六魔公2
読み方
発言者 「」普通の会話
発言者 ()心の声、システムメッセージ
発言者 <>呪文
『』キーワード
先鋒のラストとリーゼが賢者フレイと剣聖ソルドに足止めされてしまった為、イリアたちの行く手には帝国兵が立ちふさがっていた。
イリア 「疫病公アゲハ、先導を頼みます」
アゲハ 「かしこまり~」
緊張感のない声でアゲハは返事をし、馬車の窓から外に出て、馬車の前方に居る帝国兵に突っ込んでいった。帝国兵は小さな妖精であるアゲハを認識していたが、小さすぎて剣も魔術も弓矢も当てることが出来なかった。アゲハは、真っすぐ敵陣を進んでいった。
アゲハが通り過ぎた後で帝国兵に異常が発生していた。帝国兵たちは突然血を吐いて倒れだしたのだ。アゲハは帝国兵にすれ違いざまに疫病をバラまいていた。
アゲハ 「あはは、みんな死んじゃえ~」
アゲハは無邪気に笑いながら疫病をバラまいた。そして、敵陣を突破した。目の前には目的地であるサンズ川の橋が見えていた。だが、アゲハの前に立ちふさがる女性が居た。それは、聖女セイラだった。
セイラ (ホーリーチェーン)
光り輝く鎖が出現し、アゲハを拘束した。
アゲハ 「いたいけな妖精を縛るなんてヒドイ!」
アゲハは怒りつつ疫病をバラまいた。聖女セイラも疫病に感染した。
セイラ (ステイト・リカバリー)
セイラは、魔法で即座に疫病を治してしまった。
セイラ 「あなたの疫病は私には通じない。覚悟なさい。神罰を与えます」
アゲハ 「ウザッ。死んどけよ」
アゲハ (ウインドカッター)
アゲハは、自分を縛る鎖とセイラを切り裂く風の魔法を発動させた。鎖は切れたが、セイラは切れなかった。セイラはあらかじめ防御の魔法を自身にかけていた。
セイラ (ジャッジメント・サンダー)
雷がアゲハに直撃したかに見えた。
アゲハ (ウインド・シールド)
アゲハは、風の盾で雷撃を防いだ。
アゲハ 「あはは、無駄無駄、あんたの魔法なんか私に効かないんだからね~だ」
セイラ 「さて、それはどうでしょう?他にも攻撃手段はありますよ?」
セイラはアゲハの挑発にはのらず。にこやかな笑顔で言い返した。
アゲハ (うぅ~~~。面倒な相手だけど、時間稼ぎするか、イリア様とミリア様を逃がすのも任務だしね。適当に時間を稼いで逃げよう)
アゲハが作った屍の道を、イリアたちを乗せた馬車が通過した。そして、目的地であるサンズ川の橋に到達した。
イリア 「守護公ロイド、不死公レーナ、出番です。この場所で、馬車を逃がすために時間を稼いでください」
レーナ 「分かりました。イリア様、ミリア様、どうか御無事で……」
レーナは軍馬を降りて川に飛び込み人魚の姿に戻った。ロイドは無言で馬車を降り、橋の真ん中に立ち身長を3メートルに戻した。
馬車を追って帝国兵が橋に殺到した。ロイドに弓矢と魔術が打ち込まれるが、ロイドにはどちらも効かなかった。遠距離攻撃が無駄だと分かると帝国兵はロイドに接近戦を挑んだ。だが、その攻撃もロイドに効かなかった。神の白金で出来た体は無敵に近かった。
ロイドは接近してきた帝国兵に無造作に拳を横なぎに振り払った。帝国兵は盾で攻撃を受けたが、そのままの体制で吹っ飛ばされ、橋から川に落とされた。
帝国兵 「化け物め」
ロイドの強さを目の当たりにして、帝国兵たちは怯んだ。
しかし、帝国兵の陣から一人の大男が出てきて橋に入りロイドの前に立った。大男は、大きな木製の斧を担いでロイドの前で不敵に笑った。その大男は戦士ガイラだった。木製の斧は世界樹を削って作られた神器『世界樹の根』と呼ばれるものだった。その斧は触れるもの全てを粉砕する力を持っていた。
ガイラ 「ずいぶん硬いようだな、俺のこの斧とどっちが丈夫か試してみるか?」
