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「あー、肉汁がしみるぅ・・・・・・。」
学園の食堂でハンバーグ定食を口いっぱい頬張りながら、ルーシェは生気のない目をしてげんなりしていた。午前に行われた魔法科実践演習授業で思った以上にメンタルがやられている。
「うぅ、僕の日々の努力。朝と帰りには必ず挨拶をしているし、一日一つは相手の美点を褒め称え、美味しいお菓子だって毎日プレゼントしているのに・・・・・・!なんだって、なんだってあんな顔だけイカれ研究オタクなんかにぃー!」
ミシェル先生の登場により、クラスの女子人気はあっという間にかっさらわれてしまった。このままでは悪役令嬢たちのハートを射止めることなんて夢のまた夢。やはり攻略対象の魅力にはどうあがいても勝てないのか。
「うーん、ミシェル先生にあって僕にないもの・・・・・・。」
「身長。」
「うっ。」
「知性。」
「ぐっ。」
「色気。」
「ぐはっ。」
「大人の余裕。」
「な、なんなんだよさっきから!」
ぎゃん!と吠えるように訴えると、そこには昼食を食べ終わり優雅に紅茶を飲んでいるシリルと腕を組んで背もたれによりかかり今にも昼寝ができますというくらいにくつろいだ様子のヨハネスがいた。
「いいから早く食べなよ。さっきから食べたりふてくされたりで全然進んでないよ。」
「ううっ。だって、僕の、女子人気が、たった半日で、覆されたんだぞ・・・・・・!」
「そもそもなんで女子人気なんか狙ってるの?ルーシェには私がいるでしょう?」
「ううううう、男はお呼びじゃない・・・・・・。」
「えー、心底わからない。ね、なにか知ってるヨハネス君?」
今にも寝ようとしていたヨハネスが意識を取り戻し、だるそうに答える。
「ん・・・・・・確かこいつ、架空の恋人を追い求めてるんだったな?」
「は?何言ってるの。余計にわからないんだけど。」
「なんだったか、これから出会う最愛の人とやらのためだとかなんとか。」
「で、なんで女子人気?」
「さぁ?」
「さぁって、え、どういうこと?」
シリルとヨハネスが首を傾げる中、ルーシェは眉間にシワを寄せて思案にくれていた。
「はぁ。もっと僕は男をあげないといけないなぁ。」
「おや。悩み事ですか。」
「うぎゃあ!」
「うわ。なんですか人をお化けみたいに。ルーシェ、あなたの悪い癖ですよ。落ち着いて、私に話してごらん。」
いつから聞いていたのか、ミシェルが現れ、同じテーブルに座った。ちなみに、僕の右隣にヨハネス、正面がシリル、そのシリルの右側にミシェル先生だ。シリルがこんにちはミシェル先生と挨拶し、おやおやシリル君の紅茶はいい香りがしますねぇなどと打ち解けている。
「ミシェル先生は、いつからルーシェのことを知っているのですか?」
「そうだね、ルーシェが6歳の頃からかな。」
「わー長い。ルーシェは昔からこんなに女性が好きなんです?」
「いいや、当時のルーシェは、・・・・・・ふふ、可愛かったな。」
ふふ、ふふふふふと口を抑えて笑い始めたミシェルに、ルーシェは嫌な予感がしていた。
「ミシェル先生、わかってますよね。僕は!」
私は今男装して学園にいるのだからヘタなことは言うなよ!の圧を全力でかけていたつもりなのだが、ミシェルには通じない。
「ミシェル兄様と結婚する!って私を見つけては飛びついてきたものだよ。」
「ああああああああああああ。」
ルーシェは両手で両目を抑え、天を仰いだ。




