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俺がお前らのマスターだっ!  作者: 黒野理知
4/19

妹とタイマン!

「そろそろキャラできたか?」

「うん。できたよ」

「ほほう、では彩香の作ったキャラはどういうキャラか教えてよ」


キャラの説明はちゃんと聞いてあげよう。ここがTRPGというゲームのキモというか、すべてだと言ってもいい。どんなキャラなのかできるだけ興味を持って、こちらからも質問をしてあげよう。自分のキャラを知りたがられるのって嬉しいからな。


「えーとね、まず名前は『バーバラ・ジャクソン』!」

「Oh!アメリカン!てか本郷唯ちゃんはどこ行ったの?」

「だって遊ぶのファンタジーで、モンスターとひたすら戦うんでしょ?唯ちゃんじゃイメージ合わないじゃん」

「なるほど。ではどんな性格なの?」

「うん、名前が強そうでしょ?アメリカの筋肉ムッキムキで鼻息フンフンしてそうなストロングレディーって感じで。チアガールとかやってそうな」


こら、アメリカ人に怒られるぞ。そんな人ばかりではないからな。


「要は、『アマ、()ネス!』よ。『アマ、()ネス!』」


文章だと伝わらないのが惜しい。アマゾネスという単語を英語っぽく吐き捨てるように発音して、『ザ』の部分を力一杯発音する感じ。アマザネスという単語自体が超強そうでめっちゃ面白い。妹のイメージに全く合わないうえに唐突だったため俺の笑いのツボを直撃した。


「ぶっ‥‥ひゃっひゃっひゃっひゃっ!」


俺が笑ってしまってしばし中断。何こいついきなり。てかこんな面白い奴だったっけ?うちの妹。


「不意打ちで変なこと言うなよっ!」

「えー?だってやるシナリオがひたすら戦う、以上!でしょ?だったらせっかくだから『ふんぬー!!!』とか言ってでっかい剣ぶんぶん振って、どかばきぐしゃ!『アイアムストローング!ハッハー!』とかみたいに暴れたいじゃん」

「俺の中のお前のキャラが一変したわっ!一、二年あんまり喋らなくなってるうちにどこでどんな知識を得たんだっ!小六だろうがっ!」

「ふっふっふっーん。おにいが学ラン着たりエッチな本こっそり買ったり大人の階段登ってるうちに、私だって大人になってるんだよーだ」


アマゾネスは大人なのか。


「ま、まあいいっ!じゃあとにかく性格は『アマゾネス』なのな。じゃあ技能はあらかじめファイター3レベルとプリースト3レベルだから、武器と防具はどうした?」


プレイヤー一人で彩香にはゲームバランスはわからんだろうから、とりあえず一人で無双できるレベルと回復手段を与えるために所有技能は指定した。


「武器は、大ツルハシって奴にした!」

「ぶほっ!でっかい剣はどこいった!?」

「だってこのゲームの中で一番ダメージでかいから」

「なるほど‥」

「んで、防具は、ほんとはビキニとかが良かったんだけど無いから、プレートアーマーの胸当てだけ着けて腹筋全開で!下半身はビキニのボトムス一丁で!でも顔は整ってて、ハリウッドのアクション女優みたいに一応美人で、金髪碧眼!」


偏ってるな、お前。色々と。



*****



今からやるシナリオは入門編シナリオ集の一つ目のシナリオ。村の近所の遺跡に住み着いたゴブリンの群れをひたすら討伐するだけという、超シンプルなものである。どうせならここからはリプレイ風に記述する事にする。全部は書かずに抜粋だが。



*****



GM:じゃあバーバラは一人でこの村にやって来た。この国の王都からかなり離れた辺境の村だ。時代劇とかの貧しい村を想像してくれ。

バーバラ:うん。

GM:じゃあバーバラはなんでこの村に来たのかな?

バーバラ:は?私に聞くなよ。

GM:いやこう言うもんなんだって。キャラがどう言う理由で村に通りがかったのか、キャラを作ったお前にしかわからんだろーがっ!イメージしろ。バーバラがこんな場所に来るとしたらどう言う事情があると思う?