ロイド 「……」
ロイドは答える口を持たなかった。
ガイラ 「無口なんだな、まあいい。勝手にやらせてもらうぜ」
そう言ってガイラは『世界樹の根』を振り上げ、全力でロイドに叩きつけた。ロイドは右手でその斧を受け止めようとした。しかし、斧が右手に触れるとロイドの右手は粉々に砕け散った。
ガイラ 「どうやら、俺の斧の方が強いみたいだな、悪いがこのまま粉砕するぜ」
ガイラは勝利を確信していた。しかし、ガイラが勝ち誇っているとロイドの右手は治っていた。
ガイラ 「おいおい、回復が速すぎないか?」
ロイド 「……」
ロイドは無言で右手をぶん回した。ガイラは、ロイドの規格外に大きな拳を避けることが出来ずに斧で受け止めた。鈍い衝撃音が響き、ガイラは10メートルほど吹き飛んだ。ロイドの右手は粉砕されるが、すぐに治った。
ガイラ 「うひぃ~~。あいててて、なんて力だ。こいつは油断ならねぇな……」
ガイラは油断していた。だが、ロイドの力を見て考えを改めた。
ガイラ 「遊びは終わりだ。今度は、一瞬でチリにしてやる」
ロイドが橋を守っていると、帝国兵は川を渡って馬車を追おうとした。だが、川には不死公レーナが居た。レーナは川底で魔法を使って川に無数の水の手を出現させ、帝国兵を川底に引きずり込み溺死させていった。
そんな川の縁に黒い影の様なものが佇んでいた。それは暗殺者だった。名前を持たないそれは、川辺の石を拾い上げて、川底のレーナに向けて投げつけた。それは、石を投げたと表現するにはあまりにも威力が高すぎた。爆音と共に水しぶきを上げて、石はレーナの頭部を破壊した。しかし、レーナの頭部はすぐに治った。レーナは不死身だった。
レーナ (川辺からの攻撃か、なら、この魔法を使うしかないわね。ウォータージャベリン)
水中から無数の水の槍が暗殺者に放たれたが、暗殺者は水の槍を全て避けた。
暗殺者 (武器は無限にある。相手の魔力は無限ではない。持久戦を続ければ私が勝つ)
レーナ (厄介な相手ね……。でも、足止めは出来るし、水の中に居る限り私の優位は変わらない。このまま戦ってもらうわ)
ロイドとレーナが帝国兵の足止めに成功した時、暴虐公ルドラが限界を迎えていた。
ルドラ (これ以上は無理か……。クソ、目がかすむ、逃げなければ……)
ルドラは、もうろうとした意識の中、竜人の追撃を受けながら戦線離脱した。ルドラが逃げたことで、竜人はルドラを追撃する部隊と、川を越えて逃げつつある馬車を追う部隊に分かれた。竜人たちは、空を飛んで川を越えてイリアたちが乗る馬車の追撃に向かった。
リーゼはソルドと接近戦で互角に戦っていた。その上空を竜人たちが、イリアたちの乗る馬車の方向に飛んで行った。
リーゼ (不味い。ルドラが引き付けていた竜人がイリア様たちの方へ向かっている。ロイドとレーナでは上空の敵に対応できない。あたしが行かないとイリア様が……)
リーゼはソルドを倒せずにいた。だから、逃げようとしたが、ソルドはそれを許さなかった。
ソルド 「目の前の敵を放っておいてどこに行くつもりだ?」
リーゼ 「どけっ!貴様に構っている暇はない!」
ソルド 「なるほど、あの馬車に魔女が居るのだな、ならば余計に逃がすわけにはいかなくなった」
リーゼ 「邪魔をするな~~~~~~!」
リーゼは毛を逆立てて怒り狂った。
ソルド 「未熟者め、感情に流されるとは……」
ソルドはリーゼを討ち取ったと思った。だが、リーゼは感情の爆発を力に変えてソルドの予想を上回る速度で拳を打ち込んできた。ソルドは回避しそこない200mの距離を吹っ飛んだ。
リーゼ <リリース>
リーゼは犬の姿に戻り、翼を広げ、空を飛んでイリアたちの元へ急いだ。