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盃と犬―始末屋編―  作者: ネクタイ
3/5

第三話 緑の宝物

グリーンテゾーロ。

海外に本社を置く、自然開発の大企業。

誰もが知るその名に美知子さんは目を伏せた。


「お話します。彼の事も、山岡植木のことも。」

伏せていた目をキッと上げて、覚悟を決めた目をした美知子さんがそこにはいた。それを見て満足そうにマーブルが微笑む。俺はおどおどしながらその二人を見ていた。

「山岡植木と寺脇園は協力関係にあったんです。そして両方が倒産の危機に陥った。その時先代の山岡に悪魔の囁きをしたのがグリーンテゾーロ首領なんです。」

「悪魔の囁き・・・?」

「会計業務の改竄。」

「マーブルさんは何でもお見通しなんですね。」

「なんで、そんなことわかるんだ?」

ペラペラと書類を取り出しながら、特定のページを見つけるとトントンっと肉球で指した。

そこには計算すればするほどおかしな会計データがずらずらと並んでいた。

「こんなの素人目にも分かるじゃないか。」

「グリーンテゾーロはそこに付け込んだ。」

「はい、全てのことを『寺脇園の指示でやり、それをグリーンテゾーロが買収した』という筋書きにしたんです。そうしてそれに追い込まれた寺脇園の先代・父はなすすべ無く会社を畳み私にこう言い残して遺産を残しました。『山岡は悪くない』と。」

「なんで!山岡が裏切らなかったら君のお父さんは・・・!!」

「現当主の山岡廉太郎はその事を重く受け止め、行く宛のなくした私を優しく受け止めてくれました。あの日までは。」

再び美知子さんは目を伏せた。それは、悲しく憎らしい思い出を思い出す悲しい目だった。

「行きつけのバーで父の命日にと、飲んでいた時です。何時もより酔いが回った彼が言ったんです。『いよいよ来月は上場企業になれる。寺脇園には潰れてもらってよかった。おかげで今俺達は美味しい思い出来てるもんなあ。』と。」

「山岡の仮面が剥がれたって訳だ。」

「私、許せないんです。彼がそんなこと思ってたなんて知らなかった自分が。ずっと支えてきてくれてた彼が隠してきた現実が。だから、だからっ!!」

ぼろぼろと涙が溢れる。溢れ出たその思いには悲しみ以外にも何か含まれている気がした。

「後悔はないんだな?」

マーブルが感情無く聞く。

「ありません。山岡は、グリーンテゾーロは、悪です。」

美知子さんが感情剥き出しで言う。


「改めて依頼を受けよう。今夜方を付ける。」

呆ける俺の頬にマーブルは肉球を押し付けて、ニイッと笑った。

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