色還しのパステルコア(3)
――隔壁が開くと同時に、白い防護服の兵士たちの奥で、異形の影がぬるりと立ち上がった。
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「……あれが、ここの番犬か……。」
湊が額に汗をにじませる。
巨大な人型の“色核の番人”。
全身は無彩の灰色だが、体内のどこかで、
赤と青、緑と黄――複数の色が脈動している。
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「色を……吸ってる……?」
烈が低く唸る。
理斗は小型スキャナーを手に睨んだ。
「こいつ……周囲の色素と記憶を自動で取り込んで
自分の装甲を再生してる!
適当に殴っても埒があかん……!」
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番人の片腕が粘土のように伸び、烈の足元を叩き潰す。
「おっと……!」
烈が飛び退く。
「弱点を突くしかない!」
湊が叫ぶ。
「内部に色が混ざってる!
どの色がどこにあるか……理斗ッ!」
理斗はすかさず分析結果を叫んだ。
「頭部に青、胸に赤、左腕に緑……
要するに、部位ごとに弱点を突ける!」
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彩葉が筆を構えた。
「……行こう。」
烈が大きく筆を振り、赤い炎の軌跡を作る。
「まずは胸やな!」
湊が烈の横で筆を振り抜き、緑の刃が赤の核をめがけて飛ぶ。
「烈! 君の赤を抑える!」
夜凪が背後から番人の足元に影を落とし、素早くナイフを投げつけて足を封じた。
「今だ。」
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ドゴォ――ン!!
烈の赤が焼き、湊の緑が穿つ。
胸の装甲が爆ぜ、番人が苦悶のような声を上げた。
だが――
再び、全身が灰色の膜に覆われて、色が装甲を補填しようと渦を巻き始める。
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理斗が前に出る。
「彩葉!! お前のパステルで――“還せ”!!」
彩葉は頷き、空中でパレットを開く。
滲むパステルカラーが、赤にも青にも緑にも、柔らかく溶けていく。
筆先が、光の筋を描いて番人に突き刺さる。
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――バシュッ。
まるで霧が晴れるように、番人の体内の色が、空中に解き放たれた。
赤い光が、青い光が、緑の光が、灰色の装甲を置き去りにして、空に還っていく。
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烈と湊と夜凪が息を飲んだ。
彩葉のパステルが、混ざった色を“元の形”に戻している――。
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番人の体が、ガラガラと砕けて崩れる。
理斗が目を見張りながら、小声でつぶやいた。
「……やっぱり……彩葉……君は――
“初期化の核”なんだな……。」
湊が振り返る。
「……何だって?」
理斗は言葉を飲み込み、笑ってごまかす。
「いや……後でちゃんと説明する……。
今はとにかく、残りの核を……」
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彩葉は筆を握りしめたまま、崩れた番人の残骸を見下ろす。
「……私が、何を“初期化”してるの……?」
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夜凪がひとり、番人の残骸に残ったデータチップを拾い上げた。
「……ブランクは全部知ってる。……お前が“何者か”も。」
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施設の最奥、再び隔壁がゆっくりと開いていく。
色の核の光が、一行を次の真実へと招いていた――。




