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クリシェラル王国物語  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
5/10

魔王城陥落

読み方

発言者 「」普通の会話

発言者 ()心の声、システムメッセージ

発言者 <>呪文

『』キーワード


 クリシェラル王国の王城、オールエンド帝国からは魔王城と呼ばれている城、王女ミリアの部屋に国王セトと王妃イリア、メイドのマリー、六魔公と呼ばれている将軍6名が集まっていた。ミリアは漆黒のドレスを身にまとい、国王セトに抱きかかえられていた。


セト  「ミリア。これから言う事をよく聞くんだよ?」

ミリア 「はい、お父さま」

セト  「君は、これから母様と一緒に旅行に行く。行先は母様が知っている。良い子に出来るかな?」

ミリア 「お父さまは、一緒に来ないのですか?」

セト  「残念だが、私はお客さんの相手をしないといけないんだ。しばらく会えなくなるけど、大丈夫かな?」

ミリア 「いや!お父さまも一緒が良い」

セト  「ごめんね。ミリア。でも、暫くの間だけだから我慢してくれるかい?」

ミリア 「分かった。我慢する」

セト  「良い子だ。さあ、イリア。後は頼む」


 そう言って、セトはミリアを地面に降ろし、イリアに渡した。


イリア 「あなた。ご武運を」

セト  「ああ、君もどうか無事で……」


 イリアとセトは抱き合った。これが、今生の別れになることを知っていた。


セト  「破壊公ラスト、殲滅公リーゼ、暴虐公ルドラ、不死公レーナ、守護公ロイド、疫病公アゲハ、マリー」


 セトは六魔公と呼ばれている自分の臣下の名前とイリアとミリアの身の周りをするためのメイド、マリーの名を呼んだ。ラストは猫の魔獣、リーゼは犬の魔獣、ルドラは竜、レーナは人魚、ロイドはゴーレム、アゲハは蝶の妖精、マリーは人間だった。ただし、ルドラは場内では竜人ドラゴノイドの姿で、レーナは陸上では人魚の姿ではなく人間の姿をしていた。


セト  「みな、イリアとミリアを頼んだぞ」

ルドラ 「本当に良いのか?一緒に戦えば勇者を倒せるかもしれんのだぞ?」

セト  「それは、無理だ。リーゼの双子の兄リグルが一騎討で敗れた。しかも、何の反撃も出来ずにな……。ここに居る全員の力を合わせれば勝てるかもしれないが、勇者には仲間がいる。それも規格外に強い奴らだ。分散して各個撃破出来ればいいが、無理だろう。勇者を足止め出来る者が居ない」

ラスト 「この私でも無理なの?」

リーゼ 「うちのお兄ちゃんでも無理だったのに、あんたじゃ話にもならないわよ」

ラスト 「あんたには言われたくないわ」


 ラストとリーゼはにらみ合って火花を散らせていた。


セト  「喧嘩をするな、二人とも……。六魔公の中で最強だったリグルが敗れたのだ。議論は不要だ」

ラスト 「出過ぎたことを申しました……」

ルドラ 「陛下が、そこまで言うのならば仕方ない。イリア様とミリア様を無事に脱出させてみせましょう」

セト  「ルドラ。他の者も勘違いしないで欲しい。この作戦の最終目標は、王都の奪還だ。一時期、城を奪われるかもしれないが、戦力を温存し、再起を計るための撤退戦だという事を肝に命じてくれ、無駄に死ぬ事は許さぬ。戦場ではイリアの判断に従って各自生き延びる事、良いな?」

一同  「畏まりました」

セト  「上手くいったら、私も逃げ延びて合流する。それまで、命を粗末にしないでくれ」

一同  「はい」




 魔王城は勇者アランが率いるオールエンド帝国の軍勢10万に包囲されていた。オールエンド帝国の兵は8割が人間で、残り2割は亜人だった。森人エルフ鉱人ドワーフは居らず犬人ドックノイドが半数を占め、もう半分は竜人ドラゴノイドだった。

 魔王城の正門は既に陥落し、魔王城内に勇者アランと、その仲間たちが侵入し玉座の間を分散して探していた。勇者アランは、他の仲間より先に玉座の間にたどり着いた。玉座には魔王セト座っており、他には誰も居なかった。


