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農家の娘、異世界で国家改革始めます ―糸で国を変えた少女―  作者: ふくまる
第1章

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第三十三話 変わりゆく村と、私の役割

グレン兄ちゃんが旅立って、1年半。私は6歳になった。


「すごいなあ……」

桑畑を見渡し、私は深く息を吸い込んだ。


目の前に広がるのは、以前とは比べものにならないほど大きくなった桑畑。

グレン兄ちゃんの誕生日をみんなで祝った時は、小屋の横にあるささやかな畑だけだったのに、今では村の端から端まで、青々とした桑の木が列をなしている。


「リィナ、感慨深そうな顔してるな」

後ろから声をかけてきたのは、タク兄だった。 もう11歳になって、村ではすっかり桑栽培のリーダー格になっている。


「うん。なんか、夢みたい」

「夢じゃないぞ。お前が始めたことが、ここまで大きくなったんだ」

そう言われても、まだ実感がわかない。


思い返せば、この一年半は怒涛の日々だった。 グレン兄ちゃんが旅立った直後は、正直、不安でいっぱいだった。 記録の管理も、温湿度の調整も、全部グレン兄ちゃんがやってくれてたから。

でも、パスカさんが「正式契約を結ぼう」って言ってくれた時、私は決めたんだ。 「私が、みんなを引っ張っていく」って。


「おはよう、リィナちゃん!」 「おはよう!」

桑畑の向こうから、村の人たちが次々と手を振ってくれる。 今では、二十軒以上の家が養蚕に参加している。

「リィナ!今日の蚕の調子はどう?」 「湿度の具合、確認してくれる?」

みんな、私に声をかけてくれる。 最初は「子どもが何を」って顔をしてた人たちも、今では頼りにしてくれてる。


「行こうか」 タク兄と一緒に、村の中心部に向かった。

そこには、一年前に完成した「マーヴェル村桑栽培組合」の事務所がある。 といっても、村長の家の隣に建てた小さな小屋だけど。


「おお、リィナ。おはよう」 事務所の前で、父さんとガイルおじさんが何かの書類を見ていた。

「おはよう、父さん。何見てるの?」

「隣村からの注文書だ。桑の苗木を分けてほしいって」

私は目を丸くした。

「隣村って、母さんの実家じゃなくて?」

「いや、もっと遠くの村だ。噂を聞いて、わざわざ使いを送ってきた」

それを聞いて、胸がじんわり熱くなった。


母さんの実家との連携は、ちょうど一年前に始まった。 最初は母さんが「実家でも手伝えることがあるかも」って言い出したのがきっかけ。 お祖父ちゃんたちが桑の栽培を始めてくれて、今では私たちの重要なパートナーになってる。


