欠片が告げる真実(4)
歯車の唸りと共に、奥の床がゆっくりと沈み込み、ガラス筒の列の間から、黒く光る何かがせり上がってきた。
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湊が目を細め、背後の理斗に問いかける。
「理斗……解析できるか?」
理斗はタブレットを操作しながら、眉をひそめた。
「……これは……どうやら色を抜かれた“素体”だ。
パレットの失敗作を束ねて、無理やり動かしてる。」
烈が舌打ちして構える。
「失敗作を束ねて動かす……?気持ち悪いことしやがって……!」
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ガラス筒の中身――
人の形をしていたはずの何かが、黒い液体のように溶け、蠢く触手のように歯車の隙間から這い出してくる。
ひとつではない。
数体、十数体がぶつぶつと呻きながら形を成していった。
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夜凪が低く息を吐く。
「……彩葉、下がれ。こいつら、普通じゃない。」
彩葉は筆を握りしめ、首を横に振った。
「下がらない。私も戦う。」
烈がにっと笑い、火の色を指先に灯す。
「せや! 彩葉が下がるんなんか許さへん!
ここまで来たんやから、全部壊していこ!」
湊も青い筆を構え、烈に視線をやる。
「……連携を乱すな。分かったな。」
「言われんでも分かっとる!」
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素体の触手のような腕が、粘ついた音を立てて一斉に襲いかかってきた。
烈が真っ赤な火の刃を振り抜き、触手を灼き切る。
湊が青の奔流を纏わせ、烈の火で熱せられた残骸を一気に凍らせる。
夜凪は闇に溶けて素体の背後に回り込み、関節の隙間を鋭く切り裂いた。
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彩葉は後方で、パステルの色を滲ませる。
他の色を混ぜることで、湊と烈の攻撃を束ね、より鮮やかに増幅させていく。
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理斗が後ろで分析を続けながら、小さく笑った。
「やっぱり……君のパステルはただの弱色じゃない……
どこまでも色を“繋ぐ”……最高だよ、彩葉。」
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彩葉の筆先から、柔らかな光が舞う。
赤と青が混じり合い、夜凪の影をまとい、黒の残滓すら纏めて、無彩の素体を浄化するように染め上げた。
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「――今だ!」
湊が声をあげた。
烈が拳を突き出す。
夜凪が刃を叩き込む。
彩葉が最後に色を重ねた――。
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黒く蠢く素体は、眩い光に飲まれ、無数の色の欠片となって砕け散った。
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静寂が訪れる。
廃棄室の奥、床にぽつんと残った、古びたパレットの欠片が光を放っていた。
彩葉がゆっくりと歩み寄る。
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理斗が低く呟く。
「……これが、君の“始まり”の……」
彩葉は震える手で、欠片にそっと触れた。
その奥に、まだ語られていない真実が、確かに息づいていた――。