バーバラ:うーん‥じゃあ王都で飲み屋で男殴ったらうっかり殺しちゃったとか?

GM:パッと思いつくのがそれかよ小六女子っ!

バーバラ:えー???じゃあ、借金取りから逃げてきたとか?

GM:基本アウトローな理由っ!(笑)いや、どっちでも認めるけど(笑)

バーバラ:てかぼっちのアマゾネスが田舎に来る理由なんてそんなんしかないっしょ?


洋ゲーとかだと冒険者なんて基本ゴロツキである。うちの妹めっちゃ正しい。‥のではあるが、兄としては複雑。誰が教えたんだこんな知識。


GM:OK。じゃあ村に着いたけど、最初にどうする?

バーバラ:飲む。酒場直行。

GM:‥‥‥(妹がワイルドになっていくなあ)。じゃ、じゃあこの村唯一の宿屋兼酒場に入ると、農作業上がりらしい村人達が既に出来上がってわいわいやってるとこに出くわす。

バーバラ:酒を樽で持ってこいやあ!

GM:?

バーバラ:酒を樽で持ってこいやあ!

GM:お、おう。理解した。店主がカウンターにどんっと酒樽を置く。

バーバラ:おっしゃあ!ごくっごく!

GM:(もう色々気にしないようにしよう)そうやって飲んでいると、酔っ払った村人のオッサン達が声をかけてくるよ?「よう、姉ちゃん。旅の冒険者かい?(ファンタジーだし、こんぐらい言っていいよな)しかしすげえ格好してるな。ほぼ裸じゃねえか?」酔っ払いオヤジは超スケベな顔でバーバラをジロジロ見てくるよ?

バーバラ:見たいのか貴様!ぴらっ!

GM:ぴら?

バーバラ:ビキニのボトムスをこう、指でずらして(あろうことか自分の股間でジェスチャーしながら)ぴらっと。

GM:なんつーことするんじゃああああああああ!いきなり局部を見せる奴がおるかあああああああ!

バーバラ:いやこう言う、そういうの気にしないキャラなんだってば!

GM:兄として魂が抜けるわっ!



*****



つ、疲れる。この後も村人と飲み比べして酔い潰れ、尻を触られて「だからと言っておさわりはNGだっ!」とか言って村人(非戦闘員)をファイター技能でぶん殴り半殺しにしたり。酩酊判定に失敗して意識を失って二階の宿部屋に担ぎ込まれたり。冒険者が居ると聞いて、近所の遺跡に住み着いたゴブリンの群れを退治してくれと依頼しに来た村長に宿代を払わせたり(樽で酒を飲んだり色々した結果、初期キャラメイクの残り金では足らなくなった)。無茶苦茶しまくるので話が進まん。アホすぎて二人でめっちゃ爆笑してたけど。


やっとこダンジョンに潜り、探索を始めるバーバラ。



*****



GM:遺跡は古代魔法時代の住居だったみたいで、三階建ての洋館みたいな外見してる。正面玄関に両開きの大きな扉がある。

バーバラ:ばーん!

GM:開けたのね。ちょっとサイコロ振ってみて。

バーバラ:えー?やだ。

GM:やだじゃねえ振れ。

バーバラ:だってこのタイミング罠しか無いじゃん。しゃーねーなー。(コロコロ)8。

GM:(シーフ持ってないから罠感知は失敗、と)もっかい振って。あと女子らしい口調だとお兄様は嬉しい。

バーバラ:(コロコロ)6と5で11。

GM:(聞こえたな)うん、鳴子がカランカランとどこかで鳴ったのに気づいた。鳴子って人が来たらわかる様に音が鳴る仕掛けのことな。コンビニ入るとお客には聞こえないけど、店員さんの部屋でピンポンって音が鳴るだろ?それがお客であるお前自身にも聞こえたって想像するとこの状況にピッタリくる。

バーバラ:じゃあここで待つ!

GM:What?

