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パレットブレンド  作者: あしゅ太郎


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13/33

色還しのパステルコア(1)

薄曇りの旅先の宿。

彩葉たちは、次の行き先に備えて温泉宿の一室に泊まっていた。



---


「……ふぅ……生き返る……」


浴場から上がった彩葉は、いつもの無造作なお団子ヘアを下ろし、まだ湯気の残る頬を赤くして部屋に戻ってくる。


「みんな、外の自販機で何か飲み物買ってくるね。」


そう言って、のほほんと浴衣姿で出ていく彩葉。



---


残されたのは――

部屋の奥でノートPCを開いて座り込む、白衣の金城 理斗。


烈は布団を叩きながら寝床を作り、湊は湯上がりの髪をタオルで拭いている。


理斗はふと手を止めて、独りごとのように呟いた。



---


「……きっと、この“パステル”の秘密は……

本人が寝てる時の体温とか、汗とか……

あるいは湯気の成分とか……!」


烈が怪訝そうに眉をひそめる。


「……おい、金城。何ブツブツ言うてんねん。」


理斗は白衣のポケットから小型のスキャナーを取り出し、にやりと笑った。


「いやー? ちょっと観察っていうか、

お風呂上がりとか、寝てる時とか――

一番“素の状態”を確認しといた方が解析進むでしょ?」



---


烈と湊の背筋に電流が走った。


「……え?」


理斗は当たり前の顔で立ち上がる。


「だからちょっと、風呂上がりの残り湯とか、

布団に入って寝息とか、採取して――」


湊が盛大にタオルを床に落とした。


「は――――――!? お前何言って……っ!」


烈が布団叩きを握りしめる。


「おいオタク!!お前、何考えとんねん!!」


理斗は無防備に首をかしげる。


「え? 他意はないって。

ただの科学的好奇心だし。彩葉本人に直接害はないし。」



---


湊が顔を真っ赤にして、理斗の胸ぐらを掴んだ。


「……それでもやっていいことと悪いことがあるだろうッ……!」


理斗は引きつった笑いを浮かべて手を上げる。


「いやいや、ほんとに他意はないから!

むしろ俺は彩葉の能力が特別だって証明したいだけで――」


「他意がなくても変態だろうがァァァ!!」


烈が布団叩きで理斗の頭をぺしんと叩く。



---


湊の顔は真っ赤のまま、息も荒い。


「……彩葉さんが何も知らずに寝てる横で、

何を採取する気なんだお前は……っ!!」


烈も烈で頷く。


「彩葉に何かしたら、赤と青でボコボコやぞコラァ!!」



---


バタバタと廊下の方で戸が開く音。


「ただいまー。あれ? 何してるの?」


湯上がりの彩葉が、冷たいラムネを手に戻ってきた。


烈と湊は慌てて理斗を羽交い締めにして隠しながら、何事もなかったように笑った。



---


「な、何でもない! なあ湊!」


「う、うん! 何でもない……!」


彩葉は首をかしげたまま、ラムネをぐいっと飲んだ。


「……?」


理斗だけが小声でぼやいた。


「……何で、純粋な科学が怒られんだろ……」



---


こうして、彩葉のパステルの謎を巡る“非合法観察計画”は、仲間内の全力阻止によって儚く潰されたのだった――。

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