よりどころを見失ったら
夫の死から180日。
* 「うちのダンナ詩集」内の一作です。
** 銘尾友朗様が主催されておられます『冬の煌めき企画』参加作です。
フォトフレームの中で
君の隣に立って笑ってる
その女が
もう自分だなんて
信じられないんだよ
幸せいっぱいの笑顔より
君の格好良さに見惚れる
その君が
自分のものだったなんて
信じられないんだ
夜が来ないと朝はない
冬が過ぎないと春は来ない
そんな言葉を浮かべても
どっちを向いていいかさえ
わかりはしないんだ
外は雪
木々もつららも煌めいているのに
私は家から出られない
眩し過ぎるから
かき消されてしまいそうで
自分の中に煌めきを
見つけられないから
核となるものが
見当たらないから
よりどころがないから
あれは私のためだ
後に遺す私のこと
心配じゃないって言ったのは
一言心配だって認めたら
私が情けなく潰れるから
意地でもノーと言い張って
大丈夫になる呪いをかけた
「雪に両手を埋めてごらん」
思ってるほど怖くない
予想するほど淋しくない
「おまえはほんと、手がかかる」
「甘やかしすぎたよな」
「だがな」
「おまえの胸が空っぽの闇だと」
「思ったら大間違いだぞ」