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「ねえちょっとルーシェ!私わからないんだけど!」
各々ができる範囲の魔法強化の実践演習が始まって、シリルが半ギレで絡んできた。
「ねぇ、学生が学ぶ共通科目のレベルじゃないよねぇ!なにあれ、君は戦闘兵器かなにかなの!?君の師匠だかなんだか知らないけど、ウォンバットの民は魔力がないの。こっそり魔石をいくつか持ってはいるけれど、あんなの無理!私の正体がバレたらどうしてくれるの!?」
「あはは、大丈夫だよ。魔石があればなんとかなるってー。」
カッと目を見開いたシリルが下から睨めつけてくる。せっかくのプリンス顔が台無しだぞ。ルーシェはやれやれと軽く頭を振って、シリルに言った。
「まあどうしてもピンチなときは僕がサポートしてあげるから。やってみなって。」
「えぇー、本当に?見捨てたりしない?」
「しないしなーい。」
そこにミシェルが割って現れた。
「ル、ルーシェ・・・・・・?この子はルーシェのなに?」
「私ですか?私はシリル・ボンテッド。ルーシェの友人です。よろしくおねがいしますミシェル先生。」
シリルが姿勢を正して礼をする。爽やかな笑顔も忘れない。ミシェルは体をふらつかせ、まるで信じられないといったように声を震わせた。
「ルーシェに人間の、友達ができた、だって・・・・・・?」
目を大きく開き、しばらく固まった後、ミシェルはシリルの手を両手で包み、涙を流しながら頭を下げた。
「どうか、末永くルーシェをよろしくおねがいします・・・・・・!」
「ミシェル先生、恥ずかしいんでやめてください。口聞きませんよ二度と。」
「ええ、お任せください。ルーシェは私が守ってみせます・・・・・・!」
「おいシリル。悪ノリに加担しないでくれないか。」
「これ以上浮いてどうするんだ。引かれてるぞ変人トリオ。」
「ヨハネス!助けに来てくれたのか!さすが僕の友達だ!」
ルーシェが感激に目を輝かせ、ミシェルが友達二人目の報告に心臓を撃ち抜かれ、シリルがむっつりと頬を膨らませてルーシェに抱きついた。ヨハネスは眉間にギュッとシワを寄せ一呼吸ついた後、ルーシェに言った。
「ああ。ほら、はやく魔術の強化練習付き合ってくれ。」
「うん!」
ひらけた場所で魔術強化にいそしむ三人を眺めながら、ミシェルは出会った頃のルーシェのことを思い出していた。
(あの子が立派にやっていけそうで本当に良かった。)
いつの頃からか、年々髪を短く切るようになり、服装もメンズを選ぶようになった。あの子がそれを望むならと学園に手を回し、男子生徒として入学させたのもミシェルである。その代わり卒業後は魔塔勤務になるよう約束をしたが、ミシェルとしてはルーシェが幸せならそれでいいと思っている。そんな子が今や男友達二人に囲まれて楽しそうに学園生活を送っている。
(昔は、ミシェル兄様と結婚するって言ってくれたのになぁ。)
いつの間に大きくなってしまったものやら。ミシェルは少しだけ寂しさを覚えつつも、ルーシェの成長を微笑ましく見守った。
(さて。私もそろそろ仕事に戻るとしよう。可愛い愛弟子にいつまでも尊敬していてもらいたいからね。)
ミシェル・ハロルド27歳。ルーシェの憧れの座は簡単に譲るつもりはないよ。見ていなさいシリル・ボンテッド、ヨハネス・ケイトナー!私のルーシェは難攻不落、シャイで健気でわかりにくい、可愛い女の子なんだから。