バーバラ:なぜ急にアメリカ人なんだおにい。

GM:いやなぜにここで待つのかなと。

バーバラ:だって呼び鈴なったんでしょ?待ってたら来るはずじゃん。

GM:(いや待ってても来ねえだろ‥ってそこまで分かんないか、今日初めてだし。ヒント出すか)いや、例えばお前が超弱いとする。敵が来たとする。敵は建物の入り口でずっと待ってるとする。さてどうする?

バーバラ:うーん、隠れる?

GM:相手は隠れている。お前は待ってる。どうなる?

バーバラ:なるほど!永久に出会わない!

GM:そーゆーこと。ロールプレイ(キャラになりきる演技とかそういう意味)としてそれも認めるべきかもだが、話が進まんから動け妹よ。

バーバラ:おー、らじゃ!


そんな感じでゲームは進み、途中ザコな小グループ相手にツルハシでスプラッタに大殺戮する実妹のサイコな側面を目撃したりしたが(汗)、最終的にラスボスの部屋、最上階の一番豪華な部屋でゴブリンシャーマンとゴブリン三体と対峙するバーバラ。ちなみにシナリオ集ではここにはあとホブゴブリンが追加で二体いるはずだが、それは消しておいた。四人〜六人用シナリオだし、数が多すぎて消耗戦にしかならない。


GM:敵はゴブリンシャーマン一体と、普通のゴブリン三体。ゴブリン三体が邪魔でシャーマンには近寄れない。ゴブリンをどれか倒せばシャーマンが狙えるとする。

バーバラ:じゃあホーリーボルトを三倍消費して普通のゴブリンを三体同時に攻撃するっ!

GM:はあ?お前MPは?

バーバラ:大丈夫!一点残る!

GM:いやシャーマンがいるんだってば。エレメンタラーのシャドウアタックって魔法でMP攻撃できるってば。ゴブリン三体仮に倒しても次のターンでMPゼロで気絶するってば。

バーバラ:えー?そうなの?じゃあどうすればいいの?

GM:(マスターに戦い方聞くなよ‥)地道に一体一体倒しつつヒールで回復して、じゃねえの?ここ逃げ場ねえし。

バーバラ:よーし!じゃあ真ん中のゴブリンに攻撃!ふんぬー!アマ、()()ス(一層発音が良い)!えーと17!

GM:ゴブリンの固定回避値はさっきから何度も言ってるけど10です。当然当たる。

バーバラ:えーと、ダメージは、(コロコロ)6と6。

GM:おめでとう人生初クリティカル!もう一回振って二つとも足していい。

バーバラ:えーと‥16の9の5で、20?

GM:30じゃボケ!算数一年からやり直せ。30だと並のゴブリンじゃ一撃死だな。

バーバラ:ぐさあっ!ぐしゃあっ!

GM:(サイコな妹にもう慣れた)うむ、ぐさあっと一撃死した。前が空いたけど、そうだな、次のターンで判定に成功したら間を抜けてシャーマンのとこに行けることにしようか。

バーバラ:え?しないよ。

GM:?

バーバラ:他の二体もぐさっとして、シャーマンもぐさっとして、皆殺しにしたいもん。

GM:‥‥‥(俺は‥育ててはいけないものを育てたのかも知れないな‥フフ)



*****



果たして、ゴブリンを全滅し、シナリオは終わった。今後このキャラを使うかはともかく、最後の楽しみとして経験値を上げてレベルアップ作業をさせてやる。普通この程度のシナリオではファイターもプリーストも3→4に上げられる経験値は貰えないが、そこはぴったりレベルが上がるように経験値を増量しておいた。レベルアップ作業の喜びも体験してもらおう。


「彩香、面白かったか?」


俺のベッドに寝転がりながら、ルールブックとにらめっこして、ふんふんふーん♫と嬉しそうにレベルアップ作業している妹に問いかけてみた。ちなみにこいつがルールブック読むのはこれが初めてだ。


「んー?まあまあ」


そう答えた彩香はそっけなかったけど、今日以前にこいつの笑ってるところを見たのは、半年以上前だったかなあと俺は思った。

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