第76話「ジン」⑬
黒い雷が落ちた先で崩れ落ちるシャルロット様と、それを咎め、無理に引きずってでも自らの手に戻そうとするルイ。2人とも完全にご主人様は死んだと思っているようです。
「ご主人様!後はこのままあのルイを背後から斬りつけておしまいですね!」
「いや、シャルロットの火球や俺の先制攻撃も軽くいなした奴だ、それは上手くいかないだろう」
「そんな……奴がそれほどの使い手だって事ですか?」
「それも違うな。もしそうだったら、あれほど錯乱してデタラメに雷を落としたりしないだろう」
「ではどうして……」
「恐らくだが、奴には強力な精霊……ジンが憑いている」
ジン!以前にも出会った、その姿は様々ながら、いずれも強力な力を持った精霊、もしくは悪霊です!それがルイの意識に関係無く彼を守っているから奇襲攻撃も通用しないと言う訳ですか……納得です。きっと本人も気が付かない内に、悪魔によってジンを取り憑かせられたんですね。
「それではジンが奴に憑いている限り、攻撃が一切届かない事になりますが、一体どうするんですかご主人様!」
「ジンを奴から引き剥がす方法がある……シャルロットの気持ち次第だかな」
シャルロット様は精神支配されているこの状況で、ご主人様は一体何を……
「俺はまだ生きているぞ!この、能力だけのボンボン野郎!」
そう考えていると、大声で呼びかけるご主人様。これで奇襲はもうパーです。
「馬鹿なっ……!"暗黒雷竜"を受けて無事でいられるなんて……!」
「レード!無事だったのね!」
狼狽えるルイと飛び上がって喜ぶシャルロット様。もしかしたら精神支配下の方が逆に正直になれるのかもしれません。
「さっきから見てて分かるだろうルイ!俺とシャルロットの愛は本物だ。貴様が入り込む隙間なんぞ無い」
いきなり何をご主人様はのたまうのでしょうか。
「レード……」
それを聞き、顔を赤らめるシャルロット様。どうやらシャルロット様の精神も疲れ切っているようです。
「そんなのは偽りだ。今やお前なんかより僕の方がシャルをよく知っているんだからな」
一見ご主人様の言葉なんかには惑わされない風を装ってますが、明らかに怒りに燃えているルイ。
「シャル!奴を殺せ!そして自らの手で過去と決別するんだ!」
一際怪しく紫に光るルイの目。それに呼応するかのように同じく紫に輝くシャルロット様の瞳。
「はい……分かりました……ルイ様……」
そう言うと、ルイから差し出された剣を手に取り、シャルロット様はご主人様に向けて構えるのでした。