その成功を見て、他の村も興味を持ってくれたんだ。

「すごいね……」

「ああ。お前が蒔いた種が、どんどん芽を出してる」 父さんが優しく笑った。

「でも、大変そう」

「まあな。でも、嬉しい悲鳴だ」


その時、事務所の扉が開いて、ミナ姉ちゃんが顔を出した。

「あ、リィナ!ちょうどよかった。帳簿の確認、手伝って」

「はーい」


ミナ姉ちゃんは、この一年で見違えるほど成長した。 文字もすっかり上手になって、今では組合の経理を一手に引き受けてる。

事務所に入ると、几帳面に整理された帳簿がずらりと並んでいた。

「すごいなあ、ミナ姉ちゃん」

「えへへ。グレンに教わったおかげよ」

そう言いながら、ちょっと寂しそうな顔をする。 ミナ姉ちゃんも、グレン兄ちゃんがいなくて寂しいんだ。

「でも、グレン兄ちゃん、きっと喜んでくれるよ。こんなに立派になって」

「そうかな?」

「うん!手紙で報告しよう」

ミナ姉ちゃんが、ぱっと笑った。

「そうだね!今度、長い手紙を書こうかな」


帳簿を確認していると、改めて組合の成長ぶりに驚く。 参加農家数、桑の生産量、蚕の飼育数……全部、一年前の三倍以上になってる。

「リィナ、おつかれさま!」 メイナ姉ちゃんが、温かいお茶を持ってきてくれた。

「今日は午後から、新しく参加する家族への説明会があるのよね」

「うん。三家族が新しく参加してくれる」

「そっか。どんどん仲間が増えていくね。これもリィナ先生の活躍のお陰かな?」


そう言われて、ちょっと緊張した。 最初の頃は、大人の前で話すのが怖かった。 でも、今では慣れたというか……むしろ楽しみになってる。

(前世の記憶があるから、説明すること自体は難しくない。でも、子どもの私の話を、みんな真剣に聞いてくれて……それが嬉しいんだ)


「そういえば、パスカさんから連絡があったのよ」 ミナ姉ちゃんが思い出したように言った。

「今度、都市の大きな商会の人を紹介してくれるって」

「都市の商会?」

「ええ。織物ギルドの代表らしいの」


私は、ちょっとドキドキした。 パスカさんとの取引は順調だけど、さらに大きな商会となると……

(前世の知識はあるけど、この世界の商習慣はまだわからないことが多い。大丈夫かな……)

でも、同時にワクワクする気持ちもあった。 私たちの糸が、もっと多くの人に届けられるかもしれない。

「楽しみだね」

「そうね。でも、緊張もするわ」


その時、外から大きな声が聞こえてきた。

「リィナー!大変だー!」

慌てて外に出ると、支援隊の下の子が息を切らして走ってきた。

「どうしたの?」

「蚕小屋の温度計が、変な数字になってる!」

私とミナ姉ちゃんは顔を見合わせた。

「急ごう!」

組合の事務所から蚕小屋まで、全力で走った。


こういう時、グレン兄ちゃんがいてくれたらなあ、って思う。 でも、今は私たちでなんとかしなきゃいけない。

(大丈夫。この一年半で、私もミナ姉ちゃんも、たくさん学んだ。きっと対処できる)

そんな風に自分を励ましながら、私は村のみんなの期待を背負って走り続けた。


蚕小屋に着くと、確かに温度計の針が異常な数値を示していた。

「これは……壊れてるね」 私は温度計を見て、すぐに判断した。 前世の経験で、機械の故障はよく見てきた。


「えっ、壊れてるのか?」 駆けつけてきたカイト兄ちゃんが、汗を拭いながら聞いた。

「うん、多分。実際の温度は正常だよ。ほら、蚕たちも元気でしょ?」

小屋の中を見回すと、蚕たちはいつも通り、桑の葉をもりもり食べている。 もし本当に温度が異常なら、こんなに元気にしてるはずがない。


「よかった……」 カイト兄ちゃんがほっと息をついた。

「でも、温度計が壊れちゃうと、管理が大変だな」

「大丈夫。予備があるから」 ミナ姉ちゃんが、物置から新しい温度計を取り出した。

「グレン兄ちゃんが、こういうことも想定して、いくつか用意してくれてたの」

私は、ちょっと胸が熱くなった。 グレン兄ちゃんは、旅立つ前に、私たちが困らないように色んなことを準備してくれてたんだ。

「さすがグレン。用意がいいな」

「本当に頼りになる人だった……じゃなくて、今でも頼りになる人よ」

ミナ姉ちゃんが、慌てて言い直すのを見て、私は苦笑いした。 グレン兄ちゃんへの想い、まだ続いてるんだなあ。


新しい温度計を設置して、記録を更新する。 この一連の作業も、今では慣れたものだ。

「リィナ、本当にしっかりしたなあ」 カイト兄ちゃんが感心したように言った。

「グレンが旅立ったばかりの頃は、何をするにも右往左往してたのに」

「そうかな?」

「ああ。今では、村の人たちもリィナの判断を信頼してる」


その言葉を聞いて、改めて自分の変化を実感した。

(そうか……私、成長してるんだ)

