけにはいかない。」
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彩葉は筆を握り直し、無彩の奥へ――
奪われた色を取り戻すために、仲間と共に、さらに深く足を踏み入れた。




