第五話 蚕の家づくり!農具小屋改造計画スタート
「じゃーん!」
次の日、私は胸を張って家族の前に立った。
「蚕を飼う小屋を作ります!」
父さんが眉をひそめ、タク兄は苦笑。
ミナ姉ちゃんは相変わらず顔をしかめた。
「リィナ。昨日、山で見つけた蚕はたったの六匹だぞ?」
タク兄が両手を広げる。
「なのに小屋って……規模が大きすぎないか?」
「これから増やすんだよ!」
(とはいえ、まだ野生の蚕だし、増やせるかは未知数なんだけど)
「おはよう」
グレン兄ちゃんが、昨日の棚板の材料を抱えて現れた。
「グレン兄ちゃん、昨日はありがとう。今日もごめんね。」
「気にすんな。さ、棚、取り付けるぞ」
「その棚、蚕用の棚に使っていい?」
私が勢い込んで聞くと、グレンは少しだけ目を丸くした。
「……昨日の話、本気だったんだな」
「もちろん!」
(前世ではもっと大きな養蚕場を作ったんだから、これくらい余裕!)
「作業台も欲しい! それと蚕用の通風の良い箱!」
「通風?」
グレン兄ちゃんが首を傾げる。
「湿気がこもると蚕が病気になっちゃうの。風通しが命!」
タク兄が苦笑した。
「その情報どこで仕入れたんだよ。3歳児の口から出る言葉じゃねえな……」
(あわわ……ヤバイヤバイ。3歳児らしく、3歳児らしく……って?
ま、いっか。気をつけよ〜っと。)
「よし。とにかく農具の棚を作ってスペースを確保しよう」
グレン兄ちゃんが言って、タク兄と二人で作業を始めた。
私は指示係――のつもりだったけど、
(うぅ……眠い……)
昨日森で頑張りすぎたせいか、体が重い。
木の板を運ぼうとしたら、タク兄に止められた。
「リィナは休んでろ。足元フラフラしてる。
難しい仕事はお兄さまとグレン兄ちゃんに任せとけ」
「でも……!」
「無理するな。お前、昨日も帰り道で舟漕いでたぞ?」
タク兄がニヤリと笑った。
(そ、そんな……半分寝てたのバレてたか……!)
グレン兄ちゃんも、
「監督さんは、仕事を割り振るのが役目だ」と。
「監督さん?」
「そう。リィナはこの作業の監督だ。」
「……はい!」
私は胸を張ったものの、しばらくすると頭がぐらぐらしてきた。
気づけば、父さんが敷いてくれた毛布の上に座らせてくれていた。
母さんがあたたかいお湯を持ってきて、ニッコリ笑う。
「お疲れさま、監督さん」
「……うん」
そのまま、気づけば毛布にくるまれ、うとうとと眠りに落ちた。
その間に、タク兄とグレン兄ちゃんは小屋の棚を完成させた。
作業の途中、グレン兄ちゃんが父さんに
「この小屋は古いから、湿気対策も考えた方がいいみたいだ。
……詳しいことは、監督さんが教えてくれると思う」
と話しておいてくれたそう。
父は苦笑しながら頷いたらしい。
夕方。
目を覚ますと、目の前に新しい棚と作業台があった。
「できた……!」
タク兄とグレン兄ちゃんが、埃まみれの顔で立っていた。
「リィナ、これで蚕の家は完成だ!」
「やった!ありがとう!!」
私たちの小さな養蚕場が、ついに誕生した瞬間だった。