②こんな幸せなど、あっていいはずがない!
穂乃果は控え目にいってもアイドルばりの美少女でありながら、どことなく愛嬌があり親しみやすく、やや小柄な身体に隠したダイナマイトバディが眩しいというハイスペック美少女。
家もミッチーのように超絶お金持ちというわけではないところがまた、無駄な敷居の高さもなく。
好きなお菓子もポッ〇ーという庶民的愛らしさ。
〇ッキーのCMといえば美少女だが、もうCMに出てても全くおかしくない。
むしろ僕の知らないところで、オファーがあったのではないだろうか。
「もう、遅いじゃん!」
愛らしくプリプリしながら穂乃果が僕に差し出すのは──
「ちょ、調理実習で余っただけだし!」
──などと宣いつつも、それにしてはあまりに装飾過度な可愛らしい手作りお菓子。
しかも真っ赤になりながら。
な ん て よ き ツ ン デ レ 。
モラハラ幼馴染ざまぁなどという流行りからは掛け離れた、あまりにもベタなご褒美ツンデレに僕は意識を飛ばした。
「きゃあ! 大丈夫!?」
「だいじょばない……(※主に胸が)」
ベタだ。ベタすぎる。
ベタすぎるというのはつまり王道中の王道であり、全国津々浦々ツンデレスキーが夢に描いてやまないトキメキシチュである、と言っても過言ではないのである。
隣の家に生まれただけなのにこの幸運を甘受し続けている僕。
最早、いつ死んでもおかしくない。
「余命が不安すぎる……」
「なに!? イキナリ!!」
だからといってこのモブい僕がこのツンデレ美少女によもや男子として好意を抱かれているなどといった勘違いをしてはならないのだ。(一息)
尚、『お前それこそラノベ主人公じゃねぇか』等のツッコミは受け付けない。
期待させてくれるな。
このお菓子だって、僕が隣に生まれた故──
「美味い……」
なんとこの幼馴染美少女、菓子作りまで上手いとは……!
美少女の手作りお菓子とか、罪でしかない。
この罪作りめが!
有罪!!有罪よッ!!(※何故かオネエ言葉で)
「ああっ! 胸が苦しい……!」
「ええ?! もうっ、具合悪いならベッドで寝なよ!」
穂乃果はツンデレだが、決してモラハラ幼馴染などではない。普通に性格も優しく、可愛い。
「うう……僕のことなんか心配しなくていいんだよ、穂乃果……どうか幸せになってくれ」
「なんの話?!」
美少女すぎる穂乃果はツンデレのくせに男子が苦手で(※ツンデレへの風評被害)、女子校に通っている。
──考えてもみろ。
そんな『隣に住んでいる男嫌い美少女』が『家に気軽に遊びに来る』という状況だけでも全国津々浦々男子向けラノベ読者垂涎の的であることは間違いなく、なんなら藁人形などの呪いグッズを男子諸君の血涙により書かれた『死ね』という不穏なお手紙と共に頂いてもなんら不思議ではないと思うこの状況を。
一周回って恐怖だ。
この僕にとって美味しすぎる設定に、ワンチャンあるんじゃないのかという期待をするのが一番恐ろしい。
哀れ、身の程も知らずに失恋した僕は、延々と天使の面影を追い求めてしまい、最早今後の恋などできる筈もなく……唯一マシな勉強にも身が入らずに成績はダダ下がり、学校にも行かなくなりヒキニート人生まっしぐらだ。
──だというのに、
「……し、仕方ないなぁ! ほら、頭!」
「……へ?」
なんと穂乃果は全男子が憧れてやまない『膝枕』を示唆する動きをしてきたのだ。
お……恐ろしい子ッ!!(白目)
ちょっと長いので、分割しました。
今回1500文字くらいでゆるっと進めたい。