灰色の塔、灯る赤(5)
門番を倒した一行は、赤い光が完全に消えた門の残骸を跨いで、無彩の塔の内部へ足を踏み入れた。
---
塔の中はまるで色彩を飲み込むような灰色の壁が延々と続いている。
床にはところどころ、色を奪われたかのように白い人型の痕跡が残っていた。
---
烈が足元を見て、小さくつぶやく。
「……ほんま、気持ち悪い場所やな……。」
湊が青い筆を構えたまま、周囲を警戒する。
「慎重に進め。敵はまだ奥に潜んでる。」
---
理斗は一番後ろでタブレットを睨みながら、口元でぶつぶつ言っている。
「……ここの電磁壁、予想より古いな……
こりゃ、ちょっと抜くのに時間がかかる……。」
夜凪は誰よりも静かに前を進み、突然立ち止まった。
「……動くぞ。」
---
奥の暗がりから、何かがズルリと這い出してきた。
巨大な触手のように床と壁を這い回り、赤と黒の光を纏った小型の無彩兵を何体も従えている。
---
彩葉が息を呑む。
「……これが、塔の自衛システム……。」
湊は青の筆を構え直す。
「数は多いが、赤主体だな。俺がやる。」
烈が不満そうに鼻を鳴らす。
「湊ばっかり活躍させへんで?オレも混ざるわ。」
---
夜凪がナイフをくるりと指先で回した。
「……邪魔だけはするな、犬。」
「お前もな、黒猫ォ!」
---
触手が一斉に襲いかかる。
湊が青の閃光を放ち、烈の赤が横から火の壁を作る。
彩葉は後ろで敵の核を見極めると、すかさず湊に声を飛ばす。
「湊、右の個体の核は剥き出し! 青で一気に!」
「了解!」
湊の筆が青の波を生み、触手を巻き込んで核を凍り付かせる。
烈が火力で止めを刺し、夜凪は残った個体を音もなく屠っていく。
---
理斗は壁に背を預け、タブレットを睨んだまま小さく笑った。
「……この連携、面白いな……
君たちは……やっぱり特別だよ、彩葉。」
---
彩葉は振り返りもせず、核をひとつひとつパレットに還しながら、淡々と答えた。
「理斗、解析はどう? 奥にまだ何かあるの?」
「――あるよ。
ブランクの中枢に繋がる動力炉がこの下の階層にあるみたいだ。」
湊が触手を青で凍らせながら低く言う。
「動力炉ごと止めれば、ここは色を奪えなくなる。」
烈が火柱を叩きつけ、残骸を焼き払った。
「……オレらで終わらせたる。」
---
彩葉はパレットを握りしめ、核を胸に抱えた。
「……行こう。ここで終わらせる。
この色を、取り戻すために。」
---
湊が静かに言った。
「……先に行け。俺が背後を抑える。」
夜凪が小さく頷く。
「頼む。」
塔の奥へ、闇の奥へ――
彼らの影は、灰色の階段に溶けていった。




