彩を還す者たちと黄の来訪者(4)
梁の上から、無彩の傀儡が何体も跳躍する。
鉄の床に着地すると、目から放たれた光が一斉に彩葉たちを狙った。
烈が真っ先に飛び出す。
「おおおおっしゃァ!! 肉の力、見せたるわァ!!」
鋭い赤の筆が烈の手元で燃えるように光を帯び、傀儡の腹を一撃で抉る。
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湊は背後に滑り込み、青のパレットを開放する。
「烈、赤だけじゃ押し切れん! 後ろ任せろ!」
青の刃が氷のように鋭く煌めき、烈の攻撃を受けた傀儡の動きを封じる。
烈が即座に反転し、氷を砕くように追撃を叩き込んだ。
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梁の影に潜んでいた夜凪は、湊の氷が残した隙間を抜け、黒の刃で傀儡のコアを正確に断つ。
「……動きが鈍い。」
夜凪は低く呟き、血のような黒い煙がナイフからかすかに揺らめく。
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その横で、理斗が笑みを浮かべる。
「……なるほど、青と赤と黒か。
いい連携じゃん。」
理斗はパレットに差したカートリッジを回すと、黄色と青を同時に放つ。
掌から弾けた光線が、傀儡の群れを薙ぐ。
帯電した青が、床を走り抜ける。
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彩葉はその放電の間隙を縫って前に出た。
筆の先に、淡いパステルの光が瞬く。
「……湊、烈、夜凪、理斗!」
声に応じて、湊と烈が即座に彼女の後ろに立つ。
烈が赤を、湊が青を。
夜凪が黒を。
理斗が黄色を。
彩葉は深く息を吸い込んだ。
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「ブレンド――“ハーモニック・ストライク!”」
筆先が空気を切ると、赤・青・黒・黄の色がパステルの光に溶け、一本の閃光となって傀儡の群れを貫く。
金属の軋む音が止み、床に倒れた傀儡から、小さな色素の光が舞い上がった。
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彩葉はゆっくりと筆を降ろす。
「……戻って。」
漂う色素が、傀儡の胸の奥へと吸い込まれた瞬間、無彩の仮面がひとつ、またひとつと剥がれ落ち、人の瞳が戻っていく。
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短い静寂の後、理斗が口笛を吹いた。
「やるね、パステルの少女さん。
――こりゃ、ただの半人前じゃないな。」
烈が振り返り、汗を拭って笑う。
「お前の黄色も悪くなかったわ! 使えるやんけ!」
湊が無言で理斗を睨む。
「……調子に乗るな。まだ信用したわけじゃない。」
理斗は肩をすくめ、彩葉に視線を向けた。
「君の“ブレンド”、もっと詳しく知りたいな。
どうしてそんなに柔らかく混ざるんだ?」
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彩葉は少しだけ目を伏せ、パステルの光を見つめた。
「……私にも、まだ全部はわからないの。
でも……色は還せる。それだけは、信じてるから。」
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足元で目を覚ました人々が、ぼんやりと色を取り戻した瞳で空を仰いでいる。
夜凪がその様子を一瞥し、影の中にナイフを収めた。
「……終わったら次だ。
こいつらの次の運び先――まだある。」
湊が頷き、地図を広げる。
「……情報じゃ、この工場からさらに北東。
ブランクの“主倉庫”が存在するらしい。」
烈がガツンと拳を打ち合わせて笑った。
「行ったるわ! 根こそぎ潰して、全部還したる!」
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彩葉は小さく笑った。
「……行こう。今度は、もっと大きな色を還す。」
隣で理斗が、面白そうに口元を歪める。
「じゃあ俺も付き合おうかな。
君のパステル、もっと見たくなった。」
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こうして、新たな仲間を得た彩葉たちは――
奪われた色を追って、次の戦場へ向かう。




