灰色の塔、灯る赤(3)
――無彩の塔へ向かう街道。
乾いた風が吹く一本道を、彩葉たちは荷物を抱えて歩いていた。
相変わらず烈と湊は――
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「お前! 足元に石置いたやろ!!」
「置いてない! お前が勝手に蹴ったんだろうが!」
「嘘つけコラァ! この陰険メガネが!!」
「は!? 誰が陰険だ誰が!!」
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彩葉は呆れ顔で、理斗の隣で水を飲む。
「……ほんと、よく飽きないよね、あの二人……。」
理斗はフフッと笑って、ポケットから怪しげな試験管を取り出した。
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「元気なのはいいけどさ。
たまには静かに歩きたいんだよ、僕は。」
彩葉は一気に顔色を変える。
「……ちょっと理斗、それ何?」
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理斗はにやっと笑った。
「新開発の“惚れ薬”。
ほら、パレットの色素を逆流させて、
相性が一番良い相手に親近感が湧くんだ。」
彩葉は盛大に水を吹き出した。
「ちょっと待って!? 何する気なの!?」
「ちょうどいいでしょ。烈と湊、ずっと喧嘩してるし。」
理斗はスッと近づき――
烈の飲みかけの缶コーヒーと湊のペットボトルにポタッと数滴。
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彩葉が止める暇もなかった。
「ダメだって! 絶対後悔するから!!」
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しばらくすると――
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「なぁ湊……お前のメガネ、
近くで見ると……めっちゃ似合っとるやん……。」
「烈……お前こそ……その髪……触っていいか……?」
「ええで……湊……。」
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ギュッ。
いつの間にか肩を組み、烈の頬に湊の手が伸び――
「ちょ、ちょっと!? 何してんの!? どうしたの!?」
彩葉が駆け寄るより早く、湊の指が烈の頬を撫で、烈が蕩けた顔で湊に寄りかかる。
「おい……湊……好きやわ……。」
「……俺も……烈……好きだ……。」
ちゅっ。
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彩葉の悲鳴が響く。
「やめてーーー!! ちょっと! 何してんのほんとに!!」
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彩葉はくるっと理斗を振り返る。
「理斗! あんたでしょ絶対!!」
理斗は無表情で肩をすくめる。
「えー? いいじゃん、平和だし。静かでしょ?」
「静かどころか声が濃厚すぎるの!
早く元に戻して!! 今すぐ!!」
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烈と湊はお互いの顔を両手で包んでじっと見つめ合っている。
「烈……」
「湊……」
「やめろーーー!!」
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理斗は仕方なくポケットから青い瓶を取り出す。
「はいはい、これで解除っと……烈、湊、飲んで。」
烈と湊はうっとり顔のまま仲良く瓶を受け取り、ゴクリ。
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数秒後――
「お前、何してんじゃコラ湊!!」
「は!? なんで俺の手お前の頬にあんだ!!」
「どけ!! 近すぎんねん!!」
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二人は真っ赤になって飛び退き、即座にいつもの殴り合いが始まった。
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彩葉は地面にしゃがみ込んで、泣き笑いで理斗を睨む。
「……まだ、こっちの方がマシでしょ…。」
理斗は軽く笑って肩をすくめた。
「でも面白かっただろ?
平和な時間……ほんの一瞬だけ。」
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彩葉は大きくため息をついて、殴り合う二人を遠目に見ながらぼそっとつぶやいた。
「……無彩の塔より理斗の方が怖いって……。」




