⑧ついでにダイマ他作品誘致という、あざとい作者の意図など決して感じてはならないのだ。
「タケくんは幼馴染みちゃんを『恋人』として紹介し、僕は友人となることで男嫌いをどうにかしてあげようと考えているわけだよね?」
「う、うん……?」
──そうだったかな?
なんか穂乃果が急に嘘を言い出すわ、ミッチーが妙な提案をし出すわで、正直僕はそのへんの順番がよくわからなくなっている。
そもそもなんでこうなったんだ。
僕は美少女穂乃果とイケメンミッチーをくっつけるつもりだったのでは。(困惑)
「ここはやはりもう少し恋人っぽさを深めてから紹介した方が友達になりやすいと思うんだよね! ラノベでもありがちな『ふたりの仲を後押しする恋人の友人枠』なら男嫌いの幼馴染ちゃんにも妙な警戒心を抱かせず、すんなりお友達になれるんじゃないかと!」
「そ、それは……」
なんだか既視感が半端ない。
それもその筈、当初僕が考えていた計画と丸かぶりである。読んでるものが同じだと発想も似てくるのだろうか……ラノベ、侮り難し!
ただし、友人枠が僕だったところがミッチーにすげ替えられている。既視感と共に本末転倒感の凄さも半端ない。
なんなら一番回避したかった筈の『NTR幼馴染みキャラ枠』が一気に近付いた気が。
「そんな訳でコレをプレゼントするよ」
「! こ……これは!?」
それは、実写化されたラノベ『転生したら二時間枠刑事ドラマの主人公だった件~湯けむり旅情編~』の映画チケット。
レーベル買いをしているセレブヲタクのミッチーへ、『日頃のご愛顧のお礼に』と当該作品の出版元から送られてきたらしい。
「実写ならではで、主人公の轟刑事役には中堅実力派俳優の龍 角三、部下の石動刑事は若手イケメン俳優の小村拓也……ラノベに興味がなくても楽しめるよ!」
「えっ、アレそんな豪華俳優陣なの?!」
『転生したら二時間枠刑事ドラマの主人公だった件』は知る人ぞ知るクソラノベだ。
『古いメタ表現満載で若い子置いてけぼりなの草』『ノリと勢いだけで稚拙な文章』などと叩かれまくったにも関わらず、転生ブームにタイミングよく乗っかりウッカリ書籍化。何故か似非ヲタクインフルエンサーが持ち上げ中ヒットを飛ばすが、そのインフルエンサーが謎の失踪を遂げたせいで大ヒット、といういわく付きの作品である。
炎上というより妙ないわくが付いたことで、逆に実写映画化に至った──というのは記憶に新しく『なにが売れるかなんてわかったモンじゃないな……』と作家を目指す者達の心と筆を尽く折るという、更なるいわくを作っている。
なのに、この俳優陣の豪華さよ……
『原作の良し悪しと別ツール化作品の良さは別』と考える僕も、流石に釈然としない。
(……はっ!? まるで僕と穂乃果そのものじゃないか!!)
極めて善良な心根もイケメンのミッチーがそんな暗喩を込めたとは僕も思っちゃいないが、あまりに相応しいそれになにか運命的な引きを感じ、チケットを受け取った。
「わかった……有難く受け取るよ……!」
「うん、頑張って!!」
一体なにを頑張るというのかよくわからないが、『コレを観なきゃダメ』という謎の逼迫感に駆られてしまった。
──ぶっちゃけ、内容が気になったのである。
真性の陰キャである僕は『ひとりで映画館』なんてインテリヲタクみたいな真似、敷居が高くて無理だ。
「コレを理由に穂乃果に土下座で懇願してみるね!」
「いや、そこは普通に誘おうよ」
副題からお察し~!
作中の『転生したら二時間枠刑事ドラマの主人公だった件』は、拙作のちょっと題名が違うやつです!お若い人にはわからない(かもしれない)メタ満載!
『2時間ドラマの主人公刑事に転生した件』
https://ncode.syosetu.com/n1987gw/
ちなみに湯けむり旅情編ではない。
ついでに本作俳優名『龍 角三』は龍角散から取りました。最初は中堅がオムタクでしたが、なんかたまたま出てきた龍 角三(龍角散)が気に入ったんで、中堅をそっちにした。