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第四話 初めての蚕探し!村の幼馴染・グレンの協力

「よし、蚕を集めに行こう!」


朝食のあと、私はタク兄とミナ姉ちゃんを引き連れて庭に出た。


「いきなり行くって……どこに?」

タク兄が首をかしげる。


「山! この前、桑の実を取ったときにいたでしょ?」


「お、おい、あれをまた探すのか?

しかも今日は、グレンが小屋の修理に来るって言ってたぞ?」

兄の言葉に、私はぱっと顔を明るくした。


グレン・フェルナー。

村の木工職人一家の次男。

タク兄の同級生で、私の兄的存在でもある。


冷静で誠実、ちょっと無口だけど優しい人。

昔から何かと面倒を見てくれている。

(グレン兄ちゃんなら、絶対に力になってくれる!)


その時、ちょうど家の門のところに人影が。

「おはよう、タクマ。リィナも。ミナも、おはよう。」

グレンが大きな袋を肩にかけて立っていた。


その声色が、ミナ姉ちゃんに向けたときだけわずかに柔らかくなる。

「おはよう!」

「おはよ、グレン兄ちゃん!」

ミナ姉ちゃんは少し照れたように「お、おはよう……」と返した。

(やっぱり姉ちゃんも意識してる……)


グレンは納屋の前に袋を置いた。

「農具小屋の棚板、持ってきた。今日中に取り付けるつもりだ」


「あのね、グレン兄ちゃん!」

私は修理道具の前に立ちふさがった。


「蚕を探したいの! 一緒に山に行ってくれる?」

「蚕?」

グレンが少し首をかしげた。

「この前、山桑の枝にいたんだよ!わたし、蚕を連れて帰ってウチで飼いたいの!」

「……なるほど」


彼はほんの少し考えて、にこりと笑った。

「小屋の作業は後でも間に合う。いいぞ。」


(やった!)


「姉ちゃんも行こう!」

「絶対イヤ!」

ミナ姉ちゃんは両手で顔を隠した。


「虫なんて見るのも嫌! 私は縫い物してる!」

「わかった……」

(でも、絹布ができたら一番喜ぶのは姉ちゃんだもんね)


こうして、タク兄、グレン兄ちゃんと私の蚕探し隊が出発した。


森は朝の光に包まれ、

桑の葉が風に揺れて心地よい音を立てている。


「この辺だったな……」

タク兄が目を細める。


「よし、枝を一本一本チェックだ!」


三人で桑の枝をかき分けながら探す。

グレンは高い枝、タク兄は低い枝、私は葉の裏を。


「いた!」

私が叫んだ。


ふわふわとした白い体が、桑の葉にしがみついていた。


「おお、また会えたな!」

タク兄が拍手。


「これが蚕か。数は……そんなに多くないな」

グレン兄ちゃんは慎重に周囲を見渡した。


「すごい食うなコイツら。リィナ、エサどうすんだ?

この勢いなら葉っぱが大量に要りそうだぞ?」

タク兄がぽつりと言った。


「1匹2匹程度なら葉っぱも一緒に採って帰れば、なんとかなるんじゃないか?」

グレンは訝しげに疑問を口にする。


「ダメ!いっぱい飼うの!!」


私が頬を膨らませて抗議をすると、

「そうなのか?でもこの辺の桑は細いし、枝も少ない。木ごと運ぶのも難しいな」

とグレン兄ちゃんは顔を顰めて考え込む。


「そうだ……!」

私ははっとした。


(蚕は大量の桑の葉を食べる。

前の世界でも、畑いっぱいに桑を植えてたんだ)


「だったら、家の畑の隅に桑の木を植えよう!」


二人が驚いた顔でこちらを見る。

「桑を植える?」

「そう! 山で葉を取ってくるだけじゃ、足りなくなるから。

今ならまだ春先だし、枝を挿せば育つはず!」


グレンが腕を組んで少し考え、頷いた。

「なるほどな、春なら枝の移し替えもやりやすい。

やってみる価値はあるな」


「タク兄も手伝ってくれる?」


「ああ、いいぞ!」

タク兄は頼もしく親指を立てた。


(やった……!)


良かった!これなら何とか始められそう。

ふたりの協力に、私はすっかり気をよくしていた。

まさか、ゼロからのスタートがこんなに大変だとは、この時の私には思いもよらなかった。

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