前世の記憶があるから、知識的には大人と変わらない。 でも、今のこの心と体で、みんなに認められるまでには時間がかかった。

最初は「子どもの言うことなんて」って思われることも多かった。 でも、それも最近は減ってきた気がする。少しずつみんなの信頼を得てこれたのかな。だったら、嬉しいな。


「午後の説明会、頑張ろうね」 ミナ姉ちゃんが励ましてくれた。

「新しい家族の人たち、リィナの話を聞けるのを楽しみにしてるって」

「うん!」


その時、小屋の外から声がした。

「リィナちゃん、いる?」

出てみると、村の若い夫婦が立っていた。 今日から養蚕を始める家族の一組だ。

「こんにちは。何か質問があるんですか?」

「実は、桑の葉の保存方法について聞きたくて……」

私は、丁寧に説明を始めた。 葉の選び方、採取のタイミング、保存容器の作り方……

前世では当たり前だったことも、この世界の人たちには新しい知識だ。 だからこそ、一つひとつ丁寧に伝えたい。

「なるほど、そんなに細かく管理するのね」

「はい。最初は大変に思えるかもしれませんが、慣れれば簡単ですよ」

若い奥さんが、メモを取りながら真剣に聞いてくれている。 その姿を見て、嬉しくなった。

(みんな、本気で取り組もうとしてくれてる)

説明が終わると、夫婦は深々と頭を下げた。

「ありがとうございました。小さいのに、本当によく知ってるな」

「がんばってやってみるわね!」


二人が帰っていくのを見送りながら、ミナ姉ちゃんがぽつりと言った。

「リィナって、教えるのが上手よね」

「そうかな?」

「うん。難しいことも、わかりやすく説明してくれる」

そう言われて、ちょっと照れくさくなった。

(前世では、部下への指導とか、取引先への説明とか、よくやってたからかな)

でも、今の私にとって、それはただの「前世の記憶」じゃない。 みんなの役に立てる、大切な能力なんだ。



午後になって、説明会が始まった。

新しく参加する三家族と、既存の参加者たち、合わせて二十人ほどが集まった。


「それでは、リィナからお話させてもらいます」 父さんが紹介してくれた。


私は、少し緊張しながら立ち上がった。 でも、みんなの期待に満ちた顔を見ると、不思議と落ち着いた。

「こんにちは。今日は来てくださって、ありがとうございます」


最初は、養蚕の基本から説明した。 蚕の生態、必要な環境、餌の与え方……

途中で質問も出た。

「失敗したらどうなるの?」

「最初はどのくらいの数から始めればいい?」

「利益はどのくらい期待できる?」

一つひとつ丁寧に答えていくうちに、みんなの表情が真剣になってきた。


「最後に、一番大事なことを言います」 私は、声を少し大きくした。

「養蚕は、一人でやるものじゃありません。みんなで協力して、情報を共有して、助け合うことが大切です」

その言葉に、既存の参加者たちが大きくうなずいた。

「そうそう、最初はわからないことだらけで」

「でも、みんなが教えてくれるから大丈夫よ」

「困ったときは、遠慮しないで相談して」

新しい家族の人たちが、安心したような顔になった。


説明会が終わった後、一人の年配の男性が私のところに来た。

「リィナちゃん、ありがとう。正直、子どもから教わるなんてと思ってたけど……」

「はい……」

「でも、話を聞いて考えが変わった。年齢じゃないんだな。知識と経験、そして人を思う気持ちが大事なんだ」

その言葉に、胸がじんわり温かくなった。

(そうか……私、認めてもらえてるんだ)


帰り道、ミナ姉ちゃんと一緒に歩きながら、今日一日を振り返った。

「今日も1日頑張ったね」 「うん。でも、まだまだやることがいっぱいある」

空を見上げると、夕焼けが美しく空を染めていた。 桑畑の向こうに、村の家々の明かりが点々と見える。

(この景色を、ずっと守っていきたい) (そのために、私はもっと成長しなきゃ)

