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パレットブレンド  作者: あしゅ太郎


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18/33

灰色の塔、灯る赤(1)

――施設の瓦礫の片隅、夜の冷たい風が吹き抜けていく。


彩葉はぼんやりと、まだ熱を帯びた瓦礫の上に腰かけ、指先で小さなパステルの光を弄んでいた。



---


「……作られた試験体、か。」


声に出してみても、風があっさりと持っていってしまう。


自分の核に触れたはずなのに、どこか心に穴が空いたように感じる。



---


そのとき。


「おーい。」


無遠慮で間の抜けた声が、唐突に彩葉の肩に落ちた。


振り向くと、烈がどこからか缶ジュースを二つ持ってひょいっと隣に腰を下ろしていた。



---


「……烈?」


「夜風に当たんのもええけど、冷えるぞ。」


烈は自分の分の缶をプシュッと開けて、彩葉の前にもう一本を差し出す。


「ほれ。」



---


彩葉は受け取ったまま、プルタブを引かずにじっと見ていた。


烈は炭酸を一口飲んでから、ぽつりと夜空を見上げた。



---


「……昔な。俺、幼い頃に、火事起こしたんや。」



---


彩葉の指がぴくりと動く。


烈の目は夜空の一点を見つめていた。



---


「赤の家系でな……火を操る適性は家の誇りやった。

でも本当は、その火を抑える術を学んで、

家を守る役目を継ぐはずやった。」


烈の声が、普段の豪快さとは違って静かだった。



---


「でも俺にはそれができへんかった。

火を止められんで……大事な人を焼いてしもうた。」


缶の縁を指でコツコツ叩きながら、烈は少しだけ口元を歪めた。



---


「それからずっと、俺は火に振り回されて、

力でねじ伏せることしかできんままやった。」


彩葉は静かに缶を両手で包み込む。


烈の声がほんの少しだけ柔らかくなる。



---


「でもな、あん時お前が、

“私が隣にいるから大丈夫だよ”って言うたやろ。」


彩葉がはっと顔を上げる。


烈はいつもの豪快な笑みじゃなくて、どこか子供みたいに照れくさそうに笑った。



---


「俺はあれで救われたんやで。

俺の火を、抑えられんでもええって思えた。」


烈は炭酸をぐいっと飲み干して、彩葉の方を真っ直ぐ見る。



---


「お前は誰かのために作られたかもしれへん。

せやけど今は俺の、大事な仲間や。」


彩葉の肩に、大きな手がぽん、と置かれた。



---


「今度は俺を頼れ。火のことなら俺が何とかしたる。」



---


堪えきれなくなったように、彩葉は小さく頭を下げて、烈の胸元に額をそっと埋めた。


烈は慌てたように笑って、けれど優しく彩葉の背中をぽんぽんと叩いた。



---


少し離れた瓦礫の影で、湊がそれを見ていた。


缶コーヒーを持つ手が、わずかに力を込めて震える。



---


「……烈のやつ……。」


言葉を切りながらも、湊は彩葉が小さく笑ったのを見て、どこか複雑に目を細めた。


夜風がまた、彩葉の頬を撫でて過ぎていった――。

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