六魔公3
読み方
発言者 「」普通の会話
発言者 ()心の声、システムメッセージ
発言者 <>呪文
『』キーワード
イリアたちの乗る馬車に竜人の軍勢が迫っていた。
イリア 「ミリア。そろそろお昼寝の時間よ。良い子だから眠りましょうね」
ミリア 「はい、お母様。でも、馬車が揺れて眠れません」
イリア 「大丈夫。すぐに眠れるわ」
イリア <エグゼ、ダークネス、ライトハンド、スフィア、ゼロ、スリープ>
イリアはミリアの額に手を当てて眠りの魔術をかけた。ミリアが寝息を立て始めると、イリアはミリアを馬車の椅子に寝かせた。
イリア 「良い子ね。私が居なくても泣かないでね。マリー、あなたはミリアを連れて約束の場所へ行きなさい」
マリー 「イリア様、何をなさるおつもりですか?」
イリア 「どうやら、このままじゃ逃げ切れそうにないから、私が殿を務めます」
マリー 「それならば私が!」
マリー (イリア様は死ぬ気だ。それだけはダメだ)
イリア 「あなたでは無理ですよ。あの数の竜人を相手に足止め出来ないでしょう?」
マリー 「ですが、ミリア様が……」
イリア 「ここで、みんな死ぬか、ミリアとあなたが生き残るか選択しなければなりません。ならば私の答えは決まっています。ミリアを頼みましたよ」
マリー 「イリア様!」
イリア <エグゼ、ウインド、ボディ、スフィア、ゼロ、フローティング>
イリアは、走っている馬車から飛び降りた。イリアは魔術でゆっくりと地面に降り立った。イリアの眼前には、5000の竜人が空を飛んでいた。
イリア (ハリケーン)
巨大な竜巻が発生し、竜人たちを切り刻んでいく。竜人たちはイリアの存在に気が付き、空から真銀製の槍を投げた。槍はイリアが事前にかけていた防御魔法に弾かれ、イリアは無傷だった。
イリア (サンダー・ストーム、エクスプロージョン、アブソリュート・ゼロ、ハリケーン、エクスプロージョン)
イリアは立て続けに魔法を使い続けた。多くの竜人が魔法に撃たれて墜落していった。だが、同時にイリアへの攻撃も続いていた。数多くの槍がイリアに降り注ぎ、イリアの防御魔法を削っていく。そのたびにイリアは防御魔法をかけなおした。
竜人A 「クリシェラルの魔女……。やつの魔力に底は無いのか……」
竜人B 「そんなハズはない、魔力には限界がある。攻撃の手を休めるな」
竜人A 「だが、すでに半数も倒されたんだぞ?」
竜人B 「ここで、手を休めれば死んでいった者たちは無駄死にだぞ、諦めるにはまだ早い、竜人の誇りを見せる時だ」
竜人A 「分かった」
竜人は5000いた兵の半数を失っても諦めずに前進しイリアを攻撃し続けた。
イリア (アンチマテリアル・バリア。これが、最後ね……)
イリアの魔力は尽きてしまった。それでも、イリアは逃げずに立っていた。竜人から槍が投げられ、防御魔法も消えた。そして、イリアは無数の槍に貫かれた。
イリア (ミリア……。どうか、幸せに……。あなた、ごめんなさい……)
イリアの頭部に槍が直撃した。ミリアを乗せた馬車は、すでに見えなくなっていた。リーゼが駆け付けた時には、イリアは絶命していた。
リーゼ (間に合わなかった……)
リーゼは湧き上がる悲しみを押し殺した。
リーゼ (ダメだ。泣くな。まだ、ミリア様が生きている。イリア様が繋いだ希望を守るんだ)
リーゼは馬車を護衛するために移動しようとした。だが、リーゼは気づいた。
リーゼ (この匂い、あいつ追ってきているのか?まあ、そうか、あいつ犬人だもんな、このままミリア様の後を追ったら危険か……)
リーゼはミリアを守るために剣聖ソルドを引き付けて別の場所に行くことにした。
イリアが死んだ時、守護公ロイドの命運も尽きようとしていた。戦士ガイラは『世界樹の根』を竜巻のごとく旋回させロイドの手足をうち砕き続けていた。ロイドは即座に手足を直すが防戦一方となっていた。
ガイラ 「お前、不死身なのか?いくら壊してもきりがねぇ」
そこへ、賢者フレイが転移してきた。
フレイ 「お困りの様ですね」
ガイラ 「フレイ、破壊公は討ったのか?」
ガイラはロイドへの攻撃を止めることなくフレイに応えた。
フレイ 「いや、逃げられましたよ。あの猫、戦う気がありませんでしたからね~。使い魔を監視につけて救援に来たんですよ」
ガイラ 「なるほど、そいつはありがたいね。で、相談だが、こいつ魔法は効かねえし、見ての通り破壊してもすぐに直りやがる。どうしたもんかね」
フレイ 「なるほど、では、そのまま破壊し続けててください。僕が何とかしますよ」
フレイ <エグゼ、ウォータ、ライトハンド、チェーン、テンメートル、キャプチャー>
フレイの魔術が発動し、ロイドを水の鎖で縛りあげた。ロイドは鎖を引きちぎろうと暴れるが、水の鎖は何をしようともちぎれることなくロイドを縛り続けた。
ガイラ 「さすが賢者様だな」
フレイ 「運ぶのはあなたに任せますよ」
ガイラ 「任せとけ」
ロイドが捕縛された時、レーナは水中で致命傷を受け続けていた。暗殺者は川辺から石を投げ続けていた。
フレイ 「やあ、苦戦しているようだね」
フレイが暗殺者の横に立って話しかけた。
暗殺者 「苦戦はしていない。ただ、不死身の相手に水中戦を仕掛けるのは自殺行為だから、こうして相手が消耗するのを待っている」
フレイ 「不死公という名は伊達じゃないね~。僕が手伝おうか?」
暗殺者 「どうするつもりだ?」
フレイ 「殺すのは出来ないと思う。だから、動けなくしてしまえば良いんだよ」
暗殺者 「任せても良いのか?」
フレイ 「まあ、見ててよ」
フレイ <エグゼ、ウォータ、テンメートルフォワード、キューブ、ゼロ、コールド>
フレイの魔術が発動すると、レーナは立方体の氷に閉じ込められ、凍ってしまった。
レーナ (しまった!こんな方法で封じられるとは……。ミリア様、どうか御無事で……)
フレイ 「あとは、任せるね」
暗殺者 「魔術とは便利なものだな」