色還しのパステルコア(5)
――ドームの天井から、無数の白い装甲兵が降下してくる。
背中のタンクから伸びた管が、床のパイプと接続され、色核からエネルギーを供給されている。
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湊がすぐに前に出て、烈に声を飛ばす。
「烈、真正面は任せた!俺は側面から支援する!」
烈はニヤリと笑った。
「言われんでも! 全部燃やしたるわ!!」
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轟ッ!!
烈の赤い炎が装甲兵の正面を薙ぎ払い、焼け落ちた白い残骸が床に崩れた。
湊は青の軌跡を放ち、烈の後方を狙う敵の脚を正確に断つ。
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「夜凪、左から来る!」
湊の指示に、夜凪は影のように姿を消したかと思うと、次の瞬間、装甲兵の首筋にナイフを突き立てていた。
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理斗は背後で携帯型の端末を操作しながら、黄属性の光弾を放つ。
「こっちは抑える!彩葉! 中央を頼む!!」
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彩葉は水槽の核の前に立つと、筆を大きく掲げた。
青、赤、青、黄、黒――
仲間の属性がパステルに吸い寄せられ、ふわりと光の花が咲いたように拡がっていく。
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「……みんなの色を、私が――!」
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筆先が水槽の表面をすっとなぞる。
すると、水槽の中の光の粒が一気に暴れ、まるで声のように壁を震わせた。
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――『帰りたい……帰りたい……』
――『あの色に……あの場所に……』
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彩葉は静かに目を閉じ、筆を光の中心に突き出した。
「還ろう。」
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パステルの光が核を貫き、押し込められていた色が大気に溶けるように解き放たれていく。
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烈と湊の攻撃で倒れた装甲兵の背から、奪われていた色が小さな光の蝶になって舞い上がった。
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夜凪が、崩れ落ちる残党を背後から見届ける。
「……全部、お前が……。」
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理斗が解析画面を睨みつつ、息を呑む。
「これが……彩葉のパステルの真価……!
単なる“色”じゃない……
“心”を初期化して、本来の居場所に還す……!」
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彩葉の足元で、光の蝶がくるりと回り、やがて壁の通気口へ、外の空へと飛び立っていった。
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烈が大声をあげる。
「よっしゃああ!これでコイツらの施設も終わりや!!」
湊は息を整えながら、彩葉に近づく。
「……大丈夫か?」
彩葉は汗をぬぐい、小さく笑った。
「……うん。でも……私、まだ全部は分からない……。」
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夜凪が崩れた壁に寄りかかり、低く呟いた。
「ブランクの本拠は、まだ先だ。
全部還すには、ここだけじゃ足りない。」
理斗がにやりと笑う。
「なら、次の解析拠点は決まりだな。
もう少し、君の謎を暴かせてもらうよ、彩葉。」
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烈が大げさに肩を組んで笑った。
「その前に!
肉食うぞ肉!! 彩葉は肉で栄養つけろ!!」
湊が額を押さえながらため息をつく。
「……お前はそればっかりだな……。」
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水槽の光がすべて解放され、色の核は静かに光を失った。
通気口の向こう、わずかに漏れた光が、次の行く先を照らしていた――。




