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パレットブレンド  作者: あしゅ太郎


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23/33

欠片が告げる真実(1)

螺旋階段を進む一行の足音が、灰色の壁に小さく反響する。


無彩の塔の奥へ奥へ――

空気は冷たく、湿り気があり、階段の途中には時折、黒く焦げた痕が残っていた。



---


夜凪が先頭を行き、壁の継ぎ目を指でなぞりながら進む。


理斗がタブレットを覗き込んでつぶやいた。


「……この辺、妙にデータが途切れてるな……

何か仕掛けがあるかも――」



---


そのとき。


カチ――


夜凪の指先が、ほんのわずかな壁のくぼみに触れた。



---


「……!」


壁がわずかに沈む。


と、同時に。


足元の石板が沈み込み、天井と壁の隙間から、金属に編まれた細い縄がしゅるしゅると伸びてきた。



---


「……ッ!?」


夜凪の手首が、足首が、あっという間に絡め取られた。


「……ッ、クソ……!」


無彩兵の罠は容赦なく、夜凪の細い腰や太ももを締め上げる。


そして――


股間の辺りにまで縄がぐい、と食い込む。



---


「……っ……ッ、は……!」


夜凪の喉から思わず普段の低い声とは違う、か細い声が漏れた。


顔が赤く染まる。


烈が少し後ろで唖然と口を開けた。


「お、おい黒猫……何してんねん……」


湊も目をそらしつつ小声で咳払いする。


「……声……変じゃないか……」



---


夜凪は顔を真っ赤にして睨み返した。


「だ、黙れ……っ……!

いいから……早く、ほどけ……ッ!」


しゅるしゅると、縄はさらに締まっていく。


「……っ、あ、ぁ……ッ……!」


夜凪の目尻にうっすら涙が滲んだ。



---


その瞬間――


ドンッ!!


轟音とともに、階段の壁が大きく抉れて吹き飛んだ。


舞い散る破片と煙の奥から、彩葉が片手に巨大な筆を構えたまま現れる。



---


「――夜凪!」


夜凪の目の前に現れた彩葉の姿に、烈と湊が同時に「おぉ……」と息を呑む。



---


彩葉は何も言わず、壁に絡まった罠の仕掛けを見定めると、巨大な筆で渾身の一撃を叩き込む。


バキィン――!!


壁ごと罠が砕け、縄は天井の装置ごと吹き飛んだ。



---


夜凪の身体を拘束していた縄が力なく崩れ落ちる。


彩葉が片腕で夜凪を引き寄せ、倒れそうな体を軽々と抱き止めた。



---


「大丈夫? 無事?」


夜凪は目を伏せたまま、真っ赤な顔で小さく吐息を漏らす。


「……見たか……? こんな……情けない……」


彩葉は夜凪の頭をぽんと叩き、男前な声で笑った。


「何言ってるの。助けるのは当たり前でしょ。」



---


烈と湊が後ろでそっと目をそらした。


烈「……さすが彩葉や……」


湊「……あの黒猫が、ちょっと可愛く見えた……」


理斗だけが面白そうにタブレットを叩きながら、


「いやー記録残しときたかったな、これ。」


とぼそりと呟き、烈に肘でどつかれていた。



---


螺旋階段の先――

砕けた壁の向こうに、まだ色を奪う塔の奥が、闇の中に待っている。

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