表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パレットブレンド  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/33

彩を還す者たちと黄の来訪者(5)

色を取り戻した人々が、ゆっくりと立ち上がり、まだ頼りなげに彩葉たちへ感謝の視線を向けていた。


烈がドヤ顔で胸を張る。


「へっへっへ、まあな! お礼は肉でええで!」


湊が呆れたように烈の後頭部を叩く。


「今は静かにしろ。まだ残党がいるかもしれない。」



---


ふと気配を感じて、彩葉が後ろを振り返る。


梁の影――

さっきまでいなかったはずの夜凪が、いつの間にかコンベアの上に座っていた。



---


烈が二度見して叫ぶ。


「お前いつからおったんや黒猫ォ!!」


湊が額を押さえる。


「……やっぱり途中で消えたと思ったら……」


彩葉は筆を肩に乗せて苦笑した。


「夜凪くん……ずっといたの?」


夜凪は面倒くさそうに片目だけ開ける。


「……さっきの“色還し”……

本当に人を戻せるんだな。」


烈が怒鳴りそうになるが、夜凪はひらりと飛び降りると、霧の奥にすっと影を溶かしてしまった。


「……次も来るからな。」


湊が小さく吐き捨てる。


「……もう好きにしてろ。」



---


ぽつんと残された彩葉たち。


理斗がポケットから小型のスキャナーを取り出し、さっそく彩葉の筆先に向けてカチカチとデータを読み取っている。



---


「……夜凪ってやつ、面白いな。ストーカー気質あるんじゃないの?」


湊がむすっとして睨む。


「どの口が言うんだ、お前に言われたくない。」


烈が彩葉を指差して笑う。


「お前の取り巻き、増えすぎやろ!?」


彩葉はパステルのインクを手の平に受けながら、理斗を横目で見た。


「……何してるの?」


理斗は目元だけ笑って、データを指先で弾いた。


「君のパステル、ちょっと成分調べてんの。

単色じゃないのに、干渉しないで混ざってる……

普通じゃ考えられない。」



---


湊が理斗の後ろから覗き込む。


「……パレットは“単色”が原則だ。

混ぜようとすれば、性質が打ち消し合って不安定になる。」


理斗が目だけ動かし、彩葉をじっと見つめた。


「でも君のパステルは“弱い”けど……

逆にそれが色素を滑らかに繋いでる。

多重属性のハーモニクス。

これ、理論上は無理なはずなんだよなぁ……。」


烈がぽりぽり頭を掻く。


「要するにどういうこっちゃ?」


理斗はスキャナーをポケットにしまい、顔を近付けて彩葉を覗き込む。


「――君自身が、何か“通常のパレットアーティストじゃない”ってことさ。」


彩葉は息を止めた。



---


理斗はふっと笑い、白衣の袖を翻して工場の奥を指差す。


「この先にブランクの研究室があれば……

何かわかるかもしれない。

君の“パステル”と、ブランクが色を奪う方法の共通点。」


湊が目を細めた。


「お前……ただの色素オタクじゃないな。何が目的だ。」


理斗は肩をすくめた。


「単純さ。

俺は“全色を制御する理論”を作りたいだけさ。

――俺のパレットは、その途中経過。」


烈がにやりと笑った。


「ええやんけ! チート大歓迎や!

お前のオタク知識で片っ端から色戻したろやないか!」



---


彩葉は自分の手のひらのパステルを見つめた。


淡い、弱い。

だけど確かに誰かを還せる色。


――私の色は、なんなんだろう。


筆先に光がまた、微かに揺れた。



---


「……行こう。

全部わかったら、もっと色を取り戻せる。」


理斗が口元だけ笑う。


「その好奇心、嫌いじゃない。」


廃工場の奥。

ブランクの秘密に近付く足音が、金属の床を静かに震わせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