第8話「ソロモンの神殿」③
前話を投稿し忘れていたようなので、今回は2話連続投稿とさせていただきました。
それからどれくらい経ったでしょうか。部屋の外で判決を待つ時間と言うのは、無限に感じられるものです。ご主人様の方をふと見遣ると、椅子に腰掛け、腕を組んで俯いており、随分と神妙な感じです。さすがのご主人様も緊張しているのでしょうか。
「修道士よ、今一度入室せよ」
そこへ響く室内からの声。来ました。いよいよ判決が確定したようです。ぞろぞろと他の修道士は入室して行く中、ご主人様は未だ動きません。動こうとする気配もありません。
「レード、そろそろ行かないと総長にどやされるぞ」
「う……む……あぁもうそんな時間か」
ギルバート様に声を掛けられ、伸びをするご主人様。まさか寝ていたのですか……
「まったく、お前のその図太さには呆れるを通り越して憧れるよ」
やれやれと言う感じのギルバート様。これは真似をしたらダメな図太さです。
大部屋に入り、席に着く修道士一同。それを前にして立ち上がる総長ロベール様。いよいよ判決です。
「良き修道士で構成される参事会構成員と語りに尽くした結果を伝える。修道士レードよ、そなたはテンプル騎士団でありながら、その会則に掲げる理念を破り、犯した背教の罪は誠に許し難い」
あぁ、ついにご主人様も十分の一税の納め時なのでしょうか……
「しかしそれは修道士ギルバートの言うように、グールの危険から巡礼者を遠ざけるため止むを得ずしたこと、また普段の素行が誠に敬虔であること、これら事実を鑑み、その罰は次の金曜日の大斎とする」
大斎……断食、つまりは食事抜き。参事会での判決の中で、最も軽い罰です。ホッと胸をなでおろしていると、ピエール様の怒鳴り声とも言える声が聞こえてきました。
「何故そのような軽い罰なのでしょうか!理由をお聞かせ願いたい!この男の普段からの素行の悪さは折り紙付きですぞ!」
「修道士ピエールよ、何人も参事会を暴く事は許されん。被服長官と言えども、だ」
参事会を暴く、つまり判決について、どの参事会構成員がどんな意見を出したかを明かすのは、タブーとされているのです。文字通りぐぬぬ……と言う感じのピエール様を尻目に、総長に一礼し、さっさと退出しようとするご主人様。今回も事無きを得……
「修道士レードは後で私の部屋に来るように。この件について、私個人から話がある」
背後からの総長ロベール様の呼びかけ。事は未だ済んでいないようです。これでは寿命がいくつあっても足りません。
罰則は他にも、修道院喪失(追放)や修道服喪失(一時停職)などがあったそうです。