そんなことを考えながら、私は家路についた。 明日もまた、新しい挑戦が待っている。




六月に入った頃、待ちに待った嬉しい知らせが届いた。

「リィナ!ミナ!グレンから手紙だ!」 タク兄が興奮して手紙を振りかざしている。

「本当!?」

私は作業台に置いていた糸束を放り出して、タク兄のもとに駆け寄った。 ミナ姉ちゃんも、帳簿を抱えたまま慌てて近づいてくる。


「読んで読んで!」

「ちょっと待て、落ち着けって」

タク兄が苦笑いしながら封を開く。 久しぶりのグレン兄ちゃんの文字に、胸がドキドキした。


「えーっと……『皆さん、お元気ですか。王都での生活にもすっかり慣れました』……」

「うんうん」

「『パスカさんから聞きました。組合がそんなに大きくなってるなんて、驚きです』」

そこまで読んで、タク兄がにやりと笑った。

「『特にリィナ。君が村のリーダーとして活躍してるって聞いて、本当に誇らしく思います』だって」

「えー!」 私は顔が真っ赤になった。

「リーダーなんて、そんな大それた……」

「いいや、事実だろ」 タク兄が続けて読む。

「『俺がいなくても、みんなでちゃんと発展させてくれて、ありがとう。特にミナには、記録管理を任せきりにしてしまって申し訳ない。でも、君の几帳面さと責任感なら、きっと完璧にやってくれていると信じています』」

ミナ姉ちゃんが、手紙を聞きながらぽろぽろと涙をこぼしている。

「グレン兄ちゃん……」

「泣くなよ、まだ続きがある」 タク兄が優しく言った。

「『来年の春には、魔道具の設計図をいくつか送れると思います。温湿度の自動調整装置や、糸の品質を測定する器具なども作れそうです』」

「すごい!」 私は飛び上がった。 「グレン兄ちゃん、そんなものまで作れるようになったんだ!」

「『それから、王都でとても興味深い人と知り合いました。将来、きっと皆さんの力になってくれる人だと思います。詳しくは、また今度の手紙で』……だそうだ」


手紙はまだ続いていたけど、私の心は既に興奮でいっぱいだった。

(グレン兄ちゃん、ちゃんと成長してる。そして、私たちのことを忘れてない)


「返事書こう!」 私が提案すると、ミナ姉ちゃんが勢いよく頷いた。

「私も書く!組合のこと、詳しく報告したい!」

その日の夕方、三人で長い返事を書いた。 村の変化、新しく参加した家族のこと、組合の成長、そして都市の商会との新しい取引の話。


手紙を書き終えて、封をしながら、私はふと思った。

(私たち、本当に成長したんだな)

2年前の今頃は、グレン兄ちゃんに頼りっきりだった。 でも今は、自分たちで判断して、自分たちで解決して、自分たちで発展させている。


もちろん、まだまだ知らないことはたくさんある。 特に、これから予定されている都市の商会との取引は、私にとって大きな挑戦になりそうだ。

(前世の記憶はあるけど、この世界の商習慣は違うかもしれない。それに、6歳の私が大人の商人と対等に話せるかな……)

