第十一話 初めての繭、そして運命の絹糸取り――リィナの決断
朝。
小屋の蚕たちを見て、ミナ姉ちゃんが目を見張った。
「うわ……また大きくなってる!」
四齢幼虫だった蚕は、夜の間に五齢幼虫へと脱皮を終え、
ほとんどの個体がふっくらとした体で棚を這っていた。
むしゃむしゃ、むしゃむしゃ。
食欲はさらに旺盛になり、昨日並べた桑の葉はほとんど跡形もない。
「この子たち、いよいよ繭作りかな?」
タク兄が声を弾ませた。
「うん。でも、繭枠に登らない子もいるから、注意して見てあげて」
「わかった!」
子ども支援隊は今日も元気に集合。
ライル、メイナを中心に、桑の葉取り班と棚の見守り班に分かれて動いた。
ミナ姉ちゃんは、すっかり蚕世話のエキスパートになっていた。
「この子、葉っぱの上に登れないみたい」
「こっちの子は脱皮したばかりだから、少し様子を見るね」
冷静に観察しながら、桑の葉を適切に配置する。
「ミナ姉ちゃん、すごい!」
メイナも隣で目を丸くした。
「前は怖くて逃げてたのにね」
「う……言わないでよ」
ミナ姉ちゃんは頬を赤くした。
昼近く。
「見て、繭枠に登り始めた!」
支援隊の子どもたちが歓声を上げた。
1匹、2匹……と蚕が繭枠をよじ登っていく。
「うわぁ……!」
ミナ姉ちゃんも息を呑んだ。
最初の蚕が糸を吐き始めた。
白く細い糸が枝に絡まり、ぐるぐると繭の形を作っていく。
(きた……!ついに、この瞬間が)
心臓がドキドキした。
「リィナ、これが繭ってやつ?」
ミナ姉ちゃんが声を潜めて聞いた。
「そう。この糸を取って、布にするんだよ」
「へえ……」
「でも、まだ私も試したことがないの」
(前世の知識はある。でも、実際にこの世界で糸が取れるかは未知数)
(糸質も、繭の大きさも、道具も……全部手探り)
ううん、弱気になってる場合じゃない!
この糸で、みんなと幸せになるんだから!!
夕方。
小屋の棚に繭が十数個並んだ。
最初に繭を作った蚕は、すっぽりと白い殻の中に隠れている。
「すごい……」「かわいい!」
支援隊のみんなが次々と棚を覗き込んだ。
そのとき、小屋の扉が開いた。
「おー、すごいな」
父さん、母さん、それにガイルおじさんも入ってきた。
「支援隊ががんばってるって聞いたからな」
「お前たち、立派な仕事をしたな」
父さんが感心して言った。
「母さん、見て!」
ミナ姉ちゃんが自分で作った繭枠を指さす。
「この繭、私が作った枠でできたんだよ!」
母さんは驚き、そして笑った。
「すごいじゃない!」
「リィナ、これで本当に糸が取れるの?」
タク兄が真剣な顔で聞いた。
私は頷いた。
「やってみよう。この繭から、糸を引いてみよう!」
(ここからが、本当の勝負!ガンバレ、私!!)