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永遠と思えし刻
春の陽は柔らかく村を包み、そよ風は草と花の香りを運んでいた。
丘の向こうに広がる麦畑は黄金にきらめき、子供たちは裸足で駆け、笑い声を青空に散らしていた。母たちは洗濯物を干し、老人は縁側で煙管をくゆらせ、穏やかな昼下がりを見守る。
広場には竪琴の調べが流れ、吟遊詩人が古き英雄の物語を紡ぐ。
人々は野菜やパンを分け合い、「おかえり」と「いただきます」が自然に交わされる。
そこには争いも恐れもなく、ただ生きる喜びが満ちていた。
レインズはその輪の中で目を閉じ、音色に耳を澄ました。
「こんな日々が、いつまでも続けばいい」
ティクが呟き、ドレクは子供を肩に担ぎながら大声で笑う。英雄も村人も関係なく、皆がひとつの温もりに包まれていた。
誰もが信じていた。
陽の匂い、土の温もり、人の声――この幸福は永遠に続くのだと。
だが歴史の頁は、静寂を慈しむ間にも音を立ててめくられていた。
その先に影が潜んでいることを、まだ誰も知らなかった。