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9話 順風満帆?

 あれから、依頼を受けてから4日が経った。


 護衛依頼はたまに魔物が出てくるくらいで特にアクシデントもなく、あと数時間でエタールに到着するという所まで来ていた。順風満帆である。


「ジレイー! お前もこっち来て『とらんぷ』やろうぜ!」


 休憩中にだらーっと寝ころんでいると、顔にでかいキズ跡が特徴的なゴリラのような大男――ウェッドが『とらんぷ』で遊ぼうと誘ってきた。


 一緒に遊んでいた他の冒険者たちも、「一緒にやろうぜ!」「負けたら罰ゲームな!」と誘ってくる。


「毎回負けるから嫌だ……てか、お前らイカサマしてるだろ。絶対にやらないぞ」


 俺が睨むと、「な、なんのことだか」と言いながら下手くそな口笛を吹く冒険者たち。やっぱりやってやがったなコイツら。


 ……4日前に高級お菓子という名の餌をあげてから、妙に懐かれてしまった。事あるごとに菓子をクレクレしてくるし、ウェッドに至っては見た目に反してめっちゃ甘党だ。……まあいっぱいあるから良いんだけどさ。


 というか、こいつら羽目外しすぎじゃないか?

 これ曲がりなりにも護衛依頼なんだけど……依頼主のフィナも何も注意せずに優雅にティータイムしてる。まるで緊迫感がない。ほのぼの空間極まってる。


 だが、そんなほのぼの空間の中に一人、鬱々とした雰囲気を発している人物がいた。


「よぉ、今日は『ぷりん』っていうお菓子だけど、いる? 要らないなら他の人にあげるけど」


 俺は今日も、体育座りで蹲る金髪の男――カインに話しかける。しかし結果は――


「…………」


 とりつく島もなく、無言で立ち上がり、ふらっとどこかに行ってしまった。顔から魂抜けてたけど大丈夫か?


 あれから毎日、こうして話しかけてお菓子の感想を貰おうとトライしているんだが、一向に歩み寄ってくれる兆しがない。貴族の男の意見は貴重だと思うから知っておきたいんだが……。


「またアイツに話しかけてたのか? あんな高飛車野郎放っておけばいいのによ」


 ゴリラみたいな顔の男――ウェッドは呆れ顔でそう呟く。何か思う所があるようだ。


「まぁ、せっかくだし」


 送る感想は多いほうがいいから。


「お優しいこって……でも無駄だと思うぜ? あいつ、実家が偉いからって自分も特別だと思ってやがる。年齢の割には才能ありそうだが……親のコネでB級になってたら意味ないわな。性根が腐ってやがる」


 ウェッドは辛辣にカインを罵倒する。いくらなんでもそこまで言うか? それに俺が優しいってどこ見てんだこのゴリラ。俺は基本的に自分の事しか考えてないぞ。


「師匠ー! それ! その『ぷりん』ってあまり!? 食べていい!?」


 ウェッドと話していると、ぷりんを食べ終わったレティがどたどたとこちらに走ってきた。俺は無言でぷりんを口の中に掻き込んだ。レティが絶望的な表情になった。



 その後、何事もなくワイワイとエタールに向けて歩むこと3時間。

 あと数十分ほどでエタールにつき、護衛依頼完了という所まできた。


「――! ――ッ!!」


 そんな時、あと少しで終わるという安堵感に包まれ、名残惜しい声が上がる中、遠くから焦った声が聞こえてくる。


「ハァ……ハァ……た、大変だ! エタールが……エタールが!!」


 姿を現したのは、斥候として先行していた冒険者。額に玉のような汗を浮かべ、顔面蒼白になりながらも何かを伝えようと言葉を連ねた。


「落ち着いて下さい……どうしたんですか?」


 混乱しているのか支離滅裂な冒険者をフィナが宥め、何があったのかを問いただす。


 斥候の冒険者は、何かに怯えているように声を震わせ、こう言葉を吐き出した。


「魔物だ……魔物が街を、街を占拠してる!」



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