でも、不安よりも期待の方が大きかった。 私たちの糸が、もっと多くの人に届く。 村がもっと豊かになる。 そして、みんながもっと幸せになる。


「リィナ、何考えてるの?」 ミナ姉ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。

「ううん、ちょっとこれからのこと考えてた」

「これからのこと?」

「うん。私たちがもっと大きくなったら、この産業はどうなるんだろうって」

タク兄が手紙を封筒に入れながら言った。

「それは……わからないな。でも、きっといいことになるんじゃないか?」

「根拠は?」

「だって、お前が始めたことだから」

その言葉に、私はちょっと照れくさくなった。


「私一人の力じゃないよ。みんながいるから、ここまで来れたんだ」

「それもそうだな」


その時、外から父さんの声がした。

「リィナ、来客だぞ」


三人で外に出てみると、見知らぬ馬車が門の前に停まっていた。 降りてきたのは、上等な服を着た中年の男性と、若い男性。


「こんばんは。パスカさんの紹介で参りました、マルコ・ジェンティスと申します」 中年の男性が丁寧に挨拶した。 「ヴェルダン織物ギルドの代表をしております」


私は心臓がドキドキした。 ついに来た。都市の大きな商会の人だ。

「こちらが、噂に聞いているリィナ・マーヴェル様でしょうか」 男性が私を見て、少し驚いたような顔をした。 「思っていたより……お若いですね」

「はい。はじめまして、リィナです。先月6歳になりました」 私は背筋を伸ばして答えた。

(大丈夫。落ち着いて。前世の経験を思い出して……)


でも、実際に目の前に立つと、やっぱり緊張する。 この人たちとの話し合いで、村の未来が決まるかもしれないんだ。

「それでは、早速ですが、お話をうかがわせていただけますでしょうか」

「はい。こちらへどうぞ」

父さんが応接間に案内して、正式な商談が始まった。


マルコさんは、まず私たちの糸の品質について詳しく質問した。 製造方法、品質管理、生産量、価格設定……

私は、一つひとつ丁寧に答えた。 前世の知識と、この一年半の経験を総動員して。

「素晴らしい」 マルコさんが感嘆の声を上げた。

「これほど品質の高い絹糸を、地方で生産されているとは」

「ありがとうございます」

「しかも、管理システムも完璧ですね。記録の精度、品質のばらつきの少なさ……都市の工房でも、ここまで徹底しているところは少ない」

隣に座っていたミナ姉ちゃんが、誇らしそうに微笑んだ。


「それで、具体的な取引条件なのですが……」

そこから先は、かなり複雑な話になった。 納期、価格、品質保証、独占契約の可否……


私は必死についていこうとしたけど、やっぱり6歳の頭では理解しきれない部分もあった。

(やっぱり、まだまだ勉強が必要だな……)

でも、父さんとガイルおじさんがしっかりサポートしてくれて、最終的には良い条件で契約をまとめることができた。


「それでは、来月から正式に取引を開始させていただきます」 マルコさんが立ち上がって、深々と頭を下げた。 「みなさま、今後ともよろしくお願いいたします」

「こちらこそ!」

馬車が去っていくのを見送りながら、私は胸がいっぱいになった。


「やったね、リィナ」 タク兄が肩を叩いてくれた。

「うん……でも、これからが本当の勝負だね」


家族みんなで囲炉裏を囲んで、今日の出来事を振り返った。

「今日のリィナは、本当に立派だったな」 父さんが嬉しそうに言った。

「あんな大きな商談を、たった6歳でやり遂げるなんて」

「でも、まだまだわからないことがいっぱいあった」 私は正直に答えた。

「もっと勉強しないと、みんなに迷惑をかけちゃう」

「大丈夫よ」 母さんが優しく笑った。

「あなたも、タクマもミナも。みんな十分頑張ってる。これからも、少しずつ成長していけばいいのよ」


その夜、布団に入りながら、私はこの一年半を振り返った。

グレン兄ちゃんが旅立って、最初は不安でいっぱいだった。 でも、みんなと一緒に頑張って、ここまで来ることができた。

組合も大きくなって、取引先も増えて、村全体が活気づいている。 私自身も、以前とは比べものにならないくらい成長した。


(でも、これはまだ始まりなんだ)

窓の外で、夜風が桑の葉を揺らしている。 明日もまた、新しい挑戦が待っている。

(グレン兄ちゃん、見ててね。私、もっともっと頑張るから)


そんな決意を胸に、私は静かに眠りについた。

6歳の私の、新しい挑戦が始まろうとしていた。

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