アラン <エグゼ、ウインド、マウス、スフィア、ゼロ、インフォメーション、アライ>

アラン 「魔王を見つけた。玉座の間には魔王一人だけだ。六魔公は居ない。魔王は私一人で倒す。みんなは六魔公を追ってくれ、私はこれから戦闘に移行する。以上」


 アランは一人で魔王を倒すつもりだった。六魔公が居れば全員集まって戦闘を行い。居なかった場合は、魔王はアランが倒し、六魔公は他のメンバーが追跡する手はずになっていた。理由は、六魔公を取り逃せば反乱軍となって襲ってくる可能性が高いからだった。


セト  「ようこそ、勇者よ。呼んでも居ないのに来てくれてありがとう。歓迎するよ」

アラン 「魔王セト!貴様の圧政もここまでだ。オールエンド帝国の皇帝バネロの命により、貴様を討つ!」

セト  「圧政か……。君は、それを見てきたのかね?」

アラン 「何を言っている!」


 アランは、それを見てきた。そして、その事は焦りとなって顔に現れ、動揺のあまりアランは魔王セトから視線を外してしまった。


セト  「なるほど、見てきたのだな……。それは良かった。ならば、少し話を聞いてくれないか?なに、時間はとらせない。少し、話をするだけだ。その上で決着をつけよう」


 魔王セトは邪悪な笑みを浮かべていた。


アラン 「良いだろう。遺言ぐらいは聞いてやる」

アラン (敵の言葉に耳を貸すべきではない。頭では分かっている。だが……)


 勇者アランは、迷いつつも魔王の言葉に耳を貸してしまった。その結果、運命が大きく変わる事になるとは知らないままに……。




 セトとアランが玉座の間で対峙していた時、イリアはミリアとマリーを連れて裏門から逃げる準備をしていた。馬車は逃げるのには向かないし、六魔公の誰かに預けるという手もあったが、六魔公はオールエンド帝国に狙われている。ミリアを預ければ一緒に命を落とす可能性もあった。だから、イリアはミリアとマリーだけ連れて逃げる準備をしていた。

 六魔公が狙われている理由は単純だった。オールエンド帝国とクリシェラル王国は、過去に何度も戦をしていた。そして、六魔公は幾度となくオールエンド帝国を撃退し勇名を馳せていた。彼らが生き残れば魔王軍は六魔公の誰かを旗印に復活する。それを未然に防ぐために命を狙われていた。


ルドラ 「イリア様、本当によろしいのですか?」

イリア 「かまいません。先鋒はルドラに任せます。暴虐の名に恥じぬよう竜の姿で暴れまわり、敵をかく乱したのち、空から逃げなさい」

ルドラ 「そうではなくて、お二人を私の背に乗せて逃がす事が出来ると言っているのです」

イリア 「それは、得策ではありません。あなたは背に乗った私たちを気にかけながら全力で戦えるほど器用でしたか?」

ルドラ 「それぐらい出来ます」

イリア 「敵は勇者だけではありません。年齢不詳の賢者や正体不明の暗殺者まで居るのですよ?あなたが全力を出せずに討ち取られたら、指揮を預けてくれた陛下に申し訳が立ちません」

ルドラ 「イリア様が、そこまで仰るのなら、もう何も言いません。出来るだけ多くの敵を引き付けて離脱します。どうか、御無事で……」

イリア 「大丈夫ですよ。ルドラ。必ず生きて約束の地で会いましょう」

ルドラ 「はい、ミリア様も、どうか御無事で」

ミリア 「ルドラ、がんばって」

ルドラ 「はい!これから俺は炎を吐いて飛び立ちます。ミリア様は俺の炎、好きでしたよね?」

ミリア 「うん。私、ルドラの炎大好き!」

ルドラ 「今までご覧にいれた炎よりも盛大なものをお見せいたしますよ」

ミリア 「うん。楽しみにしてる」


 ミリアはこれから、起こることを理解していなかった。母親と一緒に旅に出る。その門出を祝ってルドラが炎を吐いて空を飛ぶと聞いていた。


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