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君に紡ぐ言葉  作者:
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DRAGON 4

「本当にそうか?6人って、どの6人だ?」

丈瑠が身を乗り出して、籘と純一郎の顔を順番に見ると、二人は丈瑠の表情の中に真剣なものを感じて姿勢を正した。

「チームの6人・・」

「純一郎、籘、よく聞けよ。お前達dragonは俺が指導して来た中でも最高のチームだ。でもな、今のお前達は中学も違う、チームメイトも違う、もうdragonじゃねぇんだぜ?」

二人は黙って丈瑠の言葉を聞いた。

「バレーってのは、どんなに上手い奴が一人居ても、それだけじゃ勝てないんだ。コートにいる6人が協力して、初めて成り立つスポーツなんだよ。ずっとdragonでプレーして来たお前達が、初めてdragon以外の子ともプレーすんだ、不満も出るだろうし、苛立ったりする事もあると思う。でもな、中学生活の3年間、ずっと3人ずつでプレーするつもりか?」

丈瑠の言葉は、的を得ていて、二人の顔を赤くさせる。

「自分達の力に傲ってる内は、どんなプレーを見せても俺は褒めてやんねぇぞ。お前ら、それぞれのチームをちゃんと作れ。出来ない奴が一緒なら、教えてやるのも大事な事だ」

二人が頷くと、丈瑠も優しく微笑んで二人の頭を撫でた。

丈瑠はリビングから出て、秋の部屋へ行くと布団で丸まっている秋の髪を優しく撫でる。

「子供達と何話してたの?」

秋が布団から顔を出すと、丈瑠は二人にした話を秋に聞かせた。

「私・・全然気付かなかった・・アナリスト失格だわ」

本気でしょぼくれ出した秋に、丈瑠はクスリと笑う。

「仕方ねぇんじゃねぇの?自分の子供なんだからさ」

秋が丈瑠を見ると、丈瑠はベットに腰掛けていた体を布団の中へ滑らせて横になった。

「でも、これからが一番大事な時だからさ、秋もあいつらがコートに入ったら、一人のアスリートとして見てやってくれな。なまじか実力がある分、天狗になると手に負えなくなるぞ」

丈瑠の言葉に、秋は頷くと丈瑠をマジマジと見詰めた。

「やっぱり丈瑠さんって凄いね」

「だろ?」

自信たっぷりの丈瑠の言葉にも、今日ばかりは秋も素直に頷いた。

「こうなるのは分かってたからな。奏多にその辺も注意して見て来てくれる様に頼んだんだ。ま、明日は俺も見に行くし、今日の話をあいつらがどう受け止めたか分かんだろ」

丈瑠が欠伸をしながら話すのを聞きながら、秋は微笑んで頷いた。目を閉じている丈瑠に、秋がベットのランプを消すと、丈瑠の腕が優しく秋を包む。秋も丈瑠の胸に顔を埋めたまま目を閉じた。



大会二日目、秋と共に姿を見せた丈瑠に、ママさんズも嬉しそうに笑った。6人で話しに花を咲かせていると、周囲の視線が自分達に注がれているのを感じて、ママさんズは声を潜めながら顔を近づける。

「目立ってるよね?」

「月島がね」

「昨日は王様、今日はヤクザ。そりゃ、どんな集団だと思うわよね」

ママさんズの会話に、丈瑠が口を挟む。

「奏多が王様で、何で俺がヤクザなんだよ!」

皆で笑っていると、そんな秋達の元へ春日と横田が姿を見せた。

「おはようございます。今日も応援宜しくお願いします」

丁寧に頭を下げる二人に、秋達も頭を下げる。春日と横田は揃って、初めて会う丈瑠に視線を移すとにこやかに笑った。

「昨日、子供達に何か話しましたか?」

春日がゆっくりした口調で話し、

「はい。新しいチームについて、少しだけ」

丈瑠がそう答えると、春日は横田と顔を合わせて微笑んだ。

「今日はね、朝からdragonが揃わないんですよ。それぞれのチームで、自分の役割を話し合っていました。初心者の子も交えてね。この大会が終わったら、叱り飛ばしてやろうと思ってた矢先に出鼻をくじかれた気分です」

二人がハハっと笑うのを、丈瑠も一緒になって笑う。

「これからはdragonじゃなく、青中と柳中の1年生です。調子に乗ったらすぐに鼻っ柱へし折ってやって下さい」

丈瑠が改めて二人に向かって頭を下げると、二人も真顔で頷いた。春日と横田が離れて行くと、ママさんズが丈瑠に詰め寄る。

「何、どういう事?」

丈瑠が昨日の話を聞かせると、ママさんズが納得した様に頷く。

「もう中学に上がって、それぞれのチームでやるしかないのに、いつまでもdragonの気持ちのままでいたら、あいつらのバレーも、チームも駄目になるだろ?この先、選抜だってユースだって、全く知らない奴らとプレーすんのに、少年バレー時代が足かせになんのは嫌だからな」

丈瑠が言った言葉に、ママさんズが丈瑠を見詰める。

「私、初めて丈瑠さんを尊敬したかも・・」

「うん。やっぱり腐っても元全日本ねぇ」

「お前らなぁ!全然褒めてねぇんだよ!」

丈瑠がそっぽを向くと、ママさんズは爆笑したが、秋は丈瑠が選抜・ユースを見据えているのだと思って、自身の気持ちを引き締めた。

試合は両チーム共、昨日の様な一方的なものにはならず、初心者の子供達のカバーや指導をしているdragonの姿があった。それでも両チームが決勝戦まで駒を進めると、今度はお互いにライバル心をむき出しにした春日と横田の指示に、ママさんズは大いに笑った。軍配はやはり絶対的エースを抱えた籘達、柳中に上がり、春日が横田を挑発しながら子供の様にはしゃいでいる姿に、皆はまた爆笑した